表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
477/919

477話 進軍する

キルト王国軍との戦闘は終わった。


キルト軍30000に対し実質500の反乱軍であったが、結果は反乱軍の完勝であった。


反乱軍の一員である農民兵たちは、丘の上で食事の支度をしている。戦闘で疲れている兵たちの為に温かいスープとパン、肉を大量に調理しているのである。


反乱軍(マリオン軍)の兵たちは新しい仲間である元キルト奴隷兵5000を迎え入れていた。


戸惑う5000の兵たちは、キルト軍が壊滅するさまを目のあたりにしている。もしあの時隊長が決断していなければ今生きてはいなかったであろう。


「我はゼット・マリオンである。元キルトの奴隷兵たちよ、よく決断した。これからは我と共に王国を築き繁栄の礎になろうぞ。」

「「「「「「「「「「「おおおおおおーー」」」」」」」」」」」」


「まずは腹ごしらえだ、好きなだけ食べて騒げー。」

「「「「「「「「「「「おおおおおおーー」」」」」」」」」」」」


それからは酒はないが大宴会となっていった。


朝からの戦闘は昼前に終わり、食事は昼過ぎから始まり夕暮れ迄続いた。その宴会には勝利を祝うために近くの農民や名主など色々な者達が挨拶にきていた。3000人が8000人に増えさらに近隣の者達が混ざり1万人規模の大宴会となっていた。

これを偵察にきていたキルト王国軍の者達は急ぎ城へ戻り報告をしていた。


だが3万のも兵が負けたこの時点では新たに兵を送りだす事も出来ずに国の重鎮たちは部下を怒鳴り散らすだけで解決する事は無かった。



7か日後、反乱軍(マリオン軍)は7500の兵として進軍する事となった新たに加わった5000と近隣から駆けつけてきた兵たちであった。最初についてきた農民兵2500は後方支援部隊として後ろから着いて行く事となっていた。



「進ぐーーーん。」


ゼットの掛け声とともに7000もの兵たちは王都へ向けて進軍を始めていた。この場所から王都までは1日の距離である。

キルト王国軍も黙ってみていたわけでは無かった。夜襲を掛けようと1000人単位の兵を送っていた。だが夜襲の前になぜか全滅していた。


キルト王国は内乱が起こってから国がおかしくなっていた。急激に広がった国土では争いが絶えず。本土でも問題が続出していた。

貴族達も新しい役職を得るために互いにけん制しあい険悪になっていた。

これはキルト王国が短期間で国土を広げ成功したせいでもあった。王と宰相に戦争を任せておけば勝てると思わせてしまったのだ。死者も少なく簡単に勝ってしまったことでキルト王国貴族達は敵を侮ってしまったのである。

内乱も同じであった。国内でのことである為に王と宰相が処理するだろうとの考えであった。

だが最初の反乱軍であったマリオン軍は7000迄兵が集まり王都へ進軍している。他の地域でもマリオン軍に触発され200、500と小さいが王都を目指して兵が集まってきていたのである。

これは地方領主の時世を見極めた者達がマリオン軍に味方するために兵を出していたのである。

多くの地方貴族達はキルト王国とマリオン軍双方に肩入れしていた。何方が勝っても生き残れるようにしていたのである。


それは仕方のない事である。国の中の一地方領主である。国相手に勝つ事等考えてもいないのだ。

如何すれば生き残れるかだけを考え、答えを出しているのであった。地方領主もマリオン軍がキルト王国に勝つとは思ってもいない、だが万一戦いが長引いて自分の領地を荒らされたら困ってしまう。そのための保険として少数の兵を派遣しているのであった。


マリオン軍に送られた兵たちの考えは少し違っていた。地方領主たちの後を継げない者達、厄介者たちで構成された者達なのだ。この場所以外に帰る場所もなく。マリオン軍が負ければ領主とは全く関係の無いものとして処分される者達であった。

そのために送りだされた兵たちは生きるために必死であった。



ゆっくりと進軍するマリオン軍は新たに参戦した兵を加え、1万にもなっていた。ゼットは1万を3つに分けていた。エックス(X)3000とワーイ(Y)3000と本体4000である。


マリオン軍は一日の距離を二日かけての進軍であった。ゼットの考えである。キルト王都の民を無駄死にさせたくなかったのである。逃げる時間を与えたのであった。

ゼットは3万の兵との戦闘後すぐに進軍する事も出来た。だが進軍する事をしなかったのだ。一番の理由は噂を広めるためであった。500の兵がキルト3万に負けた事を宣伝する時間が必要であったためである。

これは商人を挟み民の間で瞬く間に広がった。何故民の間で広がったのか、そこに貴族達は含まれていなかったからだ。

キルト王国では軍が負ける事は今まで無かったのだ。奴隷兵が負ける事はあったのだが。キルト王国は奴隷兵と正規軍を区別していた。

キルト王国軍は建国以来不敗であると宣伝していたのだ。これがいつしかキルト軍は負けない国となっていた。実際は何度も負けている。奴隷兵だけでの軍行は無いからである。いつも奴隷兵と正規兵はセットでの行動である。たとえ負けても正規兵はいなかったことになる、だから一度も負けていない事になっていた。




この事実を初めて聞いたアレクは呆れていた。


それはそうだろう。戦いとは負ける事も勝つ事もあるのだ。それを負けたことがないなどと言ったらキルト王国は一度も負ける事がなく兵がいなくなってしまうのである。




キルト王都では王都から逃げようとする民を規制していた。身分の高い者達は一時避難として認め、身分の低いもの達は一か所に集められ、王都防衛の守りに駆り出されたのである。女も子供も門からの道に集められ進めないように人の壁としたのだ。家に帰る事も出来ず、水や食べ物が支給されることも無かった。まだ集められて一日であった為に死んだ者はいないが小さな子は大分弱っていた。



王都からの報告が入るとゼットは渋い顔になっていた。

「アレク様、どういたしますか。」

「ゼット、民たちは駆り出されてまだ一日だ、水さえあればまだ1日2日は大丈夫だろう。」

「でですが、この晴天では雨も降らないでしょう。」

「心配するな。雨は降る。王都に恵みの雨が降るぞ。ゼットの伝説がまた一つ増えるな。ククククッ。」


笑いをこらえるアレクにゼットはため息しか出なかった。アレクは伝説つくりを楽しんでいるのだ。伝説にされるゼットの事など全く考えていないのである。



「ハーーーー、俺ってなにもんだ。ハァー。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ