469話
俺はトム、今新村の村長となった。
少し俺の村の説明をしていく。俺の村はゴブリン地区と人間地区その真ん中に交流広場があるんだ。
人とゴブリンがお互いに交流する広場なのだ。
交流広場には物を売る屋台などが店を出せるようになっている。
多くは人間が店を出して人とゴブリンが買い物をしている。
最初は計算の出来ないゴブリンが買い物をするのはもの凄く大変だった。
銅貨、銀貨の事が理解できなかったからだ。
俺は考えた、ゴブリンがどうすれば買い物が出来るのか、そして閃いてしまった。俺って天才って思ってしまったよ。へへ。
屋台で売る物の金額を店の前に表示する事にしたんだ、それも本物の銅貨を出しておくんだ。
その銅貨の数だけおけば計算の出来ない者達でも買う事が出来るのだ。
例えば、牛の串焼き銅貨4枚だとすると串焼きの前に銅貨を4枚置いておく。
計算の出来ないゴブリンたちでも形の同じ銅貨を見本銅貨の前に並べるとあら~不思議お金が払えましたーとなるんだ。
最初は人間たちの屋台もあまりいい顔はしていなかった。ゴブリンに物を売ること自体躊躇していたんだ。それを慣れるまで俺が(実はレイン)店に保証したんだ。ゴブリンに物を買う品物の説明をする事、値上げはしない事、まぁ大変だったよ。まだ成人したての俺が倍以上年の離れたの大人たちを説得すんだからな(レインが説得をした)
ゴブリンたちは今では銅貨を握りしめて買い物に来ている。串焼きがもの凄くおいしかったようだ。
村には串焼き屋が4軒になった。
ゴブリンたちは焼いた肉のおいしさが分かったのだ。そして塩やたれのおいしさも理解してしまった。
そうなるともう味のしない肉など食べる気にもならなくなってしまった。
ゴブリンたちも見様見真似で料理をしているが、やはりプロの店には敵わない、屋台の串焼きが味付けもゴブリン好みにしているのである。
ゴブリンたちの作るまずい料理を食べるよりおいしい屋台の肉とパンを買って食べる方が楽しく幸せであった。
これは村の経済に影響を与えた。人の村では自分たちで毎日料理をして食事をする。ところがゴブリンたちは自分たちで料理をしないのである。
屋台で物を買い食べる。これが村の経済にいい影響を与えている。金が循環しているのだ。
ゴブリンたちは畑で作物、薬草をつくっている、それを村から賃金を貰い物を買っている。
そして村の中の屋台で使うのだ。
広場では食べ物屋が多くありアクセサリー、布などの小物屋、雑貨やがあるのだがいまいちパッとしていなかった。それを俺が1体のゴブリンにリボンを買ってやった。
オシャレを教えてやったのが俺なのだ。(実はレインに言われてやった)
女の子のゴブリンはもうそれは大喜びだった。ほかのゴブリンに自慢したのだろう。
その小物屋はゴブリンで溢れかえっていた。
それからは支給しているゴブリンの洋服にワンポイントでリボンを付けたり、色々とアクセントをつけるゴブリンたちが増えていった。
毎日の食事に困らなければオシャレに目が行くのは人でも魔物でも同じなのだと俺は思った。
実を言うと俺も少しオシャレをするようになっていた。
今までの洋服から皮の鎧にしたんだ。剣も持って、見た目は冒険者の様になったんだ。
俺ってかっこいいなーーー。
毎日自分の姿の見惚れてしまっている。でへへ。
あっそうだ俺の相棒も元大鷲君だがオズと言う名を付けた番の大鷲もメズとして一緒に空を毎日飛んでいる。
あっ遊びじゃないぞ、仕事でだぞ。トリスタンの領主館に報告・連絡・相談で毎日通っているんだ。
報告書はもの凄く大変だ。毎日報告書を作成するのは無理とレインに伝えたら俺に部下が出来た。
俺に部下だよ、信じられる。自分でも信じられないよ。
偶々空を飛んでいるドラゴンを見てレインに声を掛けただけの俺が、今では村長だぞ。ありえないだろう。
俺の村では毎日トラブルが発生している。やはりゴブリンを軽視する人が多いせいだ。村人はゴブリンになれて仲良くしているが外から来た商人や観光でトリスタンから来た者達は攻撃しないゴブリンにべたべた勝手に触ったりするんだ。
毎日作業しているゴブリンたちの仕事の邪魔をしているんだな。本人たちは邪魔をしている意識自体がないので困っている。注意すれば理解してもらえるのが、これが数が多い事多い事もう大変なんだ。
まぁでも俺には優秀な部下がいるからな。その仕事は部下に任せることにした。もの凄く嫌な顔をされたのだが気にしない事にしている。
あっそうだ今日はレインの父君であるアレクス・オリオン様がこの村に視察に訪れる日だった。
これは一昨日突然レインから伝えられたんだ。レインは「あっそうだ、明後日父上が来るから宜しくね」だぞ。それだけだぞ。俺はその事を部下に伝えたらもう大変だった。
部下に怒られ、村人に怒られ、トリスタンの元自治領主にまで怒られた。
何でかレインの父君は超有名人で皆から恐れられる怖い人なんだと言われた。
人は見ただけで漏らし、魔物は逃げていくようだ。どんな怪物なんだ。全然想像がつかない、ドラゴンのような姿をしているのかと聞いたら鼻で笑われた。「フン、バカ人間だ」
俺は広場で部下と一緒に待っている。
すると遠くから空飛ぶ戦艦が見えた。
大きい、あんな大型艦は初めて見る。もの凄く大きい。
段々と近づいてくるとその大きさが改めて分かる。100メートル以上はある。
「あっレインだ。」
大型艦と一緒にグリが飛んでいる。レインの相棒だ。
大型艦から落ちた人が見える。「あっ拙い人が落ちた。」
違った。
レインの父君であるアレクス・オリオン様が飛び降りただけだった。
俺の慌てる姿を上空から見ていたレインの父君に笑われてしまった。
「お前いいやつだな」と笑いながら頭をなでられた。
レインがアレクス様に色々と説明をしていく、俺は黙って後ろを付いていくだけだ。それがもの凄く気疲れする。
「レイン凄いなゴブリンが買い物しているぞ。」
「父上、あれは今流行りのゴブリン焼きです。」
「ゴブリン焼き、」
「普通は塩やたれの一つしか味があるませんが、このゴブリン焼きでは2つの味があります肉をふたきれにして塩とたれ、甘だれとピリ辛だれなど選べるようにしているんです。」
「ほーっ、それは凄いなそれを考えたのは屋台の者達か。」
「そうです、あの屋台のおじさんが考え広がりました。」
レインの指差す屋台にアレクは向かっていく。
「オヤジ、ゴブリン焼きを塩とたれで10本だ。」
「へい。」
アレクはゴブリン焼きを食べて感心する。美味い。
「オヤジはこの村に住んで居るのか。」
「へい、人間地区に住んでおります。」
「皆が笑顔でいい村だな。」
「へい、人よりゴブリンの方が金遣いが荒いので儲かっています。」
「アハハハ、そうかそうかゴブリンは金遣いが荒いか。」
「ゴブリンたちは料理をしませんから、屋台の物を買っていきます。」
「よしオヤジ、今日は私がすべての金を出す。好きなだけゴブリンたちに食べさせてやれ。ほかの屋台の同じだ今日は全ての食べ物を無料に城、酒も出せ好きなだけ食べろ飲めー。」
「「「「「「おおおおーーーーー」」」」」
この日、ゴブリンは初めて二日酔いを経験することなった。