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581話 カインの世直し

ドカドカと宿に入ってくる領都の警備隊がいる。

夜の宿襲撃の聴取をする名目であるが、狙いはカインであった。

この襲撃した地回り達は領との役人たちと繋がっているのだ。


「お前かこの宿を襲撃させた犯人か。」

「はっ、何言ってんだ。ボケてんのか、俺は被害者だろう。」

「被害者に見せかけた、主犯だ。」

「はーーぁ」



カインを囲む警備隊たちは剣を抜きカインに向けている。


宿の従業員たちも警備隊に対してカインは客であり無関係だと伝えているのだが、警備隊は全く話を聞こうともしないのである。


「なんだ俺を犯人にしたいようだな。お前ら腐ってるな。」


カインはまだ朝ご飯を食べていなかった。物凄く不機嫌であった。


「レッドこいつ等追い出すぞ。」

「了解。」


カインとレッドは殺さないようにドアの外へ投げ捨てていく。


「ギャーーー。」

「ひやーーーー。」

「あれーーーー。」


「何だあいつらおかしだろう。レッド朝飯食おうぜ。」

「お腹空いたよー。一杯食べよーー。」


宿の従業員たちは黙ってカイン達を見ている。何も言わない、言えないのだ。

あれ程、狂暴な姿を見ている従業員たちは黙ってカイン達の朝食の用意をしている。


「このご飯美味いなー。」

「この肉美味しいね。」


朝食も一段落した頃、宿の支配人であろう者がカインに声を掛けてくる。


「カイン様、少し宜しいでしょうか。」

「ん、何だ。」


支配人の説明にカインは驚く、この領都の実情を説明したのである。領都は地回り達と役人などが暗躍してこの町を仕切っている。昨日の襲撃もカインを殺すためであり、先ほどの警備隊もカインを捕まえる事を目的としている事等をカインに分かりやすく説明したのであった。


「俺のせいでここが襲われたのか。」

「さようです。」

「そりゃ弁償しなきゃな。幾らぐらい修理にかかる。」

「いいえそれは必要ありません。カイン様が負担するべきものではありません。」

「じゃぁ俺がそいつらから慰謝料とって来てやる。レッド行くぞーー。」

「おーーさすがカインだね。男前ーー。」


カインとレッドは支配人の言葉も聞かずに出て行ってしまった。


「カイン様ーーーー・・・・・」


表に出たはいいが地回りや役人の場所が分からなかった。

「何処にいるんだ。」

「ねーカイン聞けばいいんだよ。ちょっと聞いてくるよ。」


レッドは近くの屋台で聞き込みを行なった。ちゃっかりと串焼きも貰っていた。


「カイン、ここ真っすぐ行くと警備隊の詰め所があるみたい。」

「ありがとなレッド。お前出来るな。」

「へへへへ僕は出来るドラゴンだからね。」


カイン達は気づいていないが注目の的であった。喋る小型のドラゴン。そして強いカインである。

地回りとの喧嘩や宿の襲撃も朝には町中の者が知っていた。




カインとレッドは詰め所に向かっていた。



カインとレッドの後ろには多くの町の住人たちがついてきている。

これから起きる騒動を見るためである。

この町は悪に染まっている。町全体が不正の温床の様になっているのだ。住人たちは日々怯えながら暮らしていたのである。そこにカインとレッドがふらりとやってきたのだ。

地回りに恐喝されると思っていた住人たちはまさかカインが地回り達を倒すとは思ってもいなかったのである。



「おーーここだな。」

「何だお前はここは警備隊の詰め所だぞ。」

「宿にきた奴と同じ服装だな。」ボコッ。


カインは警備隊の者を殴り飛ばす。そして詰め所の中に入っていく。中には先ほど殴られた者達が多くいた。けがを治療している者など床に寝かされている。


「ききききさまーー。」

一人の男がカインを見た叫んだのだ。


その言葉で動ける隊員たちは剣を抜きカインに斬りかかっていった。

だがカインに殴り飛ばされていったのだ。


ボコボコ、ボコボコボコ。


詰め所にいる全員がカインにボコボコにされていた。




カインは警備隊の詰め所を出ると次は地回りの者と決めていた。近くの者達に場所を聞きながらこの町の地回り(やくざ)を潰して回るのであった。




オリオンの遺跡(村)


この頃アレクは、開発に大忙しであった。ルドルフ兄の所から10人の人手が来なかったら逃げ出していたかもしれない。


「アレク様、如何いたしますか。この子たちは皆子供ですよ。」

「仕方ないだろう。親がいないようだし。俺たちが面倒見ないと子供たちだけでは生きていけないだろう。」


アレクの周りに子供たちが集まって来たのだ。

捨てられた子供たちがオリオンの遺跡の周りに住みついていたのである。この不毛の地であれば誰も襲って来る者達はいない。

そのためにこの場所に住みつき何とか生きていたのだ。それをアレク達が保護したのである。住みついたと言っても数日である。



「俺たち働きます。ここにおいてください。」


「「「「「「お願います」」」」」」


「いいよ、その代りきちんと働いてね。」

「えっいいんですか。」

「当たり前でしょう。食料はまだ余裕あるしね。それに畑仕事や掃除とか色々仕事あるしね。長屋に住んで食事は一日3食だよ。一人前になる迄は面倒見るからね。」


子供たちにとって夢のような話である。


この周辺地域では孤児院などはない。孤児になったら奴隷商に売り払うのがこの地域の常識であった。

孤児となればもう町には住んでいられないのである。掴まれば売られてしまうからである。

そのために町を離れのたれ死ぬか山の中で生きていくかをしなければならなかったのだ。


「なんでこんな不毛の地に居たんだ。」

「あっそれなんですが俺たち奴隷商に掴まって売られるところだったんです。でもその奴隷商の馬車が壊れて俺たちを馬車の中に置いて村に向かっていったんです。でも一日たっても戻ってこなくて壊れた馬車の隙間から一番小さい子が出て鍵を開けたんです。」

「へーーー、凄いな。」


アレクは一番小さな子を見ていた。なんだか誇らしそうに胸を張っていた。


「よーしみんなは今日からこの村の住人だ。先ずはみんなでご飯を食べよう。」


「「「「「えーーーー、ご飯食べれるのーー」」」」


「「「「グーーー、グウーーー、グウーーーーーッ」」」」」とみんなのお腹が大合唱をしていた。



「パンと肉を大至急用意します。」

「大急ぎでね。」



子供たちの食べっぷりは凄かった。


「・・・一杯あるから落ち着いて食べようね。」



だがアレクの言葉は無意味であった。小さな子供まで必死に肉を食いちぎっていた。むしゃむしゃゴックン。



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