503話 前王の考え
レイア姫は、レインと話し合っていた。
「レイン様、シーマ王国は民に重税を課せ苦しんでいます。」
「・・・・」
「シーマ王国をトートの様に出来れば民たちも安心して暮らしていけます。」
「・・・・・」
「悪者貴族を正義の力でやっつけましょう。」
「・・・・・・」
何かの戦隊ヒーローもののようなレイア姫の考えである。
レインにはレイア姫が極端に影響されやすい人だと話を聞きながら思っていた。
前シーマ王との話で何かを言われて影響してしまったのだろう。
「レイアさん、いまトートは開発の途中です。ここで止めるわけにはいきません。
トートの民たちの生活をまずは安定させなければいけないのですよ。」
レイア姫は一人で納得して(うんうん)頷いている。
レインは段々となつかれてきた、これで一児の母親だという。大丈夫かーと思っていた。まぁ王族など自分で子育てなどする者はいない、乳母などに育てられる方が一般的だろう。
後日レインはシーマの高位貴族と前王を集め意見を聞く。
「よく集まってくれたな。シーマ王国について聞きたいことがある。」
「「「・・・」」」
「心配するな、民たちが重税を課せられているとレイア姫が言っていたのでその確認だ。」
ある貴族が
「シーマ王国の税は5民5公です。」
「そんなに高いのか。」
「「「「「・・・・・」」」」」
「そうでしょうか、フロンティア大陸ではほとんどの国が5民5公です。」
「えっそうなの。それだと生活できないね。」
レインは考える、5民5公で税がとられ、更に税を課しているとなれば民の生活は貧困以下になっているだろう。
「貴族の人たちに聞きたいんだけど。5公の内貴族達の取り分は1,2ぐらい。」
「いいえ、5公はすべて国へ支払います。我らは5民のうち2を取っています。」
レイン衝撃の事実に膝を着きそうになった。(民は3しかないの)
「それでよく暴動とか起きなかったね。」
「民の暴動を沈めるのが貴族の役目です。」
前シーマ王はそんな事初めて来たような表情であった。今まで民たちは幸せに暮らしていると思っていたのである。
「レ、レイン殿、民を救ってくれ。」
頭を下げる前王である。そばにいる貴族達は驚き、そして王と同じようにレインに頭を下げるのであった。
「ちょちょっと待った。俺、敵だよ。」
「それは分かっている、だが気づいたのだ本当の敵は宰相であることがな。」
「・・・・・」
レインは思う、何なんだこの話はシーマ王国はトリスタンを侵略しようとしている国じゃないのか。ルシア王国を包囲して戦争を仕掛けてきた国じゃないのか。
「そんなに民の事を思うのなら何故、今迄何もしなかった。」
「それを言われると何も言えないな。だが他の国の領地をとらずとも豊かになれる事を知った。ワシには出来ないが、レイン殿ならばそれが出来るのだ。」
「んーーーー、国を滅ぼすけどいいの。」
「よい、民が今より豊かな生活が出来るのであればシーマが無くなっても良い。」
「分かった。やるよ。」
「カイン叔父ぃーーー、頼みがあります。」
「どうしたレイン、いよいよかーーー。」
嬉しそうに答えるカインであった。
「いよいよですね、そこでカイン叔父に王都の城を潰してもらえますか。」
「城だけか。」
「城だけです、城がなければ宰相も悪だくみは出来ないでしょう。」
「まぁ、いいか任せとけ。」
カインはレインの依頼を快諾した。レインは次にトリスタンに飛び祖父であるハロルドの元へと行ったのである。
「おじいちゃーーーん。」
ズキュン
「おおーーーー、レイン、カインから金は貰ったかー。」
「うん、沢山ありがとう。さすがおじいちゃんだね。」
ズキュン、ズキュン。
「うおおーーーーーーわしは幸せだーーーー。」
突然叫び声をあげるハロルドであった。
レインは話が進まなくなるのでこれ以上よいしょは止める事にした。
「おじいちゃん、父上の事なんだけど、何で僕にシーマとシーラの対応を任せたんだろう。」
「ん、・・・・・んー、多分だがレインならうまくやれると思っているからだろうな。」
「僕ならうまくやれるかー、そうかそうだよね。」
レインはアレクと以前に話したことを思い出していた。レインは魔物の王国をつくると言っていたのだ。そして自由にやれと言われていた。
レインは人殺しは好きではない。戦争はもちろん人殺しである。出来ればみんな仲良くやって行きたいのだ。
レインはトートに戻るとビラまきを行った。
ビラの内容は王都襲撃である。
〇月〇日に王都を攻撃予定と銘打ってビラを撒いたのである。
それはもうパニックになっていた。シーマ王国は戦争終結となったと民に伝えていたのである。それが全く違う事がばれてしまったのだ。
王を非難する声もあるが、それどころではなかった。王都が戦場になる。逃げなければいけなかった。
シーマ王国は王都からの出入りを禁止してしまった。完全な悪手である。人の流れを止めるつもりであったのだが人が出入り出来なければ物も出入りすることができないのである。
王都襲撃の予定日はまだ先であるために王都の民は食料にも困るようになるのだ。
王城内
「宰相閣下、人の出入りを解禁しませんと食料が底をつきます。」
「・・・・・・」
「宰相閣下、これは責任問題になりますぞ。」
「・・・わ分かった。商人のみ解禁としよう。」
だがこの決定は中途半端過ぎた、商人のみであるが自由になると皆商人の登録をして王都から逃げていったのだ。
そのために食料不足という危機は無かったが、ゴーストタウンの様になってしまった。
王都の周りの領地は大勢の難民と化した者達で大混雑していた。金を持っている者達は優先的に入る事が出来、無い者達は入る事が出来なかったのだ。
そのために王都周辺領地では暴動が起きようとしていた。
「入れろーーー」
「中に入れろーーー。」
「子供がいるの入れてーーー。」
門の前では中に入れない民たちが騒ぎ、出入り口を塞いでいた。
そのために行商人や食料の搬入が出来ずにいたのである。行商人などは暴動を恐れ近づく事もしなくなっていた。
領内の領主はこの事態を収拾するために王都へ伝令を出したが、何の返事も帰ってきていない。
「拙いぞ、拙いぞ、拙いぞーー、領地に食い物が無くなってきている。おい何とかしろ。」
「閣下、今の状況では無理です。まともに領外に出る事も出来ません。」
「それを何とかするのが家臣の務めだ。」
「・・・では、備蓄を解放いたしましょう。」
「うっ・・・それはダメだ。いつ戦になるかもしれん。おーーそうだ備蓄を移動させよ。」
「・・・・」
この領主は備蓄を隠すために秘かに町から持ち出そうとしたが町の外で多くの民に見つかり貴重な民の食料となった。
後にこの貴族は、多くの民から感謝された。
貴族は何も言えなくなっていた。国へ訴える事も家臣を殺す事も出来なかった。何かすればすべてが公になってしまう事が分かっていたのである。
「ぐっぐそーーーー。」




