5話 魔力
王都
王都、ローエム王国の直轄地、この国最大の大都市、人口は50万人と伝えられている。
実際は分からない、貧民街がありそこの人口を把握していないのだ。
王都は王城を中心として、その周りを平民の富裕層が囲んでいる。その外周りには貧乏な平民と平民の下の層として貧民街がある。
王城を中心に外に行くほど貧困層となっていく。スラム街は西の一画にあり、昼間でも一人歩きは危険だ。
ただし大通りは、東西南北の入場門から商店が並び建ち、華やかさを出している。
オリオン家一行は、南門入場門広場に入り、人の多さに圧倒されている。
「うちの村、この広場に入るじゃねえか」
デリック従士長の顔が引きつる。
オリオン家の従士たちの軽口はいつものことだ。
オリオン家は、平均より少しだけ上の宿屋に入り、明日の納品の準備を始める。
明日の納品まで、従士たちは寝ずの番をする。
治安は悪くはないのだが、万一のためだ。
「やっと、一息ついたな」
「父上、久しぶりのお風呂でさっぱりしました」
ハロルド、アレクス、デリックの3人は明日からの打ち合わせを行う。
翌朝
ハロルドとデリックは納品の為、王城に向かう。
アレクスは、母と姉たちのお使いである。トホホ
まずアレクスは、地図を見ながら布屋に向かう。
「すいませーん」
「いらっしゃいませ」
「オリオン家のものですが、注文していた布はありますか?」
「少々、お待ちください」
「はい、こちらですね。こんなに持てますか?」
「無理です。できましたら南門近くの湯の宿 南店に配達願います。代金は今払いますから。」
「湯の宿 南店ですね、承りました。」
さて次は、西13番街26-140か、遠いな。
時間はあるし、ブラブラしながらいくか。
アレクはキョロキョロしながら、あっちにフラフラ、こっちにフラフラと寄り道ばかりしてる。
ふと、路地をみると、少年が足を投げ出した状態で、座り込んでいる。
「大丈夫ですか」
少年は頭から血を流しているが、意識はしっかりしている。
「この先に、孤児院があるから、誰か呼んできてくれないか」
「僕、魔法使えるからケガを治そうか」
「はっ、魔法でケガが治るかぁ」
「治るよ、じっとしててね」
アレクは頭の傷に近づき、傷口を水で洗い、相手に傷の治るイメージを乗せて魔力を流す。
ゆっくりだが、傷がふさがっていく。
「すげぇ」
「ほらね治ったでしょ」
その少年は土下座していた。
「頼みがある、治してもらいたい人がいる。」
「いいよ、どこにいるの」
「えっ、いいのか。こっちだ」
少年はゆっくりと立ち上がり、歩き出した。
10分ぐらい歩くと子供たちの笑い声が聞こえる。
古い大きい建物に入り、奥に進む。
包帯でぐるぐる巻きになっている、少年と少女が寝ている。
包帯を取り、傷口をきれいに洗う。
そして、傷の治るイメージをして魔力を流し込む。
んっ、さっきと同じ違和感が、自分で流した魔力以外の魔力を感じるのだ。
アレクの魔力は通常の魔力より練り込んでいるので濃いのだ。
明らかに自分の魔力ではない。
魔法使いは1000人に1人だ、3人も近くにいるなんてあり得るのか。
アレクは治療が終わると、先ほどの少年に
「他に治療の必要な人はいる?」
少年は、院長が腰と膝を痛めて寝たきり状態だという。
早速、院長の部屋をノックし、少年が事情を説明している。
「本当によろしいのでしょうか、魔法使い様。ここには治療費をお支払いするお金がありません」
「お金はいりませんよ」
アレクは、人体の骨の標本をイメージしながら魔力を流す。
やはり、違和感がある。院長は本当に微量だが魔力がある。
もしかすると誰でも、魔法が使えるかもしれない。
魔力の流し方、練り込み方を知らないのだ。
治療が終わり、院長に立てるか試してもらった。
「体が軽いわ、10年は若返ったみたいだわ。」
アレクは思った、10年若返ってもあまり変わらないだろうと。
「治って、よかったです」
「本当に、ありがとう。寝たきりになって、子供たちの世話ができなくて」
少年が「ありがとう。あっ、まだ名前も聞いてないや。俺はリック、本当にありがとう」
「僕はアレクス。昨日、王都に来たんだ」
「ふうーん、行商か」
「まぁ、そんなとこだね」
すると、先ほどの部屋から大声が聞こえてくる
「治ってる、傷が治ってる。ユリ、ユリ、起きて傷が治ってるんだよ」
「えぇぇぇぇ」
そこへ、院長とリックと僕が部屋に入り、リックが事情を説明する。
「マック、ユリ、よかったね」
院長と抱き合いながら、泣いている。
リックはそっぽを向いているが、泣いているのを知っている。
リックにケガの原因をきくと、数日前に日雇いの仕事についた、リック、マック、ユリがほかの日雇いのけんかに巻き込まれて、大けがを負ったので、雇い主に治療費の交渉に行ったが相手にされず。
逆にボコボコにされて、路地横で休憩していたらしい。
倒れていたの間違いじゃないのと思ったが、アレクは大人の対応として何も言わないことにした。
リックは、王都には孤児院出身者の仕事は少なく、仕事の伝手はないかと相談された。
僕はリックに、いい人認定されているみたいだ。
まぁ、無料で治療する奴なんて、いないよなー。
「リック、父上に相談して明日来るよ」
アレクは、孤児院を出て西街区の買い物をすますと、宿に戻った。
父がデリックと宿に戻ってきていた。みんなで食事をして部屋に戻った。
「父上、相談があります」
父に今日あったことを話した。リック達の事、その治療で4人に魔力があった事。
「アレクの考えが正しければ、誰でも魔法が使えるということか」
「4人しか見ていませんが、4人とも魔力がありました。ただ魔力の少ない人は使えないです」
「そこで、父上の魔力を調べたいのですが」と短剣を父に渡す。
父は渋い顔をしながら、指先を切る。
治療を開始すると、やはり違和感がある。魔力があるのだ。
本人の適性もあるかもしれないが、魔法は誰でも使える。
その夜は、遅くまで父に魔力の流し方、練り方を伝えていたが、寝落ちした。まだ5歳だし。