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520話 暴動

祭りという言葉は、シーラ王国には存在していなかった。

所がここ最近どこにいっても祭り、祭り、祭りである。

シーラ王国内で祭りが開催されていない場所は王都のみであった。


シーラ王国王都


諜報員・民たち(酒場)


「おい、何故王都でマツリィがやらないんだ。」

「何だ知らないのか、祭りを開催しているのはトリスタン自治領軍だからだよ。シーラの民の困窮に食料援助から始まったんだよ。」

「なっそうなのか。」

「あぁ、だからシーラ王都では祭りは開かれないんだ。」

「ちくしょう、王都でもやらないかな、商人がものすごく自慢していたんだ。物も王都の半額だっていうじゃなか。」

「無理みたいだな、王都は王族や貴族が税を高くしているので物価がものすごく高いんだよ。」

「王様が祭りをやればいいんじゃないか。」

「「「「おおおーーーー」」」」

「おー、お前頭いいな、そうだよな、王様が祭りをやればいいんだよ。」



シーラ王都内で祭りを開催する要望が高まってきていた。



シーラ王国王城内



「宰相閣下、王都の馬鹿な民たちが祭りの開催を要望しています。」

「フン、そんな無駄なことできるか、それでなくとも物資が不足しているんだ。」

「さようでございます。王都の民を少し懲らしめますか。」

「そうよな、二、三人殺せば大人しくなるだろう。」



これが悲劇の始まりであった。



シーラ王国王都の下級役人は宰相の指示によって王都民の顔役を見せしめの為に民たちの前で殺したのだ。

内々で殺していたならば言い訳もできたのかもしれないが、民衆の前で祭りの開催を願う事を理由に殺されたのだ、王都の民からしてみれば王都以外では、祭りが開かれ飲み食いがただになっている。同じシーラ王国内でそんな差別は許せないのである。特に王都の民たちはシーラ王国一豊かであるとの自負があるからだ。

豊かな王都でも日々の食料が不足気味になり物資に高騰が止まらないのである。

たった一日の祭りを開催していれば、王都の民の暴動は起きなかったかもしれない。



「いやーーーーーー、お父さーーーーん。」


王都の顔役の娘であろう者が叫んでいる。

ただ祭りに開催を願いいれただけである。


「いやーーーーー。」


民衆の目の前で殺された父を見た娘が叫び、それを煩く思った下級役人がその娘を斬ったのであった。



「「「「「「「うううおおおおおおおおお」」」」」」」」」



日ごろからの鬱憤、不満が爆発した瞬間であった。


王都の民は怒り、暴動へと変わっていった。


目指すは王城である。王都の民はまずは下級役人たちを囲み殴り殺したのだ。その勢いに任せ王城へと向かったのである。

王城へと向かう民衆は王都中から集まって来た。王都の人口は30万とも40万ともいわれている。

大した武器を持たない民衆であるが、勢いがあった。

王城へと向かう人の群れに王城に兵士たちはビビってしまった。それに兵士たちは皆平民である。王都の民衆の味方であった。



兵士



「俺たちも民衆に味方するぞ。」

「ぶ武器庫から武器もってくる。」



次々と兵たちは民衆の味方になっていく、自分が死なないために味方になる者、純粋に味方になる者と色々であるが王城は民衆に囲まれていった。




城内



「何事だーーー。」

「宰相閣下、大変です馬鹿な民の暴動が起きました。」

「なにーー、早く処罰をしてしまえ。」

「そ、それがーー、」


この報告に来た兵士、元は貴族である。今は平民となり衛兵をしているのだ。

この兵士は迷っていた。このまま宰相に付くか民衆に付くか宰相に付けば貴族として取り立てて貰えるかもしれない、だが万一にも死ぬ確率があるのだ。王都中の民が今城を囲んでるのである。


「ええええーい、早く処分をしてしまえ。」

「はい。」


衛兵は短剣を向き宰相を刺していた。


「おお前、何をすする・・」


「あなたがこの暴動の根源だ。」


周りには他の兵士たちがいた。だが誰一人この兵士を捕まえようとはしなかった。



「俺たちも民衆に味方するぞ。」

「おーー、そうだな。」

「で、どうする。」

「城の門を開けよう。」



城内の平民兵士たちは何も考えずに城の門を開け民衆を城内にいれてしまったのだ。


これは拙かった。勢いに任せた民衆がシーラ王国の象徴である絢爛豪華な城内に入ってしまったのだ。

見る物すべてが、民にとって一生拝む事の無い物である。民衆同士が奪い合い殴り合い、殺しあっている。

相手かまわずに民衆たちは暴れまわり殺し合いが繰り返されていった。

自分以外が皆敵となってしまったのである。


これは暴発的に起きた暴動の為に指導者がいないことが原因である。

そのために暴動を止める者が誰一人いなかったのである。

もし王都の顔役である者達が殺されずにいたならば暴動も少しは収まっていたかもしれない、だが顔役が殺されて起きた暴動の為にどうにもならないのだ。



丸一日たつと王都内も落ち着いてきた。いや、暴れ疲れただけであった。


王都の民たちは自分たちが暴れた壊したものを見て愕然としてしまった。


あの綺麗な町が瓦礫の山になっているのである。家は壊され、物は盗まれ、人が至るところで死んでいるのだ。

まさに地獄であった。


二日後


王都の民たちにもやっと現実が見えてきた。各地で食べ物を巡り争いが起こっている。



三日目


奪い合う食料が無くなっていた。


四日目


食べ物が無くなり皆うずくまっている。


五日目


男たちが食料を求め王都を出ていく。


六日目


獣人部隊が王都へ到着する。



「何だこれーー、王都が無くなっているぞ。」

「親分、王都で暴動が起きたみたいです。」

「暴動、何で王都で暴動なんて起きるんだよ。」

「それが祭りの影響みたいです。」


カインは報告を聞いてあきれてしまった。祭りの開催を願い入れて民衆の前で殺され、そして暴動へと発展してしまったのだと、報告を聞き馬鹿かと毒ついている。


「民衆に食料をやるぞ、準備しろ。」


戦う気満々のカイン達は、また賄いかとがっくりと肩を落としている。


一方民衆は歓喜に沸いていた。


「「「「「「「うううおおおおおおおおお」」」」」」」」」


群がる民衆を獣人達は手際よく整理していった。ここまで食料援助をしている為に手慣れたものである。


「大丈夫一杯あるから、おかわりもあるから、並んでーー。」

「心配するなみんなの分あるからなーー。」

「ほら食べな。」

「もう大丈夫、大丈夫だよーー。」



それから二日も経つと民衆も落ち着いてきていた。

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