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596話 西の盟主

西の盟主城はもうパニック状態となっていた。


オリオン軍が東に向かったという情報で安心していたからである。

そこに空飛ぶ船が領都に現れたのだ。これは噂に聞く飛行船である事は直ぐに分かりオリオンである事も分かったからである。


「盟主様、て敵は交渉を求めています。」

「・・・・宰相。あの空飛ぶ船に勝てるか。」

「正直に申しますと勝てません。空から攻撃されればこの領都は壊滅的被害を受けるでしょう。」

「そうだな。城壁も何も役に立たないとはな。フッ、時代が変わってしまったな。」


西の盟主はこれまで予算を切り詰め領内の防衛に力を注いできた。貴族としての見栄もあるために多少のぜいたくはしていたが予算のほとんどは領地の防衛費となっていた。防壁の建設、兵の武器や訓練と戦いも無い時代から軍に金をかける愚か者と言われ他の盟主からは馬鹿にされていたのである。



「会談に応じよう。」

「はっ。」




西の盟主とアレクとの会談はガレオン号で行われることとなった。



「ようこそガレオン号へ。」

ニコニコと笑顔で迎えるアレクである。


西の盟主はかなり緊張している。笑顔であるが顔が引きつっている。


「オリオンの御曹司であるか、ワシはダーイア王国西の盟主でカーレン公爵だ。」

「公爵閣下ですか。ダーイア王国内で王に次ぐ爵位ですか。あっお、私はアレク・オリオンです。」


ダーイア王国には3つの公爵家がある。4盟主の中で公爵はこの西の盟主だけである。後の盟主は侯爵位である。


「公爵と言ってもダーイア王国では爵位など何の意味もないがな。」


ダーイア王国では貴族と平民は大きな違いはあるが貴族位の位であれば爵位は余り重要では無かった。

ダーイア王国は王の力が無くなり傀儡となっている為に爵位より実力がものをいう時代となっていた。


「オリオン殿、西の領地にこの空飛ぶ船で来たがここを攻めるのか。」

「カーレン殿次第ですね。今オリオンとダーイア王国は戦争中です。普通なら問答無用でこの都市を攻撃しますがオリオンは無駄な血は流したくありません。」

「ほーーっ降伏しろという事か。」

「いいえ、降伏ではなく講和ですね。」


カーレンはガレオン号の甲板で会談を行っている。ガレイン号には大砲や武器もあるが人が少ない。


「オリオン殿、この船一隻で西の領地を落とせると思っているのか。」

「アハハ、人が少ないと思っているのですね。このガレオン号に今いる乗組員は100人前後ですよ。100人でこの広い西の盟主領を占領する事は無理でしょう。ですが空から無差別攻撃は出来ます。民を無差別に殺しまわる事は出来ますね。カーレン殿はそれを阻止する手立てはお持ちですか。」

「・・・・・・・」


アレクはあえてカーレンをガレオン号内に招待したのだ。ガレオン号の大砲を見せ民を殺せることを理解させる為であった。


「オリオンはダーイア王国より人口は少ないでしょう。ですが兵の数ではなく技術力が違います。一人の兵で100人を相手にしても勝てるんですよ。この大砲一発で多くの人を殺せます。こちらは無傷です。何しろ遠くにいますからね。これからは戦争の形が変わってきます。かつての古代文明の兵器がオリオンにはあります。このことを分かってもらいたいですね。」



アレクの言葉をカーレンはきちんと理解していた。このダーイア王国でももう使えない兵器が残っているのだ。


「オリオンはダーイア王国を潰すつもりなのか。」

「いいえ、ダーイア王国を消滅させようとは思っていませんよ。少しだけ形を変えたいだけですよ。」

「・・・・オリオン殿、形を変えるとは」

「それはですね・・・・」


アレクはカーレンに自分の考えを伝えることにした。

ダーイア王国は王の権威が地に落ちている。ダーイアで4盟主が国政を行ない国の舵をとっていることは周辺諸国は皆分かっている事である。ダーイア王国内での争いは早急に終わらせなければならない。

アレクとして見ればダーイア王国から移民が押し寄せてくることが負担なのだ。オリオンとダーイアの国力と豊かさの開きがあるためにオリオンに流れてくるのだ。

ならばその差を埋めてしまえば人の流れも落ち着くだろうと伝えたのだ。


カーレンは困惑していた。戦争相手に経済の話をしているアレクに戸惑っているのだ。


「オリオン殿、儂たちは戦争中だぞ。」

「勿論分かっていますよ、カーレン殿にはダーイア王国を纏めてもらいたのですよ、オリオンの調査ではカーレン殿以外にダーイア王国を纏められる人はいません。王や他の盟主達では無理でしょう。」


ここでカーレンはアレクが何を言っているのかを理解する。


「まさか戦争が終わった後の事を話しているのか。」

「ええそうです。カーレン殿オリオンの力を甘く見過ぎですね。ダーイア王国はなにも出来ずに滅びます。」

「そんなに簡単には負けない。」

「勝てるとは言わないんですね。」

「・・・・・・」

「カーレン殿も分かっているのでしょう。今ダーイア王国の王都へドラゴンが向かっています。ドラゴンに勝てると思っているのですか。」

「・・・・・・」

「ダーイア王国王都はドラゴンを見て多分降伏するでしょう。よほどのバカでなければ勝つことは出来ないと分かるはずですからね。ほかの盟主にもオリオンの軍が向かっています。残る北と東の盟主は戦う事になるでしょうがオリオンには勝てないでしょう。西の盟主であるカーレン殿がダーイアを纏めなければ又内戦がおこりますよ。」

「だが儂では纏まらんだろう。」

「いいえカーレン殿だから纏まるのです。ダーイア王国の元王族ですからね。」

「ふっ、良く調べているな。儂が元王族であることを知っている者は少ないのだがな。」

「無能、昼行燈と色々な噂がありますね。カーレン殿はかなり優秀なのでしょう。ほかの盟主からの警戒が皆無でしたからね。戦争より国の運営に向いていると思いますよ。カーレン殿がダーイアの王であればまた違ったことになっていたかもしれませんね。」

「ふっ、結果は変わらない。オリオンはどうなっていても勝つだろうがな。分かったオリオンの策に乗ろう。それが死者が一番少なそうだ。」


それから二人はダーイア王国とオリオンの取り決めを行なった。北と東の盟主が倒れるまでは何もしない事を確認して、その後に一気にダーイア王国を再編する事となったのだ。



「イヤーーー、これからも宜しくです。」

「アレク殿、これからは仲間です。ダーイア州を宜しくお願いいたします。」


アレクとカーレンは意気投合して話し合いは終わった。



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