557話 アームストロング騎士団
和気あいあいと、いやかなりうるさい空の旅も終わりに近づいていた。
「アレクぅ、もう到着するのか。」
「えぇもうすぐですよ、後1時間ぐらいですかね。」
「じゃぁ、みんなに伝えとくか。」
「お願いします。」
そんな頃、地上では空飛ぶ船とレッドドラゴンが跳んでいると大騒ぎとなっていた。
アース大陸のほぼ中央から飛び発ったアレク達は大森林を横断し南東方向に飛んでいたその間に幾つかの国や村の上空を通過していたのであった。
それはもう大騒ぎであった。
ある者は祟りじゃぁぁぁと騒ぎ、又ある者は侵略だーーーと騒ぎ、伝説のドラゴンがいることを再認識したのであった。
伝説のドラゴンがいる。今の時代、ドラゴンを倒す兵器は無い。空を飛ぶ魔物を倒すことのできるのは魔法だけである。その魔法も皆使えるのだが上級魔法の使い手が少ないのだ。
簡単な魔法は親から子に伝えているが高度な魔法は伝える者がいなかったのだ。多くの国が滅び高度な魔法の使い手も戦争で亡くなり、伝える者がいなくなっていたのであった。
そんな事とは全く知らないアレク達はやっと元SEオリオンの地に着陸したのであった。
この地に残っていた者達は、最初ドラゴンだーーーー大騒ぎとなったが、流石ルドルフである。ガレオン号を見るとアレク達だと皆に伝え騒ぎは直ぐに収まったのだ。
「ルドルフ兄ぃーー、ただいまー。」
「おーー、アレク凄いの連れてきたなー。」
少し顔の引き攣っているルドルフであった。
「ルドルフ兄、こいつ俺の相棒のレッドだー。」
「あーーーーっルドルフにレオン、マリアにイリアもいるーー、俺俺おれーーーーレッドだよーーー。」
「「「「・・・・」」」」
突然喋りだしたドラゴンにルドルフ達は唖然としてしまった。
ぽかーーーーんと皆大口を開けている。虫が入りそうであった。
「ドラゴンって喋るのか。」
「レオン兄、レッドは特別なドラゴンだよ。」
アレクの言葉にレッドは踊りだす。
特別という言葉が嬉しかったのと、もっと特別を見せようとしたのだ。
華麗な踊りを見せるドラゴン、何も言えなく見つめるだけのルドルフ達であった。
踊り終わったレッドは得意顔である。
「レッド上手かったぞーー、」
「本当カイン、又踊るよーー。えへへへ。」
みんなレッドが踊った事をなかったことにして話を始めるのであった。
「アレク、どうだったというより凄いな本当にカインの遺産があったんだな。」
「えぇありましたよ。これでかなりの戦力強化になりますね。」
「アレク、あの獣人達は移住者希望か。」
「獣人達はカインの遺産を守っていた者達ですよ。あそこは魔物たちの蔓延る地でしたからここに移住させます。まぁいずれはあそこにも町を造れるようにしなければいけませんね。」
「だいぶ先の話だな、この場所でさえまだまだだからな。」
それからは急ピッチで獣人達の家を建築していった。獣人達の今までの家はただの掘っ立て小屋であったが、今建築している家はかなり頑丈な造りとなっていた。
「レンガの家だとーー、こんな豪邸に住んでいいのか。」
「豪邸?普通の3DKだよ。
「葉っぱの家じゃないねーーー。」
「葉っぱ?それ家だったのー。」
「ルドルフ殿、いいんですかこんな立派な家を貰って。」
「ハクさんだったかな、この地の移住者にはみんな家をプレゼントしていますから問題ないですよ、後は狩りの組みと農作業組に分かれて仕事をして貰いますよ。」
「任せてください農作業も狩りもみな得意ですから大丈夫です。」
緊急で建てた家であったがかなりの出来栄えであった。獣人達は500人という大人数の新しい村を造りそこで生活する事となったのだ。川から少し離れ森の近くに出来た村である。川から水路を引いている為に水には困る事もない。狩り主体の村になりそうであった。
少し落ち着いた頃、アレク達の村から見て北西方向から100人程度の一団が近づいてくる。
村を守る兵が大声を上げる。
「止まれーーーー、この地はオリオン家の土地である。」
まだ防壁も何もないこの村は侵入者を阻むものは無いのだ。
村の入口には二人しかいない、相手は100人程である。
「オリオンだと。オリオンの者がいるのか。」
「・・・貴殿たちは」
「おぉーすまぬ、すまぬ、我らはかつてグラムット帝国から・・・・・・・くどくど・・」
永遠と思えるような長ーい説明は二人の兵には全く分からなかった。
「用は何だ。」
「我らはドラゴンを追ってここまで来たのだ。」
「あーーーーーっ、レッド様かーー。」
一人の兵がレッドの事を言ってしまった。
「レッド様、あのドラゴンの名か。」
「そそうだ。レッド様はカイン様の相棒だ。」
「そのカイン様という物がここの領地の領主なのか。」
「いや領主は違うぞ、面会したいのか。」
「ああお願いできるか。」
一人の兵はルドルフのいる町に馬を走らせて行く。
その間に残った兵が1日この場所で待ってもらうように伝えたのであった。
「そんなに離れているのか、この村は栄えているな。」
「そうか、この位普通だろう。」
この兵もこの地の事をあまり理解していなかった。山の迷宮から来た者達はかなり進んだ文化を持っていたのである。
他の地は一度文化が滅んでしまったのだ。そのためにかなり生活水準が違っていたのである。
村の外から見えるだけでもかなりの違いがあった。井戸にはポンプが取り付けてあり畑は整然と並び区画されている。規則正しく植えられている作物は見るもの達には異常に見えていたのであった。
「この村がそんなに不思議か。」
「あぁ不思議だな。こんなに整った村は今まで見た事がない。」
そんなことを話していると、突然大空に船が見えてきた。
「なななな何だあの空飛ぶ船はー。」
「あぁあれはアレク様の船だな、ガレオン号だ。」
もう何度も見ている兵には何の興味もなくなっている。
ガレオン号が着陸するとアレクが飛び降りてきた。
「どうした。何かあったのか。」
兵はアレクに説明する。
「そうか、伝令は出したのだな。」
「はい、先ほど出しました。」
「分かった。」
アレクは代表者に向きを変えた。
「貴殿がこの者達の代表者か。」
「はい、我らはアームストロング領が騎士団です。トーレ・キルセンと申します。」
「そうか、俺はアレク・オリオンだ。今は兄上に伝令が行っている。伝令が戻る迄この場で待機してくれ。」
「はい分かりました。一つ質問をよろしいでしょうか。」
「何だ。」
「あの空飛ぶ船は何なんですか。」
「ガレオン号の事か、オリオンの船だが。」
アレクは何でもないように答えるが内心はしまったと思っている。遺跡から出たと分かれば挙って遺跡あさりをするであろう。争いも起きるであろうと思ってからであった。