49話
カイン領、そこは脳筋の集まりだった。
カインが領地に戻り、ミルトン王国の救援要請を受諾の話をすると、我も我もと名乗りを上げて収拾がつかなくなっていた。
2個大隊を連れていくと伝えると、その後、2個大隊の人数が増えているのだ。これには笑うことしかできなかった。何とか大隊の人数を増やして落ち着かせた。
数日後、大型船3隻がカイン領に到着していた。ガレオン号と大型飛行貨物船だ。この飛行貨物船、真っ赤に塗装されている。物資輸送とカイン領の兵士を輸送するための船なのだ。
カイン隊2個大隊600人。アレク隊50人が今回の救援隊の人員となる。この他にも物資輸送等の人員はいる。
「アレク、待ってたぞ。」
「物資の積込みが、大変で満杯ですよ。行きは狭くなりますよ。」
「大丈夫だよ、みんな解っているからな。」
カイン隊の戦士たちは、静かに乗り込み、出発の時を待っていた。
静かに船が浮上していく。
先頭はカインの赤い彗星号、そのあとに大型飛行貨物船2隻が続き、最後にガレオン号があとに続く。
ミルトン王国、ゲートル領を目指して航行していく。
ゲートル領は、人で溢れていた。
近隣領の兵、難民、ゲートルがオリオン家からの援助を近隣領主に伝えていたのだ。
兵はグラムット帝国と共に戦うために、ここに集まってきたのである。
カインとアレクはゲートル男爵の屋敷で、挨拶を受けていた。
「救援、感謝いたします。カイン殿。アレクス殿。」
「お久しぶりですゲートル男爵、戦況はどうですか。」
「あまりよくありません、グラムット帝国が王都に迫っています。一刻も早く、救援に行きたいのですが、戦力が足りません。」
「敵と、こちらの戦力はどのぐらいですか。」
「わが方は、近隣の貴族軍1000人です。あとは徴兵3000です。敵は3万の兵力で王都に迫っています。王都が陥落してしまうとミルトン北部のみとなります。」
「アレクどう思う。徴兵は必要かどうか。」
「いらないでしょう。ゲートル男爵、質問です。帝国軍は3万の兵はどの位置にいるかわかりますか。」
「1週間前の情報ですが、グラムット帝国は、周辺地域を占領しながら進軍しています。3方より王都に進軍してくるでしょう。」
「地図はありますか。あれば見せてください。」
「はい、こちらです。」
」
「敵はこう進軍中なんですね。分かりにくいので敵1軍、2軍、3軍と番号で呼びましょう。まずこちらから一番近い位置にいる1軍を殲滅しましょう。方法は敵進軍の想定位置に正面、側面、後方の4方向からの包囲殲滅です。こちらには船がありますから、布陣することは大丈夫でしょう。殲滅する方法ですが。正面、左右の側面からの遠距離攻撃で数を減らし、突入して殲滅します。」
「正面はリック隊、マック隊、ユリ隊。側面左はガレオン号と僕が、右はミルトン軍。最後、後方はカイン兄の大隊で。回り込むのに身体強化できるカイン兄の隊しかできないでしょう。多分、正面と側面の攻撃で敵は後方に撤退、いや逃げていく。撤退してくる敵と正面衝突するのはカイン兄のところだね。カイン兄と敵が衝突したら残り3方からも突撃して殲滅する。」
「大まかにはこれで行こう。後は随時、指示を出すから。あっ、そうだ、ミルトン軍は遠距離攻撃はないからその時は見学ね。明日中型船が3隻来るからそこから攻撃するからね。」
「あの、ホントに出来るのでしょうか。」
「大丈夫。アレクが出来ると言ってるなら出来るさ。なっ、アレク。」
「出来ますよ。1日1戦で3日、移動と戦闘ですから最後が一番きついかもね。まぁ、移動は船だからまだ休めるでしょう。その後もあるけどね。」
翌日、3隻の飛行中型船が到着した。物資を降ろして人が入っていく。
後日
「通信、敵、通過予定地に布陣しました。」
「了解。そのまま待機。」
「通信、敵3キロの距離で発見。」
「敵に発見されるまで待機、見つかったら正面と側面は距離を詰めるぞ。」
正面に中型船1隻、リック隊、マック隊、ユリ隊。左側面にガレオン号とアレク。右側面に中型船2隻とミルトン軍1000。そして後方に回り込むカイン隊。
「カイン隊、後方に移動せよ。」
「通信、敵に発見されました。」
「よし、微速先進。」「微速そのままで、距離1000を切ったら、船から攻撃開始、距離500で微速停止。」
「通信、敵前進速度を上げてきました。」
「予定内、問題なし。」
「攻撃用意、6,5,4,3,2,1,撃てー。」「BAAAAAN。BAAAAAN。ばーーん。ごおおーん。」
「ぎやぁぁ、やあああぁぁ、たすけてぇぇぇ、いやぁぁあっ、ぎゃぁぁー、やぁぁーー、ぎゃぁぁ、・・・・・・・た・・す・・・・け・・・・・て・・・・・・・」
それは戦闘ではなかった。殺戮であった。
遠距離からの一方的な攻撃である。20分間の遠距離攻撃により敵は壊滅状態、1万人いた敵軍も数を半数以下にて後方に撤退していった。
「カイン隊、突撃せよ。」
「カイン隊が、敵と接触、全軍突撃。」
「船を頼んだぞ、僕もでる。」
「はっ、ご武運を。」
アレクは、左側面から1人で突っ込んだ。身体強化をして、2本の短槍を両手に持ち敵の首を突いていく。アレクが走り過ぎると声の出ない人が出てくる。喉を突かれているが、死んではいない、死ぬ直前なだけだ。ただ、無慈悲に突いていく。感情がない機械の様に。
周りに人がいなくなると、ふーーっと息を吐いて悲しい顔になる。
そして、また無表情になり。「作戦完了。敵、残存兵は逃せ。恐怖を宣伝させろ。」
その日の戦闘は終了した。アレク隊、カイン隊、ミルトン軍は、泥の様に眠った。
感情が出ない様にしていた。あまりにも一方的な殺戮であった為に、周りが死体で埋まってしまったのだ。
その光景が勝利を祝う気になれなかったのだ。
実は、アレク隊、カイン隊は初の戦争であった。
ミルトン軍も戦争はしていたが、戦闘が初めての軍であったのか、勝利を祝う気になれなかったようだ。
又、次の戦闘が繰り返される。
アレクは、全軍に向けて言った。「諸君、戦争は人殺しだ。だが殺さなければ、殺されるのだ。自分の家族、兄弟、恋人、友人すべてだ。すべてを守る為に、戦え、守るために戦え。」
「戦闘準備せよ。」
二日目の戦闘も終わった。完勝。
三日目、王都手前での殺戮が終わり、突撃前に降伏勧告をする。
「敵軍に告ぐ、降伏せよ。武器を捨て跪け。しなければ殲滅する。」
敵軍は、武器を捨てた。
三日目の戦闘の敵生存者は4000人であった。