46話 砂糖の魅力
アレクは、中型飛行旅客船2隻、大型飛行輸送船2隻をオリオン航空に納品した。
「ふーーっ、やっと終わった。」
「さあ、これから、何しようかな。」
「師匠、仕事ですよ。」
「今、仕事終わったばかりだよ。」
「他の仕事が待っています。」
アレクは、空を見上げ、「あっ、」と声を上げた。マックは、一瞬空を見た。雲しかなかった。
視線を戻すと、アレクはいなくなっていた。
アレクは、街中を歩いている。
山間にあるアレク領だ。アレク領は、発展をしていた。迷宮が2つあり、北部トンネル、南部トンネルを繋ぐ都市になっていた。街には冒険者、商人、領民で溢れている。
物価も安い、給料は高い、アレク領は儲かっているのだ。
気分のいいアレク。商人に声をかける。
「あの、何を売っているんですか。」
「あっ、これか。これは南部でとれたサトウキビだよ。」
「それ、加工しないと売れないよ。」
「えっ、そうなのかい。」
「うん、砂糖の原料だからね。」
この商人、初めて商売をするためにアレク領に来ていた。
カイン領に難民として逃げてきたが、金を稼がなくては生きていけない。そこで、サトウキビが売れると聞いたので、そのまま持ってきたのだ。
アレクは砂糖が売れることを知っている。
商人に砂糖の加工方法を教えた。ところが商人は、困った顔をしている。
よく聞くと、もう資金が無いようだ。
なら、共同で商売をしようと話をする。
「じゃぁ、行こうか。」
「何処にいくんですかい。」
「大丈夫だよついてきてよ。」
着いたのはアレク領の領主館だ。商人はびっくりしている。相手が領主とは思っていなかったのだ。
アレクはユリに、砂糖の商売の話をする。
「サトウキビをそのままうちに持ち込んだら、費用面でダメでしょう。」
「加工はカイン領で行ない、砂糖をアレク領に持ってくる。よし、これで行こう。」
アレクはユリにカイン領に行く事を告げて、商人とガレオン号でカイン領に向かった。
「そういえば、商人さんの名前を聞いてなかったよ。」
「そうでした。領主様、私は犬族のガッシュと申します。よろしくお願いいたします。」
「僕のことはアレクでいいよ。」
カイン領に着くと、アレクはカインに会いに行く。
「カイン兄、お願いがあるんだ。」
「アレク、突然だな。」
「カイン領に砂糖工場を造りたいんだ。土地を売ってほしい。」
アレクは、カインに事の経緯を説明する。
「そうか、ガッシュはうちの領民か。」
「僕と共同で、砂糖工場をカイン領で作ってうちの領地と他に売るんだ。」
それから、話はとんとん拍子に進む。ガッシュは唖然としているが。
工場の場所も決まり、アレクは工場を建てていく。
「ガッシュさん、工場建てたら圧縮機を造るから、その間に人を雇っておいてね。」
「はい、分かりました。」
「ガッシュさんが、ガッシュ商会の会頭なんだから偉そうにしてないと。」
アレク、にこやかに告げる。ガッシュ、顔がひきつる。(引きつって戻らない)
ガッシュは、仕事の少ない女性と子供に声をかけ人を集める。
サトウキビは大森林に生えているが、生産をする様にと指導され、畑を作り農作業も一貫して行うことになっているのだ。
アレクは作業員を集め、一気に工事を行っていく。アレクは張り切っていた。
カイン領が砂糖の一大生産地になるのだ。砂糖は高額で売れる、特にローエム王国と周辺国に。
カインも協力していた。自分の領のことだしアレクが絡んでいるからだ。
サトウキビが育つまでは、大森林で採ってこなければならない。カインは訓練を兼ねて、一番になった小隊に、賞金を渡して競わせたのだ。
アレクは、大工場を建てた。
「圧縮の前に、ローラーで絞んないといけないか。」
「自動で出来るようにしたいな。」色々とぶつぶつ言いながら、作成していくアレク。全自動はダメだな、人を雇わないといけないし。ぶつぶつ・・・・・・
「取りあえずは、これでいいか。後は改良すればいいしね。」
「ガッシュ会頭、会頭ぉぉぉ。できたよーー」
「出来ましたか。ありがとうございます。」
「じゃぁ、早速テストしてみようか。」
「こうやってローラーで潰して、圧縮してこのしぼり汁を・・・・・・・・・・」
「ほう、これが砂糖ですか。」
「精製してないから白くないけど、とりあえずはこれで行こう。」
そこには黒砂糖が出来上がっていた。「あまぁ「」あまい」「おいしい」「・・・・」
女性、子供たちが大喜びだ。甘いものに飢えているのだろう。
そこに、人が集まってきてしまった。
筋肉ムキムキな男たちだ。暑苦しい。
砂糖を舐めて、暑苦しい男達がおいしそうに指を舐めている。
カインはこれは行ける、工場は大成功するだろうと確信する。カインは疑ってはいなかった。アレクがやるのだから大丈夫とは思っている。だが目の前で領民がぺろぺろやっているのを見るのと、話で納得するのとは訳が違うのだ。
妙な納得をするカインであった。
「カイン兄、これでケーキ屋、甘味処とかカイン領に出来るかもね。」
「おぉ、そうだよな、領内で使えるよな。そのままで売れそうだけどな。」
「ガッシュ、緊急で困ったことがあればカイン兄に伝えて。僕にはカイン兄なら連絡とれるからね。」
「了解しました。問題が出ましたら、ご相談いたします。アレク様。」
アレクは甘味処が出来るように、ガッシュに指示をだす。女性で料理の出来る人にやらせるようだ。
カイン領での店が軌道に乗ったら、アレク領に出店させるのだ。
砂糖だけより、付加価値が付くので儲かるのだ。ガッシュと二人で儲かった想像をしていた。
ウハウハと、変な笑い声が聞こえたが気のせいでしょう。…多分。
周りの集まった人たちに砂糖を使い、ケーキ、クッキー、プリン等をふるまっていった。
作り方も教えて、領民、大興奮。次々と押し寄せる領民、作り続けるガッシュ商会の人々、1人1口との規制がカインより通達されたのは、日も暮れたころであった。
それでも収まらず、普通の料理と酒で大宴会に発展し、夜通し騒いでいた。
獣人とドワーフ、恐るべしだった。あとの人は、帰宅していた。