6話 初めての家臣
翌朝、眠い目をこすりながら、食堂に行き朝食を食べる。その場で昨日の話をする。
「父上、出来ればリック、マック、ユリを雇いたいです」
「その3人は、アレクが直接雇えばよいだろう。」
「僕に、そんなお金はありません」
「あれ、言ってなかったか。バッグの利益の1割はアレクの金だ。本当は半分以上はアレクのものなのだが、領地開発してるからな。すまん。」
「バッグはオリオン領の収入の柱です、そこを削ってはいけません」
「バッグの利益の1割はアレクの金だ、そこは譲れん」
「変なものを買ったときはエレメルに報告するからな。」
僕はその時、母の頭に角が生えている想像してしまった。
「あっ、ありがとうございます。」
「父上、今日は商工ギルドですか?」
「そうだ、若手職人を何人か、オリオン領に引き抜き交渉だ。」
「あと、オリオン商会の宣伝ですか。」
「そうだ、オリオン領まで商品を、買いに来てもらわんといけないからな。」
そうこうしてるうちに、デリックが父を迎えに来る。
「ハロルド様、打ち合わせの時間です。」
「今行く。アレク、あまり無駄遣いするなよ。」
僕は、満面の笑みで手を振りながら、孤児院に行く前に、本屋で本を買おうかと思った。
行動と頭の中が全然あっていない。
宿の人に本屋の場所を聞き、本屋に向かう。
一軒の本屋で5冊買い、建物の影でマジックバッグ(巾着袋)に仕舞い、次の本屋に向かう。
同じことを繰り返し、20冊の本を手に入れホクホク顔で孤児院に向かう。
孤児院に着くと、リックが木剣の素振りをしていたので、リックに声をかけマックとユリも一緒に働かないかと誘う。
リックは驚き、急いでマックとユリを呼び、一緒に院長室に行く。
僕は、院長にオリオン男爵家の4男で、オリオン領では、今領地開発が進んでおり、人材不足で働き口ならいくらでもあると説明をする。
院長は、孤児院には60人以上の子供が居て、孤児院の出身だと、中々雇ってもらえないと説明される。
「院長、13歳以上の子供は、何人ぐらいいますか?」
「20人ぐらいですね」
「なら20人すべて雇いましょう」
院長の目が飛び出しそうなぐらい、驚いている。顔の皺も、一瞬、伸びた気がする。目の錯覚だろう。
他にも色々と、院長に説明をしていく。
オリオン家の農地の手伝い・商会の手伝い・工場の手伝い。住居と食事はオリオン家で提供し、給金もきちんと支払う。
将来的には、自分の農地も持つことが可能だと伝える。
王都には、あと数日しかいないので、明日中に希望者を知らせてほしいと伝える。リック、マック、ユリの3人はオリオン家ではなく、自分が直に雇うと説明する。
「それと、この孤児院はどのように、経営しているのですか」
すると、院長の顔が曇る。
ローエム王国の直轄地では、国からの援助金は出るが、多くは寄付で賄っている。
寄付も不定期だが、冒険者ギルド・商工ギルドなどから寄付金がくるようだ。
アレクは院長に、孤児たちは読み書きは何人ぐらいできるかと。
リック、マック、ユリは読み書きがある程度はできる、あと4,5人は出来るようだ。
教えることは出来るのだが、教本がなく土に書いて教えているので、中々上手くいっていない。
今後、オリオン家が援助するので、読み書きを孤児たちに教えてほしい。
アレクは黒板とチョークを手配する。
アレクは説明してる時に、ふと思いついた。読書きそろばんだ。
この世界には、そろばんはない。ましてや電卓などあるはずもない。
そうだ、そろばんを作って売ろう。
説明の途中で、他の事を考えてしまい、一瞬、間が空いたが、変に思われていなかった。ほっ。
思考を元に戻し、院長に金貨10枚を渡す。
「こんな大金もらえません」
「これは将来の投資の意味もあるんですよ。」
読書きの出来る人は少ない、平民のほとんどが読書きが出来ない。
孤児院で、読書きのできる子が増えれば、王都での就職もできるだろうし、中にはオリオン領に来てくれる子も増えるかもしれない。
オリオン領では、教育まで手がまわらないのだ。
アレクは院長に、領地開発の人材不足、特に事務方の人材が、将来的に必要になる等を力説して、お金を受け取ってもらった。
「リック、マック、ユリ、これから宜しくね」
「ア、アレクス様」
「アレクでいいよ」
「いやダメです、けじめです。」
「固いね」
「孤児院のみんなを、誘ってみてよ。」
「アレクス様、何で13歳以上なのですか?」
「えっとね、適当」
アレクは適当に13歳としたのだ、この国では15歳で成人だが、成人前から働いても問題ない。
むしろ生活の為、10歳前後から働いている。
「じゃぁ13歳以下でも働きたい奴は、働けるのか、です。」
「オリオン領での働き口は今回だけじゃないから、定期的に王都に来るから大丈夫だよ。」
リックたちと別れたアレクは、黒板を扱っている商会に入り、大きい黒板と40センチ角の黒板を20個注文し、孤児院に配達を頼んだ。
宿に帰ると父も帰っていたので、孤児たちの雇用を説明した。
父の了承をもらい、ほっとした。
寄付は自分の金だが、20人の雇用は独断専行したので、ちょっとビビりながら説明した。
異世界で生きていくにはどうすればいいのでしょうか。~無能スキルが優秀なスキルにおまれ変わりました~
https://ncode.syosetu.com/n9379hf/ まだ2話しかありませんが、お時間のある方は読んでください。宜しくお願いいたします。