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512話 レインの悩み

シーマ王国(仮)城


そこには新しい官僚たちがシーマ立て直しの為に忙しく働いていた。


「法改正はどうなっている。」

「はい、オリオン王国の法をそのまま採用するようになっております。ですがこれは一時的となります。」

「あーっ、あれだなオリオン王国の種族平等を広げるやつだな。」

「はい、魔物にまで広げるなんてトリスタンは頭がおかしくなっているんですかね。」

「おい、ばか誰が聞いているか分からんのだぞ、言葉には気を付けろ。」

「はっ、申し訳ございません。」



いまレインはオリオンでの種族平等の解釈を広げ、魔物(魔石を持つ物)も人と共存できる者達は平等に扱う事が出来るようにしていく予定なのである。

だがこれがかなり難しい、ゴブリン種でも人に従う者と敵対する者が要る為にゴブリン種すべてを対象にすることができないのだ。他の種族も同じであるために、官僚たちは頭を悩ませていた。




レインはパニック寸前であった。仕事が多い。


(如何しよう、これじゃ終わらない。こんなはずじゃなかったのに。トリスタンだけなら何とかなったのにこんなに広い国なんて要らないよ。人口3千万人ってなにこれ把握している数でしょう実際はもっと多いよね。戸籍なんてないし、適当なんでしょう。

だけど魔物たちも数に入れるとこの数倍になるんだよね。如何しよう。

困った困った困ったーーー。)


「レイン様、レイン様。」

「え、あうん、如何した。」

「いえ、何処か遠くに行っているようでしたのでお声を掛けさせていただきました。」

「アハハ、そうだね遠くへいっていたかもね。ハハハ。」


そしてまた頭の中に入っていくレイン。


(食料はオリオンから輸入できるから大丈夫、今は敵もウルたちがいるから大丈夫、問題は難民たちだ、シーラだけならば問題は無いけど、他の国からも来ているからなー、これを如何したらいいんだ。農地は不足しているから開発して割振る、それでも足りなければ他の仕事につかせないと、あっルガー王国とミント王国に行ってもらおうかな。あそこなら人であれば何とかなるかも。)


レインは早速、ルガー王国とミント王国に連絡をした。


ルガーもミントも受け入れを承諾してもらった。だが一度には受け入れが出来ない。段階的に受け入れとなる為にしばらくはこのシーマに難民としている事になるのだ。

それでも500万人の人を受け入れて貰ったのである。シーマ王国で500万人も人口が減ってしまっては国としてやっていけなくなる恐れもあったのだが、それは杞憂であった。500万人の人々は平民以下の者達が多くシーマ王国自体国民としてカウントしていなかった者達であった。

それを聞いたレインは、大きなため息を吐いていた。


「ハーーーー。」


(何これじゃぁ、人口もっと多いじゃん。如何すんのさーーー。これオスカー兄ちゃんとかみんなやってるのかなーー、俺だけだろうなこんなボロボロな国ここだけだろうなーー。)



レインの考えは半分正解であり半分不正解であった。今のシーマ王国のようなボロボロな国はフロンティア大陸ではまだ多く残っている。そしてルガー王国ミルトン王国などは安定している。内政が安定しているのである。国民達の生活も今のシーマより数段良い生活をしている。



それでもレインは、難民と化してしまった人々を何とかしようとしている。

レインはまだ気づいていなかった。何故トリスタンに難民が押し寄せているのか。そしてシーマ王国にまで広がりを見せているのかを全く考えていなかった。

それは税が安くしたからである。

他の国々より安い税である為にトリスタンを中心に人が集まってきているのである。どうせ逃げるのならば暮らしやすく受け入れてもらえる場所を選ぶのは自然な事である。


レインは赤字となってしまっているトリスタンとシーマを何とか立て直さなければならない。金は親兄弟からの支援で何とかなっている。


「ダァーーーーー、駄目だーー、もうヤダ無理ーーぃ。」



「おーーーーい、レーイーン。」


レインは発狂していだがすぐに現実に戻される。「んっ。誰だ。」


「俺だよ俺ーー、ジャックだよ。」

「あーーーーっ、ジャック兄ちゃん、久しぶりーーぃ。」

「お前、今大変だと聞いたから応援にきたぞ。」


ジャックはアレクの姉である。マリアの子供である。



「そうなの助かった。物凄く困っているんだ。おじいちゃんも助けてくれるけど開発だけなんだよー、法律とか事務系のものは一切やってくれないんだ。」

「それは仕方ないだろう。おじいさまは頭より体を動かす方が得意だからな。」


ジャックの能力はもの凄かった。さすがマリアの子供である。滞っていた書類が無くなっていく。


「凄い。」



数日後、ジャックとレインは優雅にお茶を飲んでいた。



「なぁレイン、このシーマ王国はこのままでは立ち直れないぞ。」

「えっ、そうなの。」

「ああ、ここまで借金漬けな国初めて見たぞ。」

「借金??」

「そうだ借金だ。シーマ王国の国家予算の100倍ある。」

「誰から借りているの。」

「半分は民だな。もう半分は貴族からだ。」


シーマ王国の税は8公2民となっているが実際は10公であった。これでは民が逃げ出すのは間違いがなかった。働いても全て持っていかれるのである。

2民は民たちからの借り入れとして国では処理されていたのである。

国も借金漬け、民も借金漬けにされていた。民は税をとられ生活が出来ないために領主から借り入れをする羽目になっていたのである。領主は民から集めたものをそのまま民に貸し出していたのだ。毎年借金が増えていくのである。


儲かっていたのは領主たちである。

領主たちは民に貸し付け国へ貸し付け利子をとっていた。


「じゃぁ民にお金返さなきゃいけないんだね。」

「そうなるな。だが金がない。」

「うっ・・・」

「それに領主や民も逃げていった者や死んでしまった者も多いようだな。」

「どうすればいいの。」

「手荒なことだが一旦すべて借金は無しにする。これしかないな、幸いに国の指導者が変わったのだ。

それと旧王族や貴族に新しい国として貴族位を授ければいい。その金で国の資金として運用するしかないな。オリオン王国を始めルガーや獣王国も支援してくれる。何とかなるだろう。」

「えっ、ホントにぃよかったー。」

「お前、何にも考えていないだろう。」

「えっ、考えているよ。シーマ王国はジャック兄ちゃんに任せるよ。俺はトリスタンで手一杯だしね。」

「レインお前何言ってんだ。俺は無理だぞ。」

「そこを何とかお願い、頼りがいのあるお兄ちゃん。」


必殺、ウルフル目線であったが、全く効き目がなかった。

この必殺技は年齢が上がると効き目が低下するのである。そして男には効き目が薄くなるのであった。


がっくりとするレインであった。





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