592話 カイン領都を攻める
ルドルフ、レオン、アームストロングの3者はこれからの事を話し合っていた。
南の盟主軍には勝った。だがその後の行動で意見が分かれていたのだ。
ルドルフ・レオンは此の侭南の盟主領都へ向くことを主張しているが、アームストロングは各領主の説得を優先してから領都へと主張している。
「ルドルフ殿、何とか各領主を説得させてくれ。」
「アームストロング殿、信用できない味方程、厄介な者はありませんよ。」
「・・・・・それは分かっている。」
ルドルフ達は南の盟主側にいる領主を今味方にするか、戦後に味方にするのかでもめていたのだ。
ルドルフとしては戦後に負けた者として処分を含めて行う事が一番良い方法だとと主張している。実際にこの方法の方が利点が多いのである。一方アームストロングは元南の一派であったことから仲の良い領主を仲間に入れたいのであった。
「アームストロング殿私も無暗に領主を処断する事はしない。そこは分かってほしい。」
「分かります。ルドルフ殿の考えは分かっております。ですが・・・」
そこにオリオン軍の伝令が駆けこんできたのだ。
「たたた大変です。南の領都が壊滅しました。」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「ルドルフ様、南の領都が壊滅しました。伝令によりますとドラゴンが現れ領都を破壊したとの事です。
「まさか、赤いドラゴンじゃないよな。」
「真っ赤な大きなドラゴンと報告でした。」
「すぐに領都に進軍するぞ。いそげーーー。」
先程までの意見の違いは無かったことになってしまった。
敵対する領都が破壊されてしまったのだ。敵はもう戦どころでは無いだろう。
南の盟主とオリオンが平原で戦準備をしている頃
ある町でカインはオリオンと盟主が戦争になるという噂を聞きつけていた。
食堂でその話を聞いたカインは
「おう、その話を聞かせてくれ。」
その男は黙ってグラスを持ち上げる。男のグラスにはもう酒が入っていないのだ。
「オヤジ、こいつに酒を3杯出してやってくれ。」
ぎょっとする男だが、3杯の言葉を理解したのか酔っ払いとは思えないほどの滑らかな口調で喋りだしていた。
男の話によれば、今オリオン領では空前の高景気であり仕事を求め各地から人が押し寄せているという。その人々をオリオンは仕事を与えているという。この地域の領主では考えられない話なのだ。この辺では仕事と言えば多くは農業である、後は職人か商人、或いは兵士である。選べる職業など無いのだ。
土地の無い者は農家に小作人として働き、安い賃金で過酷な労働となっている。又職人、商人などは伝手が無ければ丁稚にもなれないのである。
それがオリオンでは職に就くことが出来るというのだ。3食寝床付きであるという。
その事が噂として広まりオリオンの周りの地域では人が逃げ出す騒ぎとなっている。特にダーイア王国は深刻でオリオンとの戦争にまで発展している。今南の盟主が人を集めオリオンと戦争になっている事を教えたのだ。
「それでその南の盟主は強いのか。」
「嗚呼、噂じゃドラゴンも一撃で葬るほどの魔法の使い手だ。」
「おーーー、凄いな。それほどの使い手がいるのか。」
「嗚呼、噂だと、南の盟主の精鋭たちは一人で10人を相手に出来るほどの強者という事だな。」
カインはその噂を聞いて武者震いをした。強敵と戦える喜びである。
「ねーーーカイン、行く、行く、行くよねーー。」
「レッド行くに決まっているだろう。」
カインは強い敵と戦いたいのである。オリオンと敵対している戦争中なのだ。これ程の好機は無いのであった。
翌日カインとレッドは南の盟主領都を目指して飛び立ったのだ。
「カイン、あれが領都じゃないかなこの辺で一番大きな街だよ。」
「レッドは凄いな地理も分かっているんだからな。」
優しくレッドをなでるカインであった。
「へへへ、じゃぁ領都の門の前に降りる?それとも領主の城に降りる?」
「領都の門の前にしよう。流石に城に降りたら敵でも悪いからな。一応手順として門から攻めないとな。」
「さすがカインだね正面突破だね。」
「やっぱり男のロマンだろうーー。」
二人の話は領都をぐるぐる回りながら話していたのだ。領都ではドラゴンが獲物を探して町を飛び回っていると勘違いをしていた。その恐怖でいつもは賑わっている町中に誰も人がいなくなっていた。
町を守る兵も固まっている。空を飛ぶ敵の対応など今まで無かったのだ。弓などではドラゴンまで届かない。弓以外の飛び道具がこの町には存在していないのである。
「た隊長、ドドドラゴンです。」
「ま町を守らなければならない、万一ドラゴンが町に降りたら突撃する。」
「たたた隊長ーーーー。」
もの凄く不安な表情をしている兵士たちである。
ドスン。
レッドは地上に降りるともの凄い地響きが響き渡る。
レッドの背中から飛び降りるカインがいた。
「俺はカイン・オリオンだ。ここに強者がいると聞いてきた。もし俺が負ければ戦争は負けでいいぞ。」
カインのこの言葉は信じられない物であった。オリオンの者であると同時に自分に勝ったら戦争は負けでいいと言っているのだ。普通ではありえない事なのである。これを平民が聞いていいれば、ふーんそうなんだ。ぐらいで聞き流していただろうが南の門を守る者が他だの平民のはずがないのである。
「その言葉まことであろうな。貴殿が負ければ戦争は負けでいいということだ。」
「嗚呼、いいぞ俺が負ければな。」
声を出した門を守るこの男は剣には自信があった。盟主の精鋭ほどではないが少年に負ける事は無い。
流石にドラゴンには敵わない事は男も分かっているのだ。だから俺に勝ったらとカインに念押しをしたのだ。これは多くの者達に伝えるためでもあった。
見た目が少年であろうが、カインを倒せれば戦争を勝ちに導いた英雄となるのだ。栄達は思いのままである。その事に気づいた他の者達もカインの周りに集まって来ていた。
カインは少し嬉しくなっていた。
人が集まって強者が集まってきたと喜んであるのだ。カインの強者の基準と集まってきている強者たちの基準では大きな差があった事は言うまでもない。
「死合前に我が名は門兵長のマカである。この道20年ひたすら門番をやってきたのだその合間で剣のけいこを・・・・・・」
ボコッ。
カインは長ーーーい名乗りに呆れていた。面倒くさいので殴って終わりにしたのだ。まぁ他の仲間も同じく呆れていたために誰もカインを非難もしないのだ。それよりもカインに挑もうとして数人の男たちがカインの前に出てきているのであった。




