476話 反乱軍対キルト軍
カムル村からの反乱は一気に広がりを見せていた。
これはマリオン王国復活の噂と合わさり、平民、奴隷の間で広まっていた。貴族の中でも先祖をマリオン王国とする者達は行動は起こさないが民たちの内乱参加を黙認している領主までいる。
このような領主たちは比較的民に好かれている領主たちである。
カムル村はキルト王国にほぼ最北端に位置している、そこから始まった反乱はグレーク王国と聖アース教国の支援を受け元トキ王国を解放したのである。
対するキルト王国は奴隷たちの反乱を黙ってみていたわけではない。反乱が起こった時に軍を派遣して鎮圧をするために戦いをしたのだが、これがまた悲惨な結果となってしまった。
反乱軍3000に対してキルト王国軍30000の大軍であった。キルト軍の3万の内奴隷兵は15000の半数であった。奴隷兵の中での精強な部隊であった。この中に間の悪い事にXとYの部隊が混じっていたのである。
対峙する両陣営であるが見た目で反乱軍が負けていた。3000の軍の内容は農民兵たちが2500で実際に戦える者は500しかいなかった。農民兵の装備は貧弱で戦えるようなものでは無かったのである。
その中で500の兵の装備はきちんとしていた。質の良い剣と鎧が支給され、全員がマリオンの紋章が入っていた。
圧倒的不利な状況の中で反乱軍の大将であるゼットが前に出ていく。
「キルトの奴隷兵たちよ我はゼット・マリオンである。キルトの悪政の中で奴隷として一生を送らなければならない。戦えなければ処分され、平民にすらなる事の出来ない状況でお前たちはなんのために戦う。己の子や孫に誇れる事をせよ。悪に手を貸さず、正義のために力を使え。今の奴隷兵に反抗は出来ないだろうが武器を置け、その場に留まれ。戦闘後に奴隷の首輪を外して自由を手に入れろ。」
「黙れ黙れーーー、この奴隷無勢が何を言っている。お前はただの奴隷兵ではないか、何がマリオンだ。お前なんぞ。この3万もの兵で踏みつぶしてくれるわ。ガアハハハハ、」
「フン、腐れ外道が。戦闘も出来ない太った豚が人の言葉を吐くな。 部隊を殲滅せよ。」
ゼットの言葉で500人の兵たちが一斉に敵軍に向かって走り出す。それを見て焦ったのが敵将の太った豚であった。慌てて自軍の中に戻った将軍はキルト兵に前進の指示を出す。もう完全に支持が遅いのだが相手は500との考えであった為に余裕すら感じていたのだ。
所が奴隷兵15000の内5000の兵たちは動かなかった。その場で武器を置き動くことをしなかったのだ。
キルトとしたら大問題であるが反乱軍との戦闘に入ってしまったためにすぐに切る捨てることを後回しにしたのである。戦闘後に処分すればとの考えであった。
キルト王国軍25000は500の反乱軍を余裕をもって受け止め包囲殲滅する構えであったが、そう思惑通りにはいかなかった。
この反乱軍500の中にアレクとカインが混ざっていたのである。
一人で数万の兵を殲滅できるほどの力を持った二人である。たかが25000の兵では足りないのである。
二人は目立たぬように魔弾を飛ばして味方を助け、敵兵を殺していく。二人に動きは10個ぐらい目が付いているのではと思わせるほど周りを助けていた。
不利になった味方にはなぜか数秒後に敵が全滅されている。反乱軍500には死者が出ていない。対するキルト王国軍は死者は数秒ごとに増加している。
この戦いを見ている農民兵たちは
「す凄い。」
「強い・・・」
「あの大軍に勝つのか。」
数において少数であった反乱軍であったが農民兵たちは戦う気満々であった。領主に税を取られ、国へ税を取られる。もうぎりぎりであったのだ。これ以上は餓死するか反乱で死ぬかしか道が無かったのである。
それがいざ戦う事になった時には見ていろであった。少数である反乱軍で農民兵であっても2500という数は貴重であることは馬鹿でも分かる事だ。それを3万の兵を相手に対峙している所で見ていろである。農民兵たちはゼット・マリオンは馬鹿なのかと思ったほどであった。
だがいざ戦闘が始まると500の兵で3万の兵を圧倒しているではないか、死ぬしかないと思っていた農民兵たちは目の前の光景を信じられないでいた。
「勝っているのか。」
「ありえない。」
「信じられない。」
「・・・・・」
戦闘も終盤を迎えると。
「本陣に突っ込むぞ、我に続けーーーぇ。」
ゼットの掛け声で近くにいた数十人はゼットの後を追って進んでいく。それを陰から支える一つの影があった。
アレクである、カインは戦闘が楽しいのか味方を助けながら殺しまくっている。
ゼットが敵本陣に突っ込むと待ち構えていたのはキルト騎士達であった。キルトの中では強兵となっている騎士達であったが、なぜか動きが悪い。まるで重りを背負いながら戦っているようであった。
実際に騎士たちは重りを背負っていた。アレクによって一人一人に100キロの重りを付けられていたのである。自分の体重が突然100キロ増えたのだ。動ける訳が無いのである。剣を持ち上げ振り下ろす動作一つで息切れしてしまう程であった。逃げる事も出来ず、またまともな戦闘も出来ないために練習場の藁人形の様に斬り捨てられていった。
「たたた助けてくれーーー。」
思うように体が動かない敵将は土の上でジタバタしていた。太った体に重り100キロ、そして腰まで抜かしている。それでも手足だけは逃げようと動かしていた。
「どうしたさっきの威勢のいい言葉はどうした。」
這うように逃げようとする敵将に上から声を掛けたのはゼットであった。
「たたた助けてくれ。ほほ捕虜になる。」
「捕虜など要らんのだ。お前には今までの見せしめの為に死んでもらう。ただ簡単には死ねないぞ、奴隷兵をお前たちは娯楽のために殺してきたのだ。お前も踊りながら死ね。」
キルト軍は反抗的な者を見せしめと娯楽のために特製の処刑方法があった。大きな鉄板に下から火を焚き人を焼くのであった。それは熱さから逃れるために飛び跳ね少しでも鉄板から離れるために踊っているようであった。それを見てキルト軍たちは酒を飲み娯楽としていたのである。
何人もの奴隷兵が犠牲となり酒の肴とされていたのであった。
その言葉は聞いた敵将は気を失ってしまった。又近くで戦っていた騎士達は逆に戦闘力が上がったようであった。逃げるために必死になっているのだ。
踊り焼きに自分がなる事を想像したのだろう。逃げの一手である。だがそう簡単に逃げれるほど甘くは無かった。騎士たちは一人一人と殺されていった。だがなぜか騎士たちは安堵の表情をしていた。
今殺されることが自分にとって幸福に思えていたのかもしれない。




