525話 ローエム帝国激震
迷宮内
「アレク様、ローエム帝国が大敗しました。」
「何ローエムが大敗、オソロキアにか。」
「はい、ローエム帝国軍10万とオソロキア軍12万が直接激突しました。その結果ローエム帝国軍8万が壊滅したようです。」
「オソロキアの被害は。」
「ほぼなしとの事です。」
「・・・・よほど実力のある者か用兵家がいるな。」
「今調査しておりますがまだ報告は上がってきておりません。」
「そうか報告が来たら知らせてくれ。」
アレクは考えるローエム帝国は決して弱くはない。アース大陸内でもオリオンを除けば最強だろう。それをほぼ無傷で壊滅させているのだ。オリオンであっても被害が出てくだろう。
その後の調査で戦闘の詳細が明らかになっていった。
ローエム帝国軍はオソロキア大王国に進軍しようと結集した所を攻められた。
まだ体制が整っていない事もあり対応が遅れたのである。それでも8万もの被害は多すぎる。
詳細を確認していくと強襲された後のローエムの行動にも問題があった。
ローエム帝国軍は強襲されたときに鎧も着けておらず、武器も手にしていなかったのだ。
これは飛行艦で人員と武器を別に運んでいたからであった。
通常こんなことはありえない、戦場に行くために集められた兵に丸裸で行かせるようなものである。だがローエム帝国はそれを行ったのだ。
何故そのような事が起きたのか、それはある政策が関係していた。貴族軍を使わない、貴族達の力を削るための政策であった。地法貴族はある程度の武力を持っている。治安維持のため、帝国軍の部下組織としての軍役である。広い帝国では貴族軍に頼る事が多い、特に地方へ行けば行くほど貴族軍への依存度は高まっていく。
これを何とかしようと皇帝は貴族軍の半数を帝国直轄にしたのである。
そのために元貴族軍兵を輸送してオソロキアへと運んだ。そして帝都から帝国の鎧と武器を運んだために、武器も持っていない兵がいたのであった。
何ともお粗末な話しである。これがもし意図的に行われたのならば、ローエム帝国内にオソロキア大王国の息のかかった者がいることになるのだ。
アレクは偶然か意図的かの判断が付かなかった。
それはローエム帝国の政策はローエム帝国の内政官が立案し皇帝の承認の元施行された正式な物であったが、貴族兵と武器の移動はローエム帝国に潜む諜報員がオソロキア大王国へ報告してバレていたのである。
その情報の元オソロキア軍は強襲を仕掛けたのであった。
その後の両国の戦いは泥沼化の様相となっていた。小出しに兵を出すローエム帝国、それを撃退するオソロキア大王国である。アレクはローエム帝国が何故兵を小出しにするのかが理解できなかった、ローエム帝国の皇帝はマリウスである。マリウスがそのような愚策をするとは思えなかったのだ。
それを考えるとローエム帝国に何かが起こっていると考えに至った。
「アーサー、すぐにローエム帝国を調べろ。」
「えっ、ローエム帝国ですか、オソロキア大王国では無いのですか。」
「ローエム帝国だ何かが起こっている。」
ローエム帝国
「陛下に面会を求める。」
「陛下はお忙しい予定が詰まっているのだ、3月は会えぬな。」
「ほーーっ、我ら貴族は陛下にこのところ誰もお会いしていない。」
「そうであったか、陛下はお忙しいからな、一家臣に会う事もままならないのだよ。」
「そうかならば3か月後で予約をお願いする。良いな。」
「了解した。3月後の夕刻に予定を入れよう。」
「はー。」
皇妃
「皇妃様、いかがいたしましょう。」
「まずは信用の出来る帝国貴族はいますか。」
「申し訳ございません、分かりません。」
「でしょうね、ローエム帝国は大きくなり過ぎました。マリウス皇帝のお力で押されているのです。中は反発している者も多いでしょう。」
「はい特に従属させた貴族や、国、それにオリオンを敵視している者が多く居ります。」
「オリオン王国は関係ないのですがね、困った人たちですね。」
「皇妃様オリオン王国は元は帝国貴族です。それも騎士爵という帝国でも貴族と言えないほどの貧乏貴族でしたから面白く思っていない者も多いのです。」
ある貴族
「どうであった。」
「フンやはり会えなかった。」
「そうなるとやはり怪我か病気であろうな。」
「会えぬほどの怪我か病気か、死んでいるという事は無いか。」
「それは無いだろう、死んでいれば世継ぎがいる、世継ぎに継がせ体制固めを行うだろう。」
「だが何故黙っているのだな。世継ぎもいる、死んでいない。。」
「そうなのだローエム帝国は盤石だ。隠す必要な無いのだ。」
この貴族達の認識とローエム帝国の皇室の認識は全く違っていた。貴族達はローエム帝国は盤石と考えている。これは仕方のない事である。巨大なローエム帝国が揺れるなどとは思っていないのである。それは皇帝マリウスが善政を敷いていたせいだ。元のローエム王国貴族達は長い間戦争に行くこともなく平和をむさぼっていた。平和ボケした頭で吸収(併合)した国、貴族や民、属国していく貴族達の悪感情など解かるわけも無いのである。
「もし皇帝が亡くなれば皇太子にするかそれとも第二皇子で博打をするか考えるかだな。」
「皇太子はかなり優秀だ、第二皇子も中々と聞く。第二皇子が優秀であればあるほど本人が狙うであろう。決めるのはそれからでも遅くは無いだろう。」
「そうだな、ゆっくりと見極めなければな。」
「「ハハハハハ」」
アレク
「アレク様、ローエム帝国で皇帝の姿がみえないという噂があります、実際に皇帝と面会した者がおりません。」
「そうか、ミルに探りを入れさせる訳にもいかないな。ローエム帝国が隠しているのであればマルティナ(皇妃)が何かを隠さなければいけない状況という事だろう。」
「さようです、ローエム帝国皇妃様はアレク様と義理の妹です。何かあれば王妃様を頼ってくるはずです。」
「待つしかないか。手遅れにならなければいいがな。」
ローエム帝国城内
「あなた、目を覚ましてください。私はどうすればいいの。」
ローエム帝国皇帝は眠ったままである。一月も目を覚ましていないのである。皇帝医師たちも色々と治療を行っているが目を覚まさないのだ。
原因も分からずに一月も経ってしまっているのであった。