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593話 カイン弱者と戦う

カインは少し落胆していた。

強者が出てこないのだ。カインの相手をした者達はどう見ても強者とは言えない者達であった。


軽く殴るだけで吹っ飛び転がっていく。カインにしてみれば訓練をサボっている者達にしか見えなかった。


数十人がカインの周りに転がっている。


「おい、ここの領主はドラゴンにも勝つほどの強者だと言うが呼んで来い。」


「「「「「・・・・・・」」」」


門の入り口で震えている門兵達にカインが声を掛けるが皆無言である。


カインの言葉が町で広がり噂話であることを知っていたのである。実際はそんな噂話など眉唾ものであることはこの領都の住人であれば誰もが知っている事であった。

だが領都を離れていくほど噂は大きくなり一人の英雄を作り上げるまでになっていたのであった。



太り気味の門番が肉を上下させながら盟主城へ走っていく。カインはこいつは走っているのかと思う程の速度であるが本人はいたって真剣に走っているつもりであった。



盟主城


「たたた大変です。ドラゴンに乗っている者はオリオンの者です。」


城内に沈黙している。

城内の者達もある程度は予想していたからである。この時期に領都に攻め入る者など戦争相手しかいないからである。

先日オリオンに敗北している為にもう来たのかというぐらいであったがまさかドラゴンと一人の少年だけだとは思っていなかったのだ。それに門兵の話では少年に勝てば盟主の勝利となると聞くと城内の者達は沸き立っていた。


調子に乗った盟主は今いる強者たちを集めたのだ。

そして盟主の噂の話を聞くと腹痛となり部屋に入って出てこなくなってしまった。

しかたなく盟主の側近たちが強者たちを先導して門に向かう事となった。



門前


門の前には多くの民たちが押し寄せていた。門から伝令が走り戦っている音も聞こえないために様子を見に来た民が決闘の事を言いふらしたのだ。

カインと強者との決闘である。勝ったら戦争が終わるとの事で盛り上がっていた。


民衆の間を自称強者たちはいい気分で歩いていた。

英雄になったような扱いに強者たちはもう勝った気になっていた。



カインの待つ門前に到着する。


「お待たせしました。」

「やっと来たか、もう誰も来ないかと思ったぞ。」

「私は南の盟主家宰のセパスと申します。領都最強の者達をお連れしました。戦いの前に確認ですが貴殿に勝利すればオリオンとの戦争は我が盟主の勝利としてよいのですね。」

「嗚呼いいぞ。俺に勝てればな。領都最強の者と言ったがここの盟主が最強ではないのか。」


「「「・・・・・・」」」」


「勿論我が盟主様が最強であります。ですが盟主様に挑むにはこの精鋭たちを倒すことが出来なければ盟主様に挑むことは叶いません。」

「そうなのかならば早くやろうぜ、俺は強い者と戦いたいんだ。」


セパスは背中に冷や汗を流していた。盟主の噂を流した張本人であったからである。セパスは盟主とダーイア王国の各領主たちをけん制するために、そして将来国の王となるために各地に武勇伝を広めていたのである。

その事で戦いを挑んでくる者がいるなど考えもしていなかったのだ。相手は南の盟主である。

一般人がおいそれと会えるような人物では無いのだ。そのために拡張した武勇伝を広めていたのであった。

それがオリオンとの戦争に負けて南の盟主の武勇伝に傷がついたこの時に、こんな少年が現れ戦いを申し込んでくるなどセパスからしてみればありえない事であった。

オリオンとの戦争が無ければ、領都にドラゴンと現れなければ盟主の武勇伝は伝説として語り継がれたであろう。かも知れない。


カインの前に一人の男が立っていた。


「俺が相手をしてやる。泣いて謝っても許さないがな。ハハハハハ。」

「御託はいいから行くぞ。」


ボコッ。


「グエッ・・・・・」


シーーーーン。


「おいこいつ本当に強いのか、こんな弱者オリオンにもいないぞ。」


シーーーーーン。


コソッ


「おいビックが一撃で負けたぞ。」

「ビックに勝てる奴なんていないだろう。」

「家って本当に強者の集まりなのか。」

「・・・・・」



次々とカインに挑んでいくが誰一人カインに触れる者もいなかった。


「なーーー本命を出せよ。こんな弱者ばかりじゃ相手にならないぞ。」

「おおお待ちください今最強の盟主が支度しています。そろそろ準備も出来る頃でしょう。このセパスが連れてまいります。では後程。」

一礼をして去っていくセパスであった。その足取りはゆっくり歩いているようでかなりの速足であった。



「おおお御屋形様ーー。」

「セパス、その呼び方は禁止しておろう。もう勝負はついたのか。」

「そそそれどころではありません、我が領地の精鋭がすべて一撃で負けました。」

「・・・・・・・まことか。」

「はいおやか、盟主様をお呼びです。」

「・・・・無理だ、戦ったことなど無いんだぞ。」


この二人城から姿を消した。持てるだけの宝石と金貨をもって秘密の通路から城を脱出してしまったのだ。


カインと負けた者達は門の前で待っていた。


「ねぇーねー、カインお腹がすいたよ。」

「そうだなレッド俺も腹が減ったな。おーーいい門番、金払うから何か食い物あるかーー。」


何とも軽いカインの言葉に門番は戸惑うばかりであった。

戸惑う門番と違っていたのは民衆たちである。カインとレッドの様子を見ていた民衆たちは話の出来る者と認識したのだ。盗賊のような奪って殺すような人物ではないと分かったのだ。民衆の中にも商人もいる。ここぞとばかりに商人たちは屋台や物を売る様に門前に集まってきたのである。普通は門の外に店など出す事は無い。だが今カインのいる場所は門の外なのだ。

盟主の登場を待つ間にカインは金を払い串焼きやパンを食べている。レッドも美味しそうにたれ付きの串焼き(本当は串なし)をうまそうに食べている。

カインとレッドの美味そうに食べる姿を民衆は黙って見ているだけであった。だがお腹が鳴っている。


「おーーー、なんだお前らも腹が減っているのか。盟主が来るまでみんなで食べようぜ。今日は俺のおごりだ」


カインは屋台や商人たちに金をばらまくとグーーーッとお腹が鳴っていた子供たちが一斉に飛び出してきた。それにつられて大人たちも姿を現し門前はお祭りの様になっていた。


だが1時間たっても2時間たっても盟主が姿を現さないのだ。


流石のカインも門番に見てこいと言ったのだ。



敵である門番も串焼きをごちそうになった事もあり城へ様子を見に行ったのであった。



その間も民衆とカインとレッドの宴会は続いていた。



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