530話 将軍の最後
オリオン軍とオソロキア軍との激しい戦闘もオリオン軍が優勢に進めていた。アレクが後方からの戦闘により戦況が改善したからであった。
「よーし、このまま敵陣を突破するぞ。」
「「「「おーーー」」」」
アレク達は確実に一人一人の首を斬り落としていった。
敵本陣を目指し、突破したアレクは少し開けている場所に出るとそこにはまた違った集団が待ち構えていた。
「ほーーっ、流石オリオン一の能力の持ち主だな。」
「やー将軍、殺しに来たよ。」
「まだワシまではこの最強部隊がいるぞ。やれ。」
オレス将軍の命令が発せられると、周りにいた騎士たちが一斉に動き出す。
アレクのみに向かっていく。
この騎士たち剣の腕も一流であるが魔法の腕も一流である。
獣人達の得意な身体強化で体を強化している。普通の剣ではかすり傷一つける事が出来ないのである。
スッ。
「おっ、流石精鋭だな。剣では切れないか。だがこれならどうだ。」
アレクは剣に魔法をかけ魔剣として騎士に斬りかかる。
スパッ。
「なっ斬れるだろう。」
この一振りで騎士たちは躊躇してしまった。
今迄、負けた事がなかったのであろう。剣でも斬れない身体を手に入れ、強力な攻撃魔法を持つオソロキア軍エリート騎士たちには信じる事が出来なかったようだ。
「う嘘だ、我らはさ最強だ。」
「違うな上には上がいるんだよ。」
それからは一方的な殺戮であった。
「将軍、終わったぞ。次はもうないのか。」
「フン、さすがにやるな。わしでも勝てないだろうな。だがここでひくわけにはいかんのでな。少々付き合ってもらうぞ。」
アレクと将軍の一騎打ちは壮絶であった。魔法、剣の腕はアレクの方が勝っていたが、この将軍の気迫が互角にまで押し上げていた。
アレクは戦いながら何故ここまでやるのか、オソロキア大王国の内情に興味を持ったのだ。
愛国心、洗脳、国民性、どれも当てはまり、どれも間違いのようであった。
「何故そこまで、やるのだ。軍人だからか。」
「そんなもの関係ないな。強い者とやり合う、これだけだ。」
あーーーー、こいつかカインと同じなのだ。
「そろそろ終わらせるぞ。」
アレクはあえて首を狙わなかった。
一つの剣で同時に両腕を斬り落としたのだ。 スパー。
カラン、どすっ
「うおおおおおーー。」
仁王立ちしている、叫ぶ将軍にアレクが近づいていく。
「将軍お前はもうすぐ死ぬ、何か遺言はあるか。」
「ワシは一つも勝てなかったな。剣も魔法も戦略もだ。悔いはない強い相手に倒される。騎士として本望だ。」
スパッ。
アレクは無言で将軍の首を斬り落とした。
それまでじっと静観していたオソロキアの兵たちは突然狂ったように暴れ出したのだ。
「「「「「「「うううおおおおおおおおお」」」」」」」」」
突然の事でアレク達は一歩出遅れてしまった。
その一歩で数十人の命がとられてしまった。
それからのオソロキア兵たちは狂っていた。今まで無表情であった顔が怒りの表情へと変わり、鬼となっていた。
オレス軍最後の仕掛けであった。オレス大将軍が死亡すると兵たちの枷が外れるようになっていたのである。枷が外れると鬼化するのであった。
鬼となった兵たちは普段の3倍もの力があり体も二回りも大きくなっていた。それがまだ8万もの兵が生き残っていた事でアレク達は押され始めていた。
何も考えないで突っ込んでくる兵たち、がむしゃらに剣を振り回す兵たちであった。
「接近するな距離をとれー。周りを囲めー」
それから10時間アレク達は戦闘をしていた。
「あーーーー、終わったーーーー。」
「カイン兄、負傷兵の治療が優先ですよ。」
「分かっているがさすがに疲れたなーー。」
「えー今回の敵はかなりやりましたね。」
この戦いで獣人部隊、アレク隊、空兵隊で全員が負傷していた。無傷の者は誰一人いなかったのだ。戦死した者も3000人にも及んでいた。アレクとカインが参戦してこれほどまでの被害は初めて出会った。
「被害が大きいな。これではすぐには進軍できないな。」
「ええ、ここで治療してからですね。」
「でもこいつらでおわりだろう。ここまでの兵を集めれないだろうな。」
「カイン兄、多分ですがまだいますよ。」
「マジか、俺に今度は将軍を譲れよ。」
アレクはそこかっと思ってしまった。
「カイン兄ぃ、次は頼みますよ。」
「おーー任せとけって。」
後方から艦隊を呼び兵の治療と休憩をとり、軍の再編を行っていた。
二日後オリオン軍は進軍を開始してのである。
その行動をじっと見守る一団がいた。
「敵、進軍開始、城に伝えろ。」
「はっ。」
「また無人の町だな。」
「そうですね。」
アレク達はいくつかの無人の町や村を通過していた。
人が住んでいた形跡はある。ついこの間まで生活をしていたんであろう形跡がある。オリオン軍が迫っている為に町や村人が避難したことが分かる。
今迄の国では民の避難など一度もなかった。民は王や貴族の物であるという意識が多くの国のじょう指揮であった。
「今日はこの町で野営する。家の中を調べろ。」
「はっ。」
兵たち
「生活用品がそのままですね。」
「おい盗むなよ。死刑になるぞ。」
「盗みませんよ。こんなもの持って戦闘なんかできませんよ。」
「まぁそうだよな。」
「でも本当に誰もいないんですね。」
「あぁ、いくら避難すると言っても病気、歩けない者や浮浪者や浮浪児は残っているんだがな。」
「ですよね、一人もいないなんて普通じゃないですよね。まるでオリオン王国みたいですよね民を大事にしているんでしょうね。」
「・・・・・・・・」
オソロキア大王国はかなり矛盾している国である。幼い子供に洗脳教育をするような国であるが、民を大事にしている。無暗に戦闘に巻き込まれないようにしているのである。
その夜
ドバーーーーーン。
街中で大爆発が起こった。
「敵襲か?」
「報告します。街が爆発しました。」
「・・・・やられた。」
アレクの油断であった。いくつかの無人の町や村を通過したために町の調査がおろそかになっていたのである。街に仕掛けられた爆弾を見逃してしまったのであった。
「被害を調べろ。」
「はっ。」
オリオン軍に被害はおよそ1万にも及んだ。
「アレク拙いぞ、このままでは負けるぞ。」
「そうですね、このまま地上は進めませんね。」
「艦隊で移動するか。」
「その前にカイン兄と二人で出かけませんか。」
アレクとカインは1隻の大型戦艦に乗り込み飛び立った。




