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562話 商談

アームストロング領都は普通の田舎町であった。領都と言っても人口は僅か1万人である。

それに土地はかなりの広さをとっている為に余計に人口が少なく思えてしまう。


領都内をゆっくりと進んでいると、領主館が見えてきた。かなり大きな建物である。


「へーーあれが領主館かな。」

「カイン兄、余計な事は言わないでくださいね。」

「アレク、俺を信じろ俺が今まで失敗したことがあったか?」

「失敗しか知りませんよ。」

「まぁたまに失敗はあるかもな。」



くだらない話をしているうちに領主館の前に着くと馬車のドアが開けられる。アレクとカインは外へ出ると領主家臣たちだろう、両端に一列に並びお辞儀をしている。

アレクは凄いなと単純に思う。

食文化は遅れているがすべてが遅れている訳ではない事が分かったからである。

家臣たちの教育という面だけでも、このアームストロング領はきちんとできていると思えたからである。


館の中に入ると貴賓室であろう部屋に案内されアレクとカインはそこで30分ほど待たされることになった。



「なぁアレクこのアームストロング領は人が少なそうだな。」

「そうですね、アームストロング領がどの程度の広さか分かりませんが、オリオンよりは少ないでしょうね。」


コンコン


「お待たせいたしましたご案内いたします。」


アレクとカインはメイドに案内され、館のパーティー会場のような大広間に案内される。

そこには領主の家臣たちが両脇に整列している。その奥に1人の男性が座っていた。


アレクはその中央まで進むと奥の男に軽い礼をして話し出す。


「私はオリオン領主代理、アレク・オリオンです。」

「オリオン殿、私はアームストロング領主、アーノルド・アームストロングだ。今回は態々おいでいただき感謝している。」

「いえいえ・・・・・・」


アレクとアームストロングとの会話は、お互いの感謝とこれから仲良くやろうとの話で終わった。

これはアームストロングの家臣たちがいるせいであった。家臣たちの手前威厳を現さなければならず、貴族としての建前を優先したのであった。それかもパーティーなどを開き歓迎を受けていた。


アレクとカインはアームストロング領の商人や有力者たちの挨拶に終始時間をとられていた。

その日は領主館に泊まる事となり二人は部屋に案内されたのであった。


「あ”ーーーじがれだーーー。」

「カイン兄にはつらい時間だったでしょう。」

「あ”ーもう限界だった。もう二度と行かないぞ。」


翌日の午前中は、部屋で静かな時間を過ごすことができた。

午後になると正式に領主からの会談の申し込みがあり、アレク達は承諾した。

アレクには少し堅苦しくないかと思ったが、国によって作法も違うだろうとの思いもあり成り行きにまかせることにしたのだ。




「アレク殿、カイン殿、座ってくれ。」


二人は進められたソファーに座る。


「改めてアームストロング領の領主だ、宜しく頼む。」


昨日の態度とは違う、穏やかなそして少し引いている感じである。


「改めましてアレク・オリオンです。」

「カイン・オリオンです。」


3人しかいない部屋では、昨日のような話は一切出ず。アームストロング領の実情などが赤裸々に語られていた。アレクはアームストロング領主の本音がどこにあるのかが分からなかった。

領地の事をここまで他人に語ってしまっては普通拙いのではと思ったからである。


実際に非情に拙い事である。己の領地の弱点を隣の領地に教えてしまうのである。


話を聞いていくうちにどうしてアームストロングが話をしたのかが分かってきた。


「小麦の実りが悪いのですか。」

「そうだ年々少なくなってきている。アレク殿にはこの理由が分かるか。」

「そうですね、予想は付きますね。」

「真か出来れば理由を教えてもらいたい、いや解決策はあるのだろうか。」

「教えるのは構いませんが、こちらも条件があります。」

「もちろんだ。何でも言ってくれ。」


アレクはアームストロング領とオリオン領都の境界線の確定を提案する。両領地の間には空白地帯があり誰の者でもない場所がある。アレクはこれをオリオン領に組み込もうとしているのだ。

オリオン領はこれから人口増加が見込まれる。山の迷宮から出て初めての外である。ここできちんと決めておかないと後々問題になってくるからである。


アームストロングは少し違っている。領境の確定はそこまでこだわってはいないのだ。人口がまだ少なく土地は余っているからである。空白地帯などオリオン領として認める事は全く問題にならないのであった。それより農地の開発が重要であった。


「それならばアームストロング領境に交易の町を造りましょう。そうすればオリオンの交易品も輸入できるようになりますよ。」

「話には聞いたが、マジックバックも売ってもらえるのか。」

「マジックバックですか、少量ならば可能です。」

「真かマジックバックだぞ。伝説のマジックバックだぞ、いいのか本当にいいのか後でダメとかなしだぞ。」


アレクはアームストロングの気迫に少したじろぐ。これほどまでに興奮する事とは思っていなかったのだ。


アームストロングには考えがあった。このアームストロング領には交易品がないのだ。唯一の交易品として小麦があるがこれは領民たちの食料である。小麦を交易品にすることは領民に飢えて死ねという事である。

そこで考えたのがオリオンから輸入して他の領地に売る事であった。家臣から伝説のマジックバックの事を聞いたアームストロングは例え高額で買っても売れる確信があった。


アレクは容量の少ない物限定する事にした。オリオンの優位性を崩すことはしないのである。馬車2台分この程度であれば商人も手が出せるだろうと踏んでいた。

所がアームストロングが提示した金額にアレクが驚いたのだ。


「マジックバックならば白金貨10枚ならば出せる。」

「えっ。白金貨10枚。」

「足らないか、それならばあと1枚ならばなんとか・・・・・」

「いえいえ、足らないのではありませんよ。白金貨の価値はこの国でどのくらいかが分からないのです。」


アレクは白金貨の価値も分からなかったがそれがかなりの高額である事は予想できた。オリオンではマジックバックは金貨10枚なのだ。

オリオンでは金貨1枚約10万円の価値としている。

これはオリオンでは移動できる倉庫(馬車2台分)としての価値からこの金額となっていた。


ダーイア王国白金貨は金貨100枚の価値と説明されていた。だがダ-イア王国の金貨をアレクが確認すると金の比率の違いがある事が分かったのだ。

この事ですぐには金額設定が出来ない事となり、マジックバックの輸出は了解したが金額は保留となったのだ。他の品目も輸出可能として改めて担当者が協議する事となった。



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