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544話 フレシア王国なくなる

マリアとイリアはフレシア王に様々な書類を見せていく。フレシア王国の税収入、人口統計、民の平均所得、など色々だ。

フレシア王はこの書類に何の意味があるのかさえ分からなかった。


「フレシア王、この書類を見て何か思う所はありますか。」

「・・そうだな、我がフレシア王国の民は豊かだ。」

「フレシア王、この他の書類を見てもらえますか。」

「んーどれどれ。」

「これは拙いな、フレシア王国の半分の税収ではないか、国として終わっているな。」

「そうでしょう、国として終わっています。これ今年のフレシア王国の税収です。」

「・・・・・・・・ままさか、そんなことはあるまい。家臣の報告では今年は多少落ち込んだがこれほどの落ち込みとは聞いておらんぞ。宰相を呼べーーー。」


怒り狂うフレシア王であるが、マリア達は冷ややかな目で見ていた。

フレシア王国宰相が子の謁見の間に現れたのは5分後であった。フレシア王は宰相に書類を突き付け説明させたのだ、だが宰相は事実である事、民は疲弊しもう立ち行かなくなっている事等を王に説明していったのだ。


「何故今迄黙っていた。」

「何度もご説明しました。陛下は良い報告しか聞きません。悪い報告は全て書類にてご報告しております。今まで悪い報告をした者達を皆処刑しておりますので、書類報告となっております。」


少し冷めた言い方になっている宰相はもう疲れ切っていた。代々フレシア王国宰相として仕えてきたがこれほど愚かな主君はフレシア王国始まって以来初めてだろうと思う程の暗君であった。


フレシア王国は表面的な所得倍増であった。所得が上がったが輸入品はもっと高騰している。交易しかできないフレシア王国にとって、売る物が国にない事は致命的であった。今まではローエム帝国の親戚という立場があり、税の優遇やローエム帝国産の無税があり何とかやっていたのである。だがこの事件をきっかけにフレシア王国の特権がすべてなくなったのである。


「フレシア王、状況は理解出来まして。」

「・・・・」

「もう国として成り立っておりませんのよ。」

「た建て直して見せる。だから待ってくれ。」

「フレシア王、建て直すのにも資金が必要なのですよ、資金は何処から持ってくるのですか。」

「・・・・・王家の資産を使う。」

「はっ、王家の資産ですか。ハーーー。宰相殿、王家の資産など本当にあるのですか。」

「・・・・ございません。もう10年も前に無くなっております。」

「なななな何ぃぃぃぃーーーー。そんなはずあるかーーーー。宝石や黄金、王城の宝庫にあるではないか。」

「陛下、お忘れですか。もう20年ほど前から陛下は少しづつ売却していたではありませんか。勝手に宝庫の物を取り出す事も売る事は出来ません。ですが陛下は自ら取り出し偽物と交換していたではありませんか。」

「・・・・・・・・・だがあれは膨大だまだ多少は残っていよう。」

「陛下、もう20年も同じ事をしているのです宝庫の中身がなくなったからこそ銀行に金を借り、商人にも金を借り、民から税を搾り取り今の王家が暮らしているのです。」

「・・・・・・ではフレシア王国には金がないのか。」

「あります。大暴落したフレシア金貨がございます。」

「おおお、それならばまだ何とかなるであろう、宰相金貨を集め借金を支払うようにな。」

「陛下、まだ分かりませんか、今のフレシア金貨は大暴落しているのです。信用の無い金貨は取引さえしてもらえません。今ではフレシア国民もローエム金貨に交換するほどです。」

「ででででは、金貨を溶かし金の延べ棒にせよ。それならば価値も戻るだろう。」

「・・・・ハーーー、陛下もう諦めてくださいませ。フレシア金貨の金はメッキですほとんど金を含んでないのです。ローエム帝国という後ろ盾の下にフレシア金貨は成り立っていたのです。」



「もうお話は終わったかしら、」

「マリア様、何とかフレシア王国を助けてくれ、頼む。」

「ええフレシア王国を助けるために各銀行が来ているのですよ。」

「おおーーーーー、流石マリア様とイリア様だーー。ありがとう、ありがとう。」


大喜びのフレシア王であった。フレシア王国を助けるために王はマリアの差し出した書類に喜んでサインをしていた。

それを見ていたフレシア王国宰相は、がっくりと肩を落としていた。

フレシア王はマリアの説明にも右から左へと聞き流し、書類の中身を読まずにサインをしてしまったのだ。それが退位する書類とも知らずにサインしてしまったのである。


「さぁ、これでフレシア王国は救われます。」

「おおーーーー、マリア様、イリア様、ありがとう。これで余も今までと同じようにできるな。」

「「「・・・・・・」」」

「ん、如何した、皆なぜ黙っているのだ。」

「へ陛下、書類の中身を呼んでいないのですか、マリア様の説明をお聞きしていたではありませんか。」

「んーーー、説明など頭に入るわけないだろう、何年余に仕えているのだ、それぐらいわかるだろう。」

「「「・・・・・・」」」


「コホン、私がもう一度説明しますわ。いいですか元フレシア王、先ほどの書類はフレシア王の退位の書類ですのよ。」

「ななにーーーぃ、退位だとそんな事出来るかーーー。」

「さっきの書類は無しだ、無しだーーー。」

「陛下、もう遅うございます。フレシア王国はも・・・」

「よ余はこれからどうなる。余の生活は城は家臣はどうなるのだ。」

「私は最後まで陛下にお仕えいたします。生活が出来るように支えていきます。」


フレシア王国宰相は、王をなだめるために臣下として王の機嫌を取っていた。だが宰相は逃げる気満々であった。泥船、いや沈んだ船に乗り込む者はいないのだ。フレシア王国という船はもう海の底に沈んでしまったのであった。


「マリア様、イリア様、これからのフレシア王国を何とぞお願い申し上げます。」

「宰相、任せなさい。フレシア王国を建て直し、民が活き活きと生活できるようにしましょう。宰相もフレシアにて良い余生が遅れる事を願っています。」

「ありがとうございます。マリア様、イリア様、そして銀行の方々には大変な仕事を押し付けてしまい申し訳ございません。」



深々と頭を下げる宰相は最後の仕事として元王をこの館から出すのであった。フレシア王はローエム帝国内で新しい生活をするのである。

帝都のはずれにある。一軒家である。さすがに元王を放り出すことは出来ないために一生食べる事が出来る程度の事はしていたのだ。


銀行の評判に係る事である為にその辺は慎重であった。


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