436話 戦争反対
「大分大事になってしまったな。」
「アレク様、それは仕方のない事です。オリオンの関係者であり、タンドラ大陸元ルガー王国の王子、そしてフロンティア大陸ルガー王国の王ですから。」
「そうだよなー、今どこが有力だ。」
「ローエム帝国の皇帝の妹が最有力です。後は各国の王族たちから見合いの話が来ています。」
「ローエム帝国かマリウスも必死だな。ローエム帝国以外だとどうだ。」
「そうですね、あまり勧められません。」
「その国が力をつけるからか。」
「さようです、もしレリウス王に嫁いだ国は他の国よりかなり有利になります。これはファーレス様、レイン様も同様です。」
アレクには影響力がある。世界中のどの国よりも影響力がある。今アレクの子であるレリウス、ファーレス、オスカー、レインは注目の的となっていた。
オリオン王国のルドルフの子供より価値は高いと各国の値踏みである。
「いっそ本人に選ばそうか。」
「アレク様、それは今更でしょう。結婚しろと言ったのはアレク様ですよ。」
「そうなんだが、ここまで大事になるとは思ってもいなかったのだ。」
「ハーーーー、認識不足ですな。」
アレクはミルに丸投げする事にした。丸投げされたミルは嬉しそうにしていた。
ミルはこれから各国を飛び回る事となる。先ずはレリウスに好みを聞き候補を絞る事にした。同時に他の子供たちにも結婚の打診をしているようだ。
丸投げしたアレクはまたフロンティア大陸へと戻りオリオン王国に従わない国々を潰す算段をしていた。
「アレク、これ本気か。」
「カイン兄、本気ですよ。」
「マジか、俺は戦闘は好きだが弱い者いじめは好かん。」
「・・・・・・」
「アレク、何故そう急ぐんだ。このフロンティア大陸の南部の国は戦争を仕掛けてきたわけじゃないだろう。」
「カイン兄、以前にも話しましたが今世界中の人口は10億人です。それもあと10年で20億人となります。今の食料事情で行くと10年後は大飢饉となります。オリオン王国連合は生きながらえるでしょうが他の国々は滅びます。今纏めないと手遅れになるんですよ。」
「仕方ないのか。俺はよくわからんがアレクがそう予測するのならそうなんだろうな。でもなるべく死人の出ないようにしてくれよ。」
「なるべく死なないようにするつもりです。」
この惑星アースでは今オリオン王国が一番発展している。
それはアレクの影響であるが、オリオン王国関係では子供の死亡率が以前は子供の半分が死亡していたが今では5%まで下がっている。各家庭の子供の数は3.5人である。以前の死亡率の意識がぬけていないために子供を4人程度設ける家庭が多いのである。それと寿命の延びがかなり影響している。平均寿命50歳が今では90にまで急激な伸びをしている。統計を取ってまだ十数年であるが信頼できる数字となっている。
他の国はもっと多くの子が生まれている。1家庭7,8人はざらである。
娯楽が少ない事もかなり影響しているとアレクは思っている。夜は長い、暇なのだ。
アレクは完全な武力行使を諦めた。
カイン迄もが反対しているのである。他の者達から見れば理由のない戦争に見えているのである。
オリオン王国がただ侵略するように映って見えるのは仕方のない事であった。
「アーサー、フロンティア大陸でオリオンに敵対する国の中で特に反対している者をリストアップしてくれ。」
「はい、すぐにリストに致します。」
後日、アレクはリストアップされた資料を眺めている。
各国の中でオリオン王国連合に完全に敵対する姿勢を見せているのはルシア王国他2か国である。これはフロンティア大陸の中で、ある程度の力を持っている国である。
この国は今なにも困っていないのだ。食料問題、人口問題も何も困っていない国なのである。10年後は世界中で食料危機が起こると伝えても聞く耳を持っていないのである。
食料危機が起こると言っても10年後と言われると今すぐに行動する者はまずいないであろう。
アレクは一人考えていた。マリア、イリアたちは統計を取り理解してくれている。ルドルフもある程度理解してくれた。レオンは完全に反対の立場である。カインはアレクよりである。
兄弟でもこのありさまである。他の国の高官たちが理解する事はないだろう。
「タンドラ大陸機構が出来た事が奇跡みたいなものなのだな。」
アレクはこのフロンティア大陸でもタンドラ大陸機構と同じものを作ろうとしていた。各国が協力して大陸の運営を行う。タンドラ大陸ではコルンという英雄の子孫がいたことが成功の元となっている。反コルンと親コルンで二つに分かれたことで敵と味方が分かり役立ったのである。
では今のフロンティア大陸はどうであろう。オリオン勢力と他である。完全な敵対をする気が無いのである。もちろん侵略などをすれば戦うであろうが出来れば戦争などしたく無いのだ。当たり前のことだが戦争には金がかかるのである。
アレクは一人でルシア王国へ入った。
ルシアの町を観光しながら考えている。街は活気に溢れ、人々が行き来している。いい国である。
これをアレクは戦争を仕掛けようとしているのだ。完全な悪者の気分である。
まぁアレクが今回は悪者である事は間違いはない。
今の状況で10年後の事を語っても誰も信じないのだ。ただの侵略行為としかみられないのである。
街を歩きながら、このままでいくなら10年後はオリオンの一人勝ちになる。広大な耕作地帯を持つオリオン王国が各国の食料を支配する事になるのである。オリオン王国はオリオン銀行券として紙幣も世界中の通貨として使用している。世界経済を牛耳っているのである。それと食料迄オリオンが支配してしまう事にアレクはかなりの危うさを持っている。各国が自国の食料を自給自足できるようにしなければ各国はいずれは滅んでしまうだろう。
各国は人口の統計など取っていないのだ。自国の人口がどれだけ増えている事事態把握していない。
オリオンの恩恵で死亡率が著しく低下している。寿命も延びている。娯楽が少ないためにそして夜は暇なのである。夫婦は夜の営みに励んでしまうのである。
今の人たちは家族が増え、収入も増えて幸せを満喫している。働けば金が入り、いい生活が出来る。それは間違ってはいない。だがそれが永遠に続くと思っていることが間違っているのである。
一番早く問題が出てくるのがオリオン王国であるが、アレクの迷宮がある為にオリオンでは問題にはならないのである。
超大国であるローエム帝国が人口増加に伴い世界中の食料を買いあさった時に問題が表面化するのだ。ローエム帝国につられて世界の国々が騒ぎ出すのであろう。
それ程急激に人口が増えているのである。