538話 アレク対オソロキア王
「おーーぉ、いいぞいいぞ、凄いぞ。ワシにここまで対抗できる人間などおらんぞー、凄いぞー。」
「凄いしか言えんのか。お前は。」
「いやー真剣に凄いぞ、どうだワシの配下にならんか。」
「なるわけないだろうが。」
「フン、ならば仕方がないな、これで死ね。」
ドバーーーン
オソロキア王から放たれた一撃はそれまでの攻撃の数倍もの威力であった。この一撃でアレクの右腕が吹き飛んでしまったのだ。
「ぐおおおおーーーっ。」
「どうだなぶり殺しにあう気分はアハハハハ。」
「殺すつもりで放ったが片腕だけだったな、残念だったな。」
「くっ。あーそうだがもうお前に勝ち目はないぞ。大夫戦闘力が落ちてきていよう。」
「バカがこれで勝てると思っているのか。ソロソロ時間だな。」
「時間?」
「そうだお前を殺す準備が整ったんだよ。そのためにこんな戦闘をしていたんだ。」
「ワシを殺すだと、そんなことできる訳ないだろう。ワシは不死身であり永遠の25歳だー。」
「お前も冗談言えるのだな。見直したぞジジイ。」
「ジジイではない、見た目はジジイだが心は25歳じゃーーーぁ。」
王の怒りの攻撃はむなしくアレクの横をすり抜けていった。
「どうした当たらないぞ。」
王は怒りに任せ何度もアレクに攻撃を仕掛けるが段々と当たらなくなっていった。
「オラオラ、どうしたおじいさーん。」
「ええーーーいうるさい、どりゃーー。」
どばーーん、どこーーん。
華麗に避けるアレク、むきになって攻撃するオソロキア王、先ほどまでの一方的な攻撃も今は様子が変わってきていた。
「何故じゃ、何故じゃ、何故じゃーーー。」
「分からんか、王よ、お前は迷宮その物なんだよ。いくら迷宮といってもな、魔力が無ければただの建物なんだよ。」
「何を言う、この程度の人数での攻撃では我が城はびくともしないのじゃーー。」
「バカだな、この迷宮を攻略部隊だけだと本当に思っているのか。」
「なんだと、」
「お前は迷宮を理解していないな。迷宮は何だと思っているのだ。」
「そんなこと知っているぞ、迷宮とは永遠の命の源じゃ。」
(あーーこいつ駄目だ、永遠の命の事しか頭にない。迷宮を理解していない。)
「お前まだ気づかないのか、自分の体の傷が治っていないだろう。」
「何故、何故じゃ。」
「教えてやる、この迷宮は今魔力不足になっているんだよ。それもかなりの負担になっている。私との戦闘、迷宮内での戦闘、魔物を生み出し続けているからな。それもかなり強力な魔物ばかりだ。魔力が枯渇しても仕方あるまい。」
「フン、その程度ではどーって事は無いぞ。問題ない。」
オソロキア王は少し安心した顔になっていた。魔力不足程度は許容範囲であったのだ。アレク達率いる世界最高の部隊が迷宮攻略に来ているのだ魔力が足らなくなることは織り込み済みであった。
「これでどうじゃぁーーーーー。」
オソロキア王が気合を入れ、体から四方八方に何かが放たれた。
オソロキア王から放たれた光の粒はボロボロになっていた迷宮が修復されていた。
「又無駄な事をするな。それならば魔物を作った方がいいぞ。」
「そんなもの今やっている、見ていろワシの力を。」
又放たれる光の粒はコロシアムの観客席に魔物の集団が現れた。流石アレク隊の者達である、すかさず動き魔物たちを始末していく。だがそれ以上に生み出される魔物、観客席は戦場となっていた。
「王よ、全く分かっていないな。今の迷宮の状態を分かっていない。」
そうオソロキア王は今の迷宮の自体を理解していなかった。アレク達攻略部隊は魔物を殺しながら迷宮内を暴れ回っている。それがすべてだと王は思っているのである。そのために王はアレク達に魔物を生み出し殺すように指示を出しているのである。
だが迷宮事態はかなりの負担を負っていた。体が病魔に蝕まれるように、知らぬままに侵食されいた。
まるで癌細胞の様に最初は痛みもなく、何も自分には分からない自覚がないからである。だがある一定の時期を過ぎると激しい痛みと共に機能不全となるのだ。
「王よ、最初の動きと今の己の動きの違いも分からないのか。」
「ん、なんだと。・・・・」
そこで初めて王は己の体を見てみる。そしてハッとする。
力がなくなっているのだ。アレクに対して最初に放った一撃、腕を吹き飛ばした一撃ではまるで威力が違う事に気づいたのだ。最初に入れた一撃の半分も威力がなくなっているのであった。
「ききききさまーー、ワザとダメージを負ったようにしていたのか。」
「あーそうだ、やられる振りも大変だったぞ。あまりやられることが無いからな。名演技だっただろう。」
「くっ・・・。」
「やっと気づいた王に教えてやる。今この迷宮は他の迷宮の支配下にはいった。」
「何だと。」
「王よ、攻撃してみろ。避けないから一撃で仕留めるつもりでやってみろ。」
「アレクよそんなこと言ってもいいのか、いくら攻撃力が落ちていてもワシの一撃はお前を殺す力は残っているぞ。」
「いいからやってみろ、オリオン王国にかけてこの一発は避けない。」
「フン、後悔するなよ、後悔も出来んだろうがなこの一撃で死ぬからな。では参る。」
ドコーーーン。
直撃したアレクは全くの無傷であった。よろける事もなく、ただ子供が大人を叩いたような程度であった。
「なななな何故じゃーーー。ワシの快心の一撃が・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・う、嘘じゃ。」
「王よ、迷宮は万能ではない。ただの工場であり、考える力を補助するただの物だ。」
アレクはこの城型迷宮に他の迷宮から一斉に侵食するように指示を出していた。1対49の迷宮の戦いで一つの迷宮が敵う訳はないのだ。況しては迷宮内に敵がわんさかといる状態である。対応は迷宮内が優先となっていた。そして知らぬ間に迷宮は侵食され気付いた時には身動き自体出来ない状態となっていたのであった。
アレクは指パッチンを一つ鳴らした。
「オソロキア王、もう己の体を動かす事も出来ないだろう。」
「うっ・・・・どうして。」
「それが支配されるという事だ。もう自分の意志では動く事も出来ない。」
「ぐっ・・・・・」
「さて、やっと終わったな、アレク隊、カイン達獣人達に伝令だ。終わったと伝えろ。」
「「「「「「はっ。」」」」」」