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488話 クーヤ王国宰相レスリン

エレキ軍はすんなりと王都へ入る事が出来た。


王都を守る衛兵たちも死にたくはない。2万もの兵が目の前にいれば戦う気持ちも無くなってしまうのである。

レスリンは衛兵たちに囁く、協力すれば命を助けると約束するのであった。


堂々と王都へ入場を果たしたエレキ軍2万は王都の民の中を通り城へと向かう。



王都入場から約2時間2万の兵は城門前に来ていた。



「妙に静かですね。」

「ガウスもそう思うか。」



城門前に到達したエレキ軍であったが城内が無人のように静まり返っていた。


「まぁ入って見ればわかるだろう。いくぞー。」


レスリンは兵3000を率いて城内に入っていった。


城の中はほぼ無人状態であった。


城に残っているのは王族、王族専属の使用人たちのみとなっていた。この城は国の行政も含めている為に多くの人が働き住んで居るのだが、そのほとんどの人間たちは大慌てで逃げたと報告が上がっていきたのである。


レスリンは保護したクーヤ王と会談をしていた。



「陛下、ご無事で何よりです。」

「・・・・余に又何かさせようとするのか。」

「いいえ何もさせません。陛下は城の奥で今までのように生活していただいて構いません。」

「まことか、余は殺されないのだな。」

「殺すことなどありえません。クーヤ王国の王は陛下しかおりません。」

「そうかそうか、ならばあとは其方の好きにするが良い。」



このクーヤ王国は王に実権が無くなって100年を過ぎていた。そのためにクーヤ王国では内務大臣、外務大臣、軍務大臣、財務大臣の4大臣の合議制となっていた。

シーラ派、キルト派で大臣と副大臣を交互に出し合い。バランスをとっていたのだが、これが国の業務の停滞を招く原因となっていたのだ。シーラ派が大臣ならば副大臣はキルト派からとなりその下の人事も交互に配置されている為に互いに足の引っ張り合いが生じていた。10か国同盟発足から派閥争いが激化し、国としての機能がマヒ状態となっていたのである。


レスリンはクーヤ王から全権委任と宰相の位、元帥、大公爵位を賜った。これはクーヤ王国で初めての事である。宰相となったレスリンはクーヤ王国の大臣職をすべて兼任できることとなった。


レスリンは、この時の為にクーヤ王国の法律を考えていた。今まで王に権力が無い為に合議制となっていたが、2代派閥の影響で何も決まらない状態となっていた。

これをレスリン一人に権力を集中する事でトップダウンの指示が出来ることになったのだ。


このことでレスリンはクーヤ王国の事実上の王となった。

クーヤ王(60年前)は政治にかかわらないと宣言をしている為に宰相が国のトップとなるのである。


こうしてほぼ無傷で手に入れた王都を起点にレスリンは各地の領主にクーヤ王国宰相の名で帰順を呼び掛けた。

内容は領地安堵である。一月以内に王都へ来た者は領地安堵、それ以外は領地召し上げと爵位剥奪である。

これをクーヤ王国全土へ使者が放ったのである。


各領主たちは激怒する者、うなだれる者、秘かにほほ笑むものと千差万別であった。


一月の間には法律も改正されていた。種族差別の撤廃と農地改正である。今までは人間しか土地の所有が認められていなかったのだ。それを種族問わずに土地の所有を認めたのである。

そして一番の民の衝撃は獣人に爵位を与えた事だった。


まずこの王都決戦?で活躍したガウスを伯爵としたのだ。まだ領地持ちにはしていないが各領主の処遇が確定次第に領地を与えるつもりである。


他の獣人やドワーフ、エルフにも代表的な者達に男爵位を授けている。レスリンはこの不遇されていた者達を爵位を餌に味方につけていったのである。

種族差別をなくすという考えもレスリンにはあるが使える物は何でも使うという考えから最大限に利用していったのである。


王都にいる優秀な下士官も登用していった。王城から逃げた者達は職場放棄をしている。国を動かす為に下から繰り上げをするしか無かったのが実情であった。


国が停滞すればそれだけ国の金が減っていく、レスリンは早急に国の機能を回復させなければいけなかった。そこで奥の手をレスリンは考えていた。貴族達が逃げ出し、王都に取り残された者達がいるのだ。多くは妾の子や愛人たちであった。見捨てられた者達である。

だが教養はある。貴族の婦人たちの嫌がれせや妬み、恨みを受けながらも受け流し躱してきた技術もある。

これは国として使えるとレスリンは思ったのだ。



国としての機能を早急に回復させたいレスリンは多くの手を打っている。


だがまだまだ足りていない。一番は軍の再建である。

今の現状ではガウスを軍の大将として獣人兵2万を基準に増やしていくことしか出来ない。

クーヤ王国全体の兵力で見ると貴族領兵が約15万はいると見られる。それと逃げだした兵たちを合わせると相当な兵力となる。他からも集まる事を見越し、貴族達は生き残りをかけて必死に兵を集めるだろう。20万は集めるとレスリンは予想している。現状2万の兵では10倍となりかなりの苦戦も予想されるのである。

レスリンは負ける事は無いが楽に勝ちたいと思うのである。


「ガウス伯爵、兵の募集はどうだ。」

「止めてくださいよ、伯爵なんてなんか背中がムズムズします。」

「ガウス、慣れろ。獣人で初めての伯爵だぞ、獣人や他の種族のあこがれとなっているんだ。お前個人の問題ではないんだぞ。」

ガウスはレスリンの言葉に素直に謝罪した。

「申し訳ございません。」

「ガウス、獣王国を知っているか。」

「はいアレク様の兄上の国です。」

「そうだ、カイン様の国、獣王国あそこの獣人部隊は負けを知らないようだ。100戦して100勝だと公言している。」

「家もそうなりたいものです。」

「出来るさ、精鋭を集めいずれ挑みたいものだな。」

「まさか戦争を仕掛けるのですか。」

「そんなことするか、訓練だ、訓練。」

「そうですよね、焦ってしまいました。」

「それよりガウス、軍の指揮系統を一月以内に確立しろ。大至急だ。訓練も一月内で何とかしろ。」

「兵は寝る暇もなくなります。」

「それでもいい、この一月が勝負だ。これを乗り切ればかなり楽になる。兵には給料と昇進を餌にやらせるのだ。頼むぞ鬼教官。」

「はーーー、こんな役ばかりですな。仕方がありません、負ければ後が無いのはエレキ時代も今も変わらないという事ですな。」

「そうだ少し規模が大きくなっただけだな。アハハハハ。」



これより3週間レスリンは寝る暇もなく働いた。クーヤ王国貴族の動向を探り作戦を立てていったのである。


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