475話 ゼット・マリオン
「Z状況を説明してくれ。」
「はっ、現在キルト王国内の奴隷兵は70万おります。このうち20万は使い捨てにされる兵たちです。」
「ようは反抗的な者達という事だな。」
「はいそうです、国を滅ぼされ、奴隷兵にさせられた者達です。」
「キルト国内にかたまっているのか。」
「いいえ、各地に散らばっております。」
アレクはZの報告をかなり詳しく聞いていた。
「誰か旗頭が必要だな。」
「内乱の主導者ですか。」
「そうだ誰かいないか。」
「主だったもの達は皆処刑されています。生きている王族や貴族達もキルト本土に連れていかれました。」
「ならば作るしかあるまい。Z頼むぞ。」
「はっ?」
アレクはにこやかに笑っている。
「はっ??????何?」
こうして救国の英雄が生まれた瞬間であった。
翌日
カムル村では村人、奴隷兵たちが広場に集まっていた。カムル村長とゼット中隊長が二人で広場に現れると村人たちは村長を軽蔑のまなざしで睨んでいる。
二人が広場の中央に着くとゼット中隊長の変化に奴隷兵が気づく。
他の奴隷兵たちもゼットの変化に気づいている。
ザワザワザワザワザ・・・・
「皆、聞いてくれ。俺の首を見ろ。」そこには奴隷の首輪が無くなっていた。
「「「「「「うおーーーーーーーーーー。」」」」」」
歓声が落ち着いた頃、ゼットは喋り出す。
「いいかよく聞け、この首輪はジート・カムル村長が外した。」
「「「「「おおおおおおおおお」」」」」
「キルトは我が国を滅ぼし、民を奴隷としている。そんなことは許すことは出来ない。我が国を解放する。」
「「「「「「「「「「「おおおおおおーー」」」」」」」」」」」」
ゼットとジートはアレクから借りた魔道具で奴隷兵たちの奴隷の首輪を外していく。
「中隊長ーーー。」
「中隊長ー。」
「・・・・」
それからは村人を含め、次の行動を説明していった。まずはこのカムル村を拠点として反抗していく。
そして仲間を解放していくのだ。
現在、ゼット中隊が率いている部隊は200人である。村人が約400人である。たったこれだけの人数で巨大国家キルトを相手にすることは出来ない。カムル村の村人も興奮が収まれば無理だと思う者も出てくるだろう。
「今いる200人だけではない。ほかにも反乱に組する仲間がいる。キルト王国の中にも仲間がいるのだ。」
「「「「「「「「「「「おおおおおおーー」」」」」」」」」」」」
「我が名はゼット・マリオンである。」
「「「「「おおおおおおおおお」」」」」」
マリオンとは昔に滅んだ国の名であった。キルト王国や滅ぼされた国を領地としていた大国であった。
ゼットはマリオン王国の生き残りたと宣言したのである。
これは真っ赤なウソである。
アレクがマリオン王国の事を知りゼットに名乗らせたのである。200年以上前に滅んだ国である。王族ももう誰も生きてはいない。自分が王族であったと名乗った者勝ちである。
「私は約束しよう。キルト王国を滅ぼし、国を取り戻す、民が平和に暮らせるようにする。私はここに誓約をしよう。我と共にある限りマリオンの名において民に祝福がなされることを。」
「「「「「「「「「「「おおおおおおーー」」」」」」」」」」」」
ゼットは村人や奴隷兵たちを見回し両手を天に向かって突き上げる。すると天から村人と奴隷兵に光が降ってきたのである。
これはのちに神からの祝福という伝説になった。
降りそそぐ光が人々を幸せな気持ちにさせていく。
「なんか幸せーー。」
「安心するーーー。」
「気持ちい。」
これはすべてアレクが影から行っている作業であった。この光はただの精神安定剤を混ぜた光の雨であった。
アレクはゼットを救国の英雄にするために演出にこだわったのだ。
ノリノリのアレクに対して拒絶するゼットであった。
アレクとジートに説得されて渋々了解したのである。ところがいざ本番を迎え演説するとこれが気持ちいいのなんのとゼット口は饒舌になっていた。
ゼットはマリオン王国の国旗と紋章の入った鎧を部下たちに配っていく。
「ななな何ですかこの鎧は・・・」
「この紋章・・・は」
「・・・・信じられない」
「何々・・・」
ゼットはマジックバックからマリオン家の紋章旗を高々と掲げる。
するとゼットの元に二人の男が跪く。
「陛下、準備は出来ております。」
「・・・そ、うか。」
ものすごく笑いをこらえる、変装しているアレクである。もう一人はカインである。
変装したアレクはアーク、カインはカイと名乗っている。
演説も一段落した村長宅では
「いやーーー、笑えたな。」
「ゼット、中々だったぞ。」
「・・・・・・」
ゼットは先ほどの自分を思いだし悶絶している。
演説しているときは気持ちがよかった。英雄になったようで爽快であった。だが今は恥ずかしさが押し寄せている。
アレクは突然に
「真面目な話に戻るぞ。」
突然に真顔に戻るアレク、この切り替えについていくのは一苦労なのだ。
「「はっ」」
「これからゼットはキルト王都へ向かい進軍してもらう。そして兵を集めろ。戦えなくともいい。戦闘はさせない。数をそろえればそれでいい。キルトの滅びるところを多くの者達にみせなければならないからな。」
「そう言うことですか、ならば多くの民を引き連れて王都まで参ります。ですが物資は大丈夫なのでしょうか。」
「心配するな。」
アレクはマジックバックをゼットに渡す。金と食料を詰めたマジックバックである。
「マリオン王国の遺物だ。取っとけ。」
ゼットはそんなことあるかと思いだったが何も言わなかった。オリオン家の紋章を削ってマリオン家の紋章が書かれていた。
この微妙に跡の残っている所がわざとやっているようにしか思えなかった。
だがそんなことを言う事は出来ないのである。
丁度同じ時に、村長宅の別室に村人がジートを訪ねてやってきた。
「ジート村長、お願いがございます。」
「どうしました。副村長」
この副村長は前村長である。ジートが村長として着任すると村長を降ろされ副村長となっていたのである。
「どうか、息子を軍に加えていただきたい。」
副村長に連れられてきている者達が一斉に頭を下げる。
「命は大事になさってください。死ぬかもしれないのですよ。」
優しく言うジートであった。
「お願いいたします。村長がマリオン王国のお人だとは思いませんでした。申し訳ございません。」
副村長勘違いであるがゼットと仲間イコール、マリオン王国の者となっているのだ。
ジートは心の中で副村長に謝っていた。「だましてごめん。」