461話
落下した大鷲は瀕死の重傷であった。大きな羽は折れてしまっている。此の侭ならば他の魔物の餌となるだろう。
シロとグリが大鷲の近くに降りると、大鷲は鋭い目で威嚇している。
グリから飛び降りたレインは駆け足で大鷲のもとへと行く。威嚇する大鷲であるが、レインが近付くと逃げようと折れた羽をばたつかしている。
「大丈夫だよ、痛い思いさせてごめんね。」
レインは大鷲に抱き着く。今まで威嚇していた大鷲はレインが抱き着くと段々と大人しくなっていく。
そこでレインは大鷲にスキル玉を口の中に放り込む。「パクッ」
すると大鷲の傷ついた体が再生されていく。
驚く大鷲。
「あっ、大鷲の驚く顔って初めて見たー。」
レインが何ともしまらない事を言っている。
レインは大鷲の傷が治りると「じゃぁここでご飯にしようーー。」
マジックバックから色々な食べ物を出していく。大鷲にはオークの肉、グリとドラゴンも同じである。
「トム、大鷲にご飯を持っていきなよ。」
「え、うん。」
トムは大きな肉の塊を怖がりながら大鷲のもとへ持っていく。
「ここれ食べて元気になってね。」
大鷲は嬉しそうに肉をパクつく。
トムは大鷲が死ななかったことが嬉しかった。
初めて見る魔物の戦い。グリフォンと大鷲の戦いはトムの中で必死に縄張りを守る大鷲がかっこよく映っていた。
グリフォンには負けたが大鷲は決して弱い魔物ではない。この地の弱肉強食の中の頂点に君臨しているのである。鋭い爪と飛行能力でビックベアなどの一撃である。この大鷲は全長5メートルもあり、羽を広げた横幅は8メートルものになる普通の大鷲より一回り大きなものであった。
パクつく大鷲にレインは
「ねぇー、大鷲君お願いがあるんだけどさー、ここにいるトムと友達になってくれないかな。」
大鷲はレインとトムを交互に見る。
「きぃーーーぃ」
嬉しそうに羽をばたつかせる大鷲。
もの凄い風が二人を襲う。レインとトムは大鷲の起こす風で吹っ飛んでしまった。
でもなぜか笑っている二人である。風で飛ばされた事が面白かったのだ。
トムはもう一回ともう一回とお願いしている。大鷲は喜んだことが嬉しかったのかトムの要望をかなえてやっている。
トムは風によって浮く感じが忘れられないだ。ふわっとする感じが大好きなのであった。
「凄い凄いすごーーーい。」
跳び跳ねて喜ぶトム。
「大鷲君、トムを乗せて飛べる?」
「きぃっ。」(いいよ)
トムは大喜びで大鷲君の背中に乗っかる。
「うわぁふわふわだー。」
大鷲は羽を広げ空へと舞い上がる。
大鷲君が空で飛び回っていると仲間であろう大鷲たちが大鷲君の周りに飛んできたのだ。最初はビックりしたトムであったが、すぐに慣れてみんなで楽しそうに飛び回っている。
「あははー、楽しかったー。」
「よかったねー。」
大鷲君の仲間であろう3羽の大鷲たちもレインたちの前に降りてきていた。
レインは3羽の大鷲たちにも肉を与えている。
嬉しそうに食べる大鷲たち。
レインは考えていた。この大鷲はかなり速く飛べる、流石にドラゴンには敵わないがグリフォンより高速で飛ぶことが出来る。
レインは魔物と友達になる事は出来るがティムをしたことがない。
「んーーーー、そうだ。トムー。大鷲君に魔力を食べさせてみて。」
「魔力ってなんだ??」
「えーーー魔力知らないのー。」
「知らないよ。」
レインはトムに魔力の説明をする。そこでレインは気づいたもしトムが空から落ちたら死ぬ事を気づいてしまったのだ。
「トム、これあげる。」
レインはトムにスキル玉を渡したのだ。
「なんだこれ飴玉か。」
トムは躊躇なくスキル玉を口の中に入れる。するとトムの体が淡い光に包み込まれる。
「なななんだこれ。」
レインはスキル玉の事をトムに説明する。
「先に言えよー死んだらどうすんだ。」
レインの渡したスキル玉は能力向上のスキル玉である。
「トム、今から魔力を流すからね。」
レインはトムと手を繋ぎ魔力をトムへと流す。能力の向上したトムは魔力を感じることができた。
「これが魔力。」
「そうだよ魔力だよ、魔力があれば魔物とも戦えるし友達にもなれるよ。」
レインはトムと協力して魔力を玉にして大鷲君の口に近づける。
大鷲君は嬉しそうにパクっと食べる。するとトムと大鷲君の間で一本に糸の様に魔力が繋がる。
トムは不思議な感じになっていた。大鷲君の感情が分かるのだ。人の様に言葉ではないが嬉しい、悲しい、欲しい、いやなど単純だが気持ちが伝わってくる。
「おお俺と一緒にいてくれるかな。ここじゃない場所だけど一緒に行ってくれるかな。」
真剣な眼差しで訴えるトム、見つめ返す大鷲君。
すると嬉しそうに大鷲君は羽をバタつかせる。「きぃーぃ」
「ありがとうね。」
「レインこの場所に大鷲君の縄張りだよね。他の大鷲で守れるのかなー」
すると大鷲君も悲しそうな表情になっている。
「あっそうだ。」
レインは大鷲君と他3羽にスキル玉を食べさせる。
「これを食べてねー、」
レインは大鷲たちが風魔法を使う事を分かっていた。あれほどの大きな体である。風の魔法が無ければ浮くことも出来ないだろう。
レインが与えた物は能力向上とウインドカッターの攻撃魔法である。大鷲は風魔法は使えるが飛行能力にしか使っていない。攻撃用の風魔法を知らないのである。そこでレインはスキル玉を与え覚えさせたのであった。ついでに能力向上で底上げである。
大鷲たちは力が体の中から湧き上ってくるのが分かる。
「「「「きぇーーーーーーーーーっ」」」」
「よし、大鷲君ウインドカッターだ。あの木に放ってみて。」
「きえー。」シュッ。 スパーン。
「スゲー、すげー、すげー。」
すげーしか言わないトムである。
「他のみんなもやってみて。」
「「「きぇー」」」
スパ、スパ、スパ。
「すげー、スゲー、スゲー。」
「これならこの縄張りを守っていけるね。」
レインはこれで問題が無くなったと思い。大鷲君と帰ろうとしていた。
「大鷲たちも元気でねまた来るからねーー。」
シロとグリがレインと飛び立つと大鷲君もトムを乗せて飛び立った。すると3羽の内1羽が大鷲君についてくるのだ。
「あれーーー?」
「レイン、大鷲の番みたいだ、大鷲がそう言っているよ。」
「そうなんだなら一緒にいないとダメだね。」
残る2羽の大鷲たちは縄張りは任せろというように「きえーーーーっ」「きぃーーーー。」と鳴いている。
シロ、グリ、大鷲君、大鷲は遊びながらトリスタン自治領へと向かった。
飛びながらトムは大鷲君って名前はないよなーっと思っていた。