588話 緊急事態発生
ドワーフの騒動も少し落ち着き、平穏な生活が戻っていた。
「アレク様、飛行船がこちらに向かってきています。」
「レオン兄かルドルフ兄だろうな。」
アレクの予想は当たっていた。大きな貨物船から出てきたのはレオンであった。
「レオン兄、貨物船を使かうとカイン兄に恨まれますよ。」
「いいんだよカインはいないんだろう。」
「ええ、偵察に行ったっきり戻ってきません。」
「アハハハ、あいつらしいな。偵察の事忘れてるんじゃないのか。」
「忘れてはいないでしょうが、時間の事は忘れているでしょうね。」
「多分楽しくて忘れているんだよ。」
「まぁそうでしょうね、所でレオン兄は突然どうしたんですか。」
「うん、まぁそのー、何だ色々と相談があってな。」
ものすごく歯切れの悪いレオンである。
「外では話しにくいでしょうから屋敷に行きましょう。」
アレクとレオンは二人で屋敷(城)へと向かった。
「レオン兄どうしたんですか。」
「アレク、今兄貴の治めている領地に人が押し寄せている。」
「えっ山の迷宮からですか。」
「違う、ダーイア王国からだ。」
「なんでまた。」
「ダーイア王国が王位を争っている事は知っているよな。」
「もちろんです。」
「ダーイア王国は争いはたまにあるが一応内戦状態となっている。まぁ4盟主の力が拮抗している為に綱引き状態だな。誰かの力が弱まれば一気に動くだろうがな。」
「内戦でも争いが無いのならばダーイア王国の民が何でオリオンに来るのですか。」
「・・・ダーイア王国領地内の税が上がっている。」
「なんでまた、王位を狙うなら民の支持は不可欠でしょう。」
「・・・・・・違うんだ。」
アレクの考えは間違っていない。領地経営を行うにあたり領主は民の支持があればうまく領地を経営できる。開発一つとっても民の力を借りなければ畑一つできないのだ。オリオン領の考えは間違っていないである。
所が他の領地では少し考え方が違っていた。領主あっての民という事らしい。
領地開発は領主が指示を出し民が働く事は変わりはないのだが根本的な考えが違っている。
オリオン領では民が開発の仕事をしたときは労働に沿った賃金が発生する。
それに開発した畑は安く民に売却するのであった。
他領では民が働く事があたりまえであり。無償で働く事が基本であった。
他領では畑を開発後は領主の畑となるのだ。働いた民には賃金も何もないのである。これも税の一種となっている為に民は仕方なく労働を行っているのである。
「ダーイア王国はそんなに酷いんですか。」
「嗚呼、酷くなってきている。下手したら国が4つに割れるな。いや5つか。」
「・・・・・それで何でここに来たんですか。」
「アレク、分かるだろう。移民者を引き取ってくれ。頼む。」
「無理です。絶対に無理です。」
「アレク、ここは広いだろう5キロ四方を防壁に囲まれて安全だ。それに家も余っているよな。」
「・・・・・食料が足りません。先日もドワーフ族1200人が難民としてきたばかりなんです。」
「おおーー1200人も受け入れ態勢が整っているのか凄いな。」
「レオン兄、俺が何か言うと褒める作戦ですか。」ギロリ
「・・・・頼むよ。向こうも手一杯なんだ。外交の事もあるしな。」
「何人ぐらいダーイア王国からきているのですか。」
「・・・・・人。」
「はい?何人ですか。」
「・・・・・000人」
「はい?」
「エーーーい、8000人だ。」
「はっ、普通に無理でしょう。」
ルドルフの治めるオリオン領は大パニックとなっていた。
綺麗に整備された畑と街並みそして魔道具であった。山の迷宮から送られてくる中古品(型落ち)の魔道具は近隣商人の目玉商品となっていた。交易の為の町も人であふれかえっていた。近隣領地のアームストロング領も好景気となり他のダーイア王国領主から恨みを買う程になってしまっていたのである。
ルドフル領にダーイア王国を始め多くの領地から人が押し寄せてきている。その数およそ8万にである。
「8000人ですか。」
「嗚呼、今はまだ領地には入れていないが時間の問題だな。」
「ダーイア王国がよく黙っていますね。大きな町一つ分の人数ですね。」
「今は規制して領外に出る事は無くなったようだが、先に出た者も帰る事が出来なくなった。」
「・・・・・要は面倒見なければ飢え死にするしかないと言う事ですか。」
「そうなるな。今新しい町を建設中だ。山の迷宮から食料援助をしてもらっている。」
「それならばここに来なくともいいではありませんか。」
「・・・・・幼子とか小さな子供たちとその親たちを・・・・」
「絶対無理です。」
「そう言うなよ。ここならもうすむ家もあるしな。それに物資の援助は絶対にするから、なっ、な、なー頼むよ。」
「・・・・・・」
「向こうは幼子とかすぐに暮らせないんだよこれから開発をしなければいけないからな。」
「・・・・・・何人ぐらいいるんですか。」
「親含めて1000人。」
「ハーーーーー。」
「アレク、俺たちは山の迷宮で育ってかなり裕福だったようだ。人口が多くなりすぎて食料危機という問題はあったがかなり恵まれていた。だがここは違う生きる事にみんな必死だ。生き残る為に領地から幼子を抱えて必死で来た者達なんだ。」
「分かりましたよ。でも食料援助は絶対ですよ。ここには食料はありませんからね。」
「大丈夫だ。任せろ。」
「でもこれで戦争とかになりませんか。」
「なるだろうな。ダーイア王国を始め他から家に大量に人が来ているんだ、領主たちは税収が減った責任をオリオンに言ってくるだろうな。」
「ルドルフ兄もレオン兄もそれでも助けると言う事ですね。」
「そうだ、他国と戦争になっても目の前で飢え死になんてさせられるか。」
「こちらに幼子と親を避難させると言う事は戦争は確実という事ですか。」
「嗚呼、近いうちに戦争になるな。アームストロング領と他2領はオリオンに付く事になった。」
「ルドルフ兄とレオン兄が負ける事はないでしょうけど、父上は了解しているんですか。」
「もちろんだ、父上が先頭になって戦争準備をしているぞ。」
「マジですか。」
「嗚呼、みんなそれに引きずられているのが本音だな。」
「・・・・・・・戦えない人たち全て面倒見ますよ。でも食料はお願いします。」
数日後アレクのオリオンの遺跡(村)には1500人の子供と親500人が飛行船で訪れていた。
「あと何往復するんだ。」
「船長、あと10往復です。」
「・・・・・過労死するな。」