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582話 裸の騎士達

子供たちは必死に働いている。

まだこの村は未完成である。畑はあっても何も植えられていないのである。

長屋もあるがほとんどは空き家である。

この村の総人口は300人である。


「なんかこう見ると、子供の人数が多いな。」

「そうですね、300人中100人近くが子供ですね。アレク様、これからどのように村の運営をお考えですか。」

「村の運営か、作物はまだ出来ないね。でも住む所はあるし防衛も問題ない。当分は食料を買っていくしかないね。」

「ルドルフ様の所から買うのでしょうか。」

「出来ればルドルフ兄から買いたいね。それに山の迷宮都市からも食料が来るでしょう。」

「それならば山の迷宮から先生を呼びませんか、先生に子供たちの教育をお願いできれば将来役に立つと思います。」

「いいねいいね。それで行こう。」





「アレクさま、見張りの者からの報告で馬車が向かってきております。」

「馬車、どこかの貴族かな。行ってみよう。」


アレクは村の門へと向かった。


「開門、かいもーーーん。」

「・・・・・・・・」


「何をしている、早く門を開け。私はダメーズ領の代官であるぞ。」

「ここはダメーズ領ではありません。要件は何でしょう。」

「今日からここはダメーズ様の領地となった。私が代官を務める、。」

「はっ?お帰りはあちらです。」

「いいから中に入れろ。」

「入れる訳ないだろう、ここはオリオン領だ。」

「戦争になるぞ、ダメーズ領は1万の兵を持っているんだぞ。こんな辺鄙なところすぐにつぶせるぞ。」

「やってみればいいだろう。1万程度なんてことないな。」

「戦争だぞ、いいのか。」

「いいって言ってんだろう。帰って上に言ってこい。お待ちしていますと言われたとな。」


アレクはこの自称代官と騎士や兵たちの服を燃やしてやった。


「ファイヤー。」


「あっちあっちいーーー。」

「誰か火を消してくれーー。」


「おーー、乾燥しているからよく燃えるなーー。流石不毛の地だな。」

「アレク様やり過ぎですよ。」

「あれくらい大丈夫だろう。誰も死んじゃいないからね。」



アレクのファイヤーで服を燃やされた一行は真っ裸で来た方向へ帰っていった。

馬車に乗っていた代官はまだいい。馬車の中で裸を見られることも無いのだ。

だが馬に乗っている者達はかなり恥ずかしい。

段々と人も多くなっていく、ダメーズ領でいつも威張っている者達である。

街道ですれ違う商人や旅人たちは最初目を見開き驚くが一瞬で真顔となり知らん顔をしている。

裸の騎士達も周りが裸の事を言わないのだ。一瞬自分は洋服を着ているのではないかと錯覚をしてしまう程誰も何も言わないのであった。


所が通り過ぎると大笑い声が聞こえてくるのだ。


「ガハハハハハ、あれ見たか。」

「裸で馬乗っているぞ。バカだろう。」


真っ赤な顔になる騎士達である。


それが段々とひどくなっていくのだ。まだ今は人が少ない、だが町に行けば多くの者がいるのである。

騎士は馬車の中にいる代官に進言する。


「代官様、どこかで服を調達しませんと町に入れません。」

「そんなこといい。早く町に戻るぞ。」


騎士の願いは叶わなかった。


代官は馬車の中出るために人に裸をさらすことが無かったのだ。だが騎士たちは違う、人に裸を見られながら馬車の速度で進まなければならなかったのだ。

騎士としてこれ程の屈辱はない。まぁ騎士してよりも人としての尊厳であろう。


ここで騎士たちは休憩もとらずに町に向かったことで馬がばててしまったのだ。

人通りも多くなったこんな場所で休憩を取らなければならなかった。

何より馬から降りることが騎士たちにとって嫌だったのだ。

それは裸であるために大事なところを見られてしまうのだ。騎士の享受として堂々としていなければならない。それに手で前を隠す事は敵に対して後れを取る事であった。


「くくくっ、あいつ小さいな。」

「くくくくっ、見えないほど小さいぞ。」

「あいつはタケノコさんだな。くっははーー」



小声で話す者達であったが騎士たちの耳は情報を得るために高性能となっていた。


騎士達は真っ赤な顔をしている。うつむいてもごもご言っている騎士も出始めている。精神が崩壊してしまっている者がいると同時に興奮している者もいる。変態である。


屈辱と興奮を味わいながら町の戻ってきた一行は町で生き恥をさらしながら領主館へと向かった。

領主館の入り口でも同じ騎士たちがら大笑いされた。ここで崩れ落ちて気を失う者も出ていた。流石に気の毒になった同僚たちは服を手配して休憩所に連れて行ったのだ。


馬車の代官も服を調達して領主に謁見する用意をしていた。


所が領主は不在であった。

代官は不思議に思い館の者に聞くと領都で問題が起きて領都へ向かったと言われたのだ。

代官は一人で怒っている、自分がこんなに恥をかき帰ってきたのに領主はいないのだ。領主の命令でオリオン領へ向かい交渉したのだ。軍を出さなければ気が収まらないのだ。


「領主様は今後の事を何か言っていたか。」

「はい代官様の良きに計らえと言っておりました。」


代官はニヤリとする。待ち望んだ答えであったのだ。


「おーーー、そうかそうか。領主様も分かっておられるな。」


代官は急ぎ兵を集める指示を出したのだ。

この町だけでは兵は足りないと思い、領都以外の町や村に兵を集めさせたのであった。何故領都意外なのか、それは領主にバレることを恐れたからであった。

領主はオリオン領を領地に組み込み税を搾り取る算段である。戦争など考えていないのだ。

代官はその事を十分に分かっているのである。

そのためにオリオン領都の戦争は一瞬で終わらせなければならなかった。領主にバレる前に終わらせ自分の功績とするために、そして屈辱をオリオンに与えるためにである。


代官は必死に人を集めた、自分の資産を使い武器と人を集めたのだ。

そして集まった兵は500人になっていた。


500人それはかなりの兵力である。中には騎士も含まれていた。裸にされた騎士達である。オリオンへの戦争という事で参陣したのだ。



この500人の軍は影では裸軍と揶揄されていた。兵の中にも裸軍と言っている者もいるほどであった。

正式には領軍となっているのだが誰も領軍とは思っていないのである。


「オリオンの村へ行くぞーー。村での略奪は好きにしてよいぞーー。」


「「「「おおおおーーーーーー」」」」」


軍で略奪許可を与えると士気が上がるのだ。この時代の習慣にもなっている。勝った者がすべての権利を持つのである。負けた者はすべてを失うのである。



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