572話 開発と歴史
オリオン城周辺の開発は、管理者が行っている。
このオリオンの遺跡は迷宮のようなものである。管理者が物を作り変える事も新たにつくる事も出来るのである。ただ莫大な魔力が必要な為に普通はやらないのである。
今回はアレクが魔力供給源となり開発を行なっていた。
「俺の魔力がすっからかんだ。」
「アレク、お主なら明日には魔力も戻っている。どんどんやるぞ。」
げっそりするアレクであった。
今開発を行っている作業は街道作りと町の区画割である。道と上下水道があれば何とかなると管理者とアレクは考えたのである。
オリオン城を中心に半径5キロの開発を行なっているのである。不毛の地はまだ解除されていない。
今は町を作る土台が最優先となっていた。人が集まれば魔力も集まるのである。
アレクは一週間頑張った。魔力もこの一週間で数倍に迄伸びたのである。
「魔力の成長だな。」
「魔力ってこんなに増える物なんだ。」
「アレクそれはな、オリオンであるからだ。オリオンの者達は魔力量が多いのだ。だからこそ世界を制していたのだよ。力の無い者が世界を纏める事等出来んからな。」
「でも世界は一度滅びたでしょう。」
「あぁ滅んだな。だがそれは科学が進歩しすぎたせいもある。科学とはある意味人を滅ぼす物だな。」
アレクは管理者から3000年の歴史を学んでいた。
オリオンの繁栄から衰退、そして化学技術に台頭である。魔法のある世界で魔法以外の技術が出てきたのだ。これはオリオンの技術の応用であった。元のアレクスが色々な物を作り残した事が科学を進歩させてしまっていたのである。
アレクスは、火薬、銃などを残したのだ。武器以外もかなりの数を残していたがやはり注目されるのは火薬などの武器である。
火薬は戦争を変えてしまっていた。魔法の威力は人によりかなり違ってくるのだ。ところが火薬の武器は誰が使おうが同じ効果を発揮していくのである。
国の指導者たちは火薬武器に殺到していったのだ。人一人を育て上げる手間より一つの爆弾を作った方が効果があると考えてしまったのだ。それは仕方のないことかもしれない。一人の魔法師を一人前にするには莫大な金が必要であるが、一つの爆弾は金貨一枚程度で作れてしまうのである。
それからは魔法師、魔法士が少なくなっていく時代に突入していった。
一発で都市が滅ぶほどの爆弾も開発されると一時的に戦争が無くなっていた。人々も戦争のない時代を何十年かを味わったが一人の権力に魅了された人物の登場でそれははかない夢となっのだ。
その者は、人間優位主義の国であった。獣人やエルフ、ドワーフや少数民族たちを迫害していた。この事に抗議した獣人国家に爆弾を投下して都市を壊滅させたのであった。その事が引き金となり、人間対他種族の戦争が勃発したのであった。
この戦争は初めは人間がかなり優勢に戦っていたが、ある人物の登場で戦争が終結するのであった。それは残像であるアレクスであった。世界中が戦争で疲弊していた時に空からアレクスとドラゴンたちが現われたのだ。
アレクスは世界中に停戦を呼びかけたが暴走する国々は止める事をしなかった。アレクスとドラゴンは暴走する狂った指導者たちを殺して回った。
そして戦争は終結するのだが、それからが混乱の時代の突入していったのだ。アレクスの残像は戦争首謀者がいなくなると空へ戻ってしまったのだ。
生きている頃であればアレクスが主導して国の立て直しを行っていたであろう。だが残像にはそれが出来なかったのだ。人ではないために実態が無いのである。遠目には人に見えるが人や物に触れないのである。
そのために人に近づく事をしなかったのだ。
指導者のいなくなった国々はまさに大混乱だった。内戦の始まりである。
アレクスも内戦にまでは出張ってこなかった。世界中が戦争に巻き込まれなければアレクスとドラゴンは出てこないと人々は解釈したのだ。それは人もつ悪である。
人々は神の介入に制限がある事に気づいたのだ。
それから戦争は小さな争いが多くなっていた。そして重要な都市や人物を殺す時は一発の爆弾が使われるようになったのだ。神は争いが長引くと介入してくる。ならば一瞬で終わらせればいいとなってしまったのだ。
そして一発のミサイル爆弾がある国を狙った。狙われた国はその事を感知してミサイル爆弾で報復に出たのだ。報復には数百発のミサイルであった。他の国へもそれが飛び火して僅か1時間の間に数千発の爆弾が世界中にばらまかれたのだ。世界の人口200憶人がその一時間で100万人に減ってしまったのだ。それからも残った国々は戦争を続けていった。
争いが長引けば神の介入がある。またアレクスはドラゴンと共に地上に降りたのだ。
アレクスは地上に降りると国を潰して回った。新たな秩序を求めたのだ。
それは一人の力を持った男に受け継がれていった。
オリオンの子孫であるその男は、カインの直系子孫であった。
真っ赤な髪と瞳の青年であった。レッドドラゴンを従えて子孫のカインは争いが起きると世界中を回った。
だがカイン一人ではどうにもならなかった。カインは強いが国々を纏める事が出来なかったのだ。カインが生きている間は世界から争いが無くなっていった。だがカインが亡くなるとまた世界の指導者たちは暗躍するようになっていったのだ。
それを幾度も重ねていったのであった。
「今日はここまでにするか。」
「管理者、人は愚かなんだな。」
「愚か者は多いな、特に権力を持った者達は権力に魅了されていくからな。」
「力で抑える事しか方法はないのか。」
「どうなのかは誰にもわからない。何しろ人が生まれて100年以上平和だったことが無いのだ。人は争う者なのだろう。」
アレクは話を聞いて思った。話が大きすぎる。一つの町の領主の家系であるアレクには遠い話である。
世界中で平和などありえないと思っているのである。小さな町でも日々喧嘩などがあるのだ。争いがくなる事はないと思っているのであった。
「考える次元が違うな。争いは起きると考えないとな。」
ブツブツと独り言を言っているアレク。
「おーーーーーい、アレクーーーー。」
遠くでカインの声が聞こえてくる。
アレクは声の方に目を向けると遠くからレッドドラゴンが近づいてきていた。
「カイン兄ーーーおかえりーーー。」
「アレク待たせたな、町大分出来ているな。凄いなこんな短時間で道があって驚いたぞ。」
「でしょう。管理者が張り切ってやっていましたからね。ところでルドルフ兄は」
「実は・・その事なんだが・・・・」
「まさか来なかったんですか。」
「・・・・・」




