54話
都市ブレスト
「俺達、死なないよな。」
「いや、もう死ぬ。」
「もう限界だよ。」
「もう駄目だ、死ぬぅぅ。」
「このくらいで、死ぬ訳ないでしょう。さっさと仕事に戻りなさい。」
それは、マリア、イリアの部下たちであった。
彼らは、瀕死の重傷を負っていた。48時間勤務で休憩12時間、また48時間勤務。オリオン領内に置いて最も過酷な職場である。
少し前は、オリオン領都の開発も、一段落し落ち着いていたが、また領地が増えた。以前以上に忙しくなってしまった。
オリオン家は、人も補充してくれる。給料も高額だ。人は入るが、それ以上に仕事が増えていく。
この部署は、死ぬ以外に退職はできない。魔王に睨まれると、退職の、た、が声にならないのだ。
オリオン新領地。都市ブレストそこは人で溢れていた。
隣国のミルトン王国が戦争により、経済が破綻してしまったのだ。
長く占領されていた地域の奪還に成功したが、その地域の経済が麻痺状態であった。グラムット帝国に国の半分を2年以上占領されていた為、経済活動が出来ず、ただ強制労働をさせられていたからだ。
ミルトン王国は、奪還した領地の復興資金が無く。そのままの状態の為、近くにできた、オリオン新領地に人が、仕事を求め群がって来ているのだ。
マリア、イリアの部下たちは、限界であった。だがなぜか倒れる者はいない。眠れない魔法、活性化の魔法によって。健康体を維持してしまっているのだ。
部下たちは、余計に精神が病んでいく気になる。
マリア、イリアはその精神さえも、勤務終了時に疲れた記憶を消しているのだ。
魔王の所業は、それでいいのだろうか。だが誰も言えない。
その甲斐もあり。都市ブレストは、南部一の都市になっている。
「お願いします。家族5人もいるんです。仕事をください。」
「住む場所と仕事があれば。」「なんでもしますから、仕事を。」
「子供でも、はたらけますか。」「仕事、仕事をください」
毎日、毎日、都市ブレストに大森林の中から、ミルトン王国から、中にはグラムット帝国からも来ている。グラムット帝国からは亡命扱いなので余計に仕事が増えている。
マリア、イリアは人命優先を掲げ、仕事を無理やり作り、人々が暮らせるようにしているのだ。
そんな場所でも、疲れた顔をしてない者もいる。
豪華な部屋に、来客の相手をしている。
家臣たちも、いざ、その部屋に入る時は、顔がキリッとなり、疲れが一切見えなくなる。
話をしているのは、ルドルフ夫妻とミルトン王国リンガー宰相である。
「どうか、ミルトン王国に援助をお願いいたします。」
「無条件とはいきませんが、援助は出来るようにしましょう。」
「感謝いたします。今、ミルトン王国は危機に瀕しております。」
「こちらの内容になります、ご確認を。」
「こ、これは、・・・」
ルドルフは、ミルトン王国に対し、食料の援助、農地開発、を約束する。その中で数か所援助の除外箇所があるのだ。
「オリオン家の調査によると、ミルトン王国内のその貴族領は少し問題が有るようです。」
リンガーは言葉も出ない。ミルトン王国でも頭を抱えたい程の、問題を起こしているのだ。
「援助の、采配をミルトン王国で行うわけにはいきませんか。」
「正直に言いましょう。今のミルトン王国に、その貴族たちを抑えられないでしょう。」
「その貴族を排除するなら、采配をお任せしましょう。」
ミルトン王国の問題のある貴族とは、グラムット帝国との戦争に参加せず。グラムット帝国との内通を疑われている者たちである。確実な証拠は無い為、ミルトン王国は処分できないでいたのだ。
現在も、困窮しているミルトン王国民に援助も何もしていない。貴族としては、正しいのかもしれない。オリオン家としては、援助する側は、それではダメなのである。
リンガーは、オリオン家に采配を任せた。一国としてはありえないことである。
「さすがルドルフ、カッコいい。」
「いやぁ、クリスもフォローありがとう。」「いつもいいタイミングで言ってくれてる。」
「ルドルフ・・・」
「クリス・・」
このバカップル、いつもこのようだ。
その頃アレクは
「この温泉いいね。」「このロケーションも最高だよ。」
「そうですね、湖が見えて、癒されますね。」
「頑張って、働いたからね。」「ご褒美、ご褒美。」
アレクはリック、マックと山間の湖にある、温泉でくつろいでいたのだ。
アレクも、仕事をやらなかったわけではない。少し長い息抜きなのだ。
「でも、師匠、材料の調達って言って出てきてますが。もう戻らないとまずいでしょう。」
「まだ、大丈夫だよ。」
「マリア姉とイリア姉の性格はわかってるから、あと一日は大丈夫だよ。」
アレクの予想は通りになったが、なぜか仕事量が休み後増えていった。
アレクは休みを満喫して城塞都市建設、いや城の建設に集中していた。
「やっぱり城には、塔が必要だよ。塔が無い城はかっこよくない。」
これはアレクの独り言だ。
アレクは、一人で黙々と城を造っているのだ。
アレクの担当は、城壁と城の作成であった。城壁も一定間隔に塔を建てた。
城をより、見栄え良く。かっこよくと考え中である。
城造り、以外の城塞都市造りは順調である。
城塞の門から大通りをつくり、区画割を行った。将来的なことを考え、ミルトン王国とグラムット帝国との街道があり、両国と交易が出来るようになれば、間違いなく栄える場所である。
それを見越し、城塞都市を大きく造っているのだ。
都市には魔道具をふんだんに使い、今の都市とは違う、高さのある建物を多く造っているようだ。
城塞都市のコンセプトは、夜でも明るくである。
城壁にも、魔道具のライトを付け、大通りにも街灯を取り付ける。
この都市には、各家に照明器具の設置をするようだ。
城塞都市の建設には、元強制労働者、ミルトン王国民が多く働いている。
希望者は、領民になれると話が出回り、ひと騒動あったが、本当の事とわかりより一層工事が進んだ。
農地も、城塞都市郊外にて開発している。
農地は、高額で売れる、サトウキビを中心に、麦、トウモロコシ、芋を作り、お酒を造る予定の様だ。
この城塞都市は、まだまだ完成には時間がかかりそうだ。
うん~~~、どうしようかな。ん~~~ん。