573話 違うんだーー。
「それがなアレク。ルドルフ兄は、今は何も出来ないと俺を追い出したんだぞ。俺も粘ったんだ。マリア姉に頼み、イリア姉にごまをすり必死にやった。だけどダメだった。」
「カイン兄、ルドルフ兄は今は何も出来ないと言っていたんですね。」
「嗚呼そうだ、これルドルフ兄からの手紙だ。」
「手紙があるなら早く出してくださいよ。」
アレクはルドルフからの手紙を確認する。
内容は今は新領地で手一杯だからアレクとカイン二人でやってくれと書いてあった。
それも新領主をアレクにするとお墨付き迄よこしたのだ。
「カイン兄、新領地はそんなに忙しかったですか。」
「そうだな、ルドルフ兄は死にそうな顔はしていたな。交易の町がやばかったな。人であふれていたぞ。」
「そうですか、それなら仕方ないですね。こちらはこちらでやって行きましょう。」
「えっ俺帰るよ。」
「何言っているんですか。ここ見てくださいよ。」
アレクはルドルフからの手紙をカインにみせる。
「あーーーー、ルドルフ兄俺をだましたんだーーー。くっ、ゆ許さない。」
「カイン兄、早速仕事です。この周りにいる村を探してここに住むように勧めてきてください。」
「えっ、俺一人で行くのか。」
「当たり前ですよ、俺は開発をしなければいけません。二人しかいないんですよ。」
「マジか。」
アレクの新領地(仮オリオン領)は領主アレク、領主代行カイン、領民0人のスタートなった。
「くそーレッドなんで俺だけ村人探しなんだよー。そんなに村人なんているわけないだろうよ。普通はみんな住むとこあるんだ。」
カインは大空を飛びながら独り言の愚痴をつぶやいていた。
するとレッドがカインに「カイン、人だよ。」
カインは下を見ると遠くに人の集団がいるのが分かった。その人たちはボロボロの服を着て逃げているようであった。
カインはレッドに近づくように指示を出す。
だがこれは拙かった。ドラゴンが襲ってきていると勘違いをしてしまったのだ。その者達はレッドが近づいてくるとバラバラに逃げ出してしまったのだ。カインは焦り声を掛けていくが誰も聞いてくれなかった。
「おーーーーい、違うんだ、違うんだ、おーーーーい。」
カインの言葉は意味不明であった。逃げる人々にしてみればただの雑音にしか聞こえなかったのだ。
カインは逃げ遅れた一人をやっと捕まえた。レッドは上空で待機中である。
「おーい、ドラゴンは襲わない。心配いらない。」
「・・・・・・・」
「大丈夫、俺が不用意に近づいてしまった。すまん。」
「ほほ本当に大丈夫なの。」
そこにはまだ10歳にも満たない少年がいた。腰を抜かしているのか動けないようだ。それにズボンは濡れていた。
「ごめんな、みんなと逸れてしまったな。」
「いいよ、俺一人だったし。」
「そうなのか、お前たちは何処に向かっていたんだ。」
「この先に町があるんだ。そこで・・仕事を探しに行く途中だったんだよ。」
「お前仕事探しているのか。」
「うん。」
「それなら俺と来るか衣食住付きでぞ。」
「えっ本当、ご飯食べれるのーー。」
「あぁ腹いっぱい食えるぞ。」
「いくいく行くーーーーぅ。ぐぅーー。」
「腹減っているのか。」
コクン。
「じゃこれ食っとけ。」
カインはマジックバックから水とパンと出して少年に与えたのだ。
パクパクパク、ゴックン。パクパク、ゴックン。
「ほらもう一個パンあるからな。」
少年にパンを食べさせていると周りの茂みの中がザワザワしている。
「おーーい、出て来いよ。パンをやるぞ。」
カインが声を掛けると少年少女の4人が茂みから出てきたのだ。
「お前たちも逃げ遅れたのか。」
「「「「コクコク」」」」
「パン食うか。」
「「「「コクコク」」」」
カインは4人にパンと水を与えると合計5人が落ち着くまで静かに見守っていた。
ものすごい勢いで食べる子供たちであった。
「少しは落ち着いたか。」
「あ、ありがとうございます。」
「お前たちは何処から来たんだ。」
「・・・・」
「この先の町に向かっているのか。」
「・・・・・実は俺たち町で売られる予定です。」
「2,30人いただろう。」
「はい、子供が20人でその他の人は領主の兵です。税金が払えなかったので俺たちが売られることになったんです。」
「何処の領主だ。」
「ダメーズ領です。この先を北東に進むと領都の町があります。」
「よし子供たち20人を、残り15人を探すぞ。俺がみんなの面倒見てやる。レッド探せるかーー。」
「カイン、大丈夫探せるよーーー。」
子供たちは上を見て固まってしまった。今まで気づかなかったがドラゴンがいたのである。パンを食べる事に必死で気づかなかったのだ。
「ああああああのドドラゴン、だだ大丈夫なんですか。」
「レッドは俺の友達だ人は襲わないぞ。」
それでも子供たちは震えている。
「まぁいいかここで待っていろな。」
カインはジャンプをする、それを見ていたレッドはスッと降下してカインを背に乗せるのであった。何とも息の合ったカインとレッドである。
「レッド子供たちを探してくれ。」
カインとレッドは子供たちを探し一人また一人と連れてきては飛んでいく。2時間ほどで20人の子供たちは見つかったのだ。
「フーーー、全員いるかー。」
「はい、全員います。」
「レッド、子供だから運べるだろう。」
「カイン大丈夫だよ。大人でも大丈夫だよーー。」
「流石にそれは無理だろう。ハハハ。」
カインは子供たちを一人づつ抱えてレッドに乗せていく。カインも少年であるがカインより皆年下だ。
「よーーし、レッド戻るぞ。」
「あいよカイン。」
レッドはゆっくりと舞い上がる。子供たちを気遣いなるべく揺れないように飛んでいる。
「うわーーーー、すごーーーい。」
「「「「「うわーーーーー」」」」
ゆっくり飛ぶドラゴンに少し慣れたのか、子供たちは大空を楽しんでいた。
「ほらあそこに見える城に行くんだ。」
カインの一言で子供たちは皆無言になったのだ。
この辺ではかなり有名なオリオンの遺跡である。
「えっオリオンの遺跡ですか。あそこは不毛の地です。」
「あーーー、もう違うぞ。作物も木も草も生えているぞ。」
「「「「「「えーーーーーー」」」」」」
レッドが子供たちの為に城の周りを低空でゆっくりと回っている。
「あーーー、木がある。すごーーい。」
「お城に水が流れてるーーー。」
「あれ、畑かなーー。」
「道があるーーすごーーい。」
「あっ、子供が手を振っている。」
レッドに乗っている子供たちは下にいるアレクに手を振っていた。
「ようこそオリオン領へ。」
アレクは両手で手を振っている。歓迎のつもりである。




