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430話

アレクはコリ国の隣にあるゲルト王国、コリ国を挟みサウジ王国の反対側の国へ来ていた。


アレクは、コリ国から飛び出しそのままゲルト王国までやってきていた。

このゲルト王国は海があり港がある。そのために交易も栄え人口も多い。


「ここが王都か、コリ国とは全然違うなー。」


アレクはこのところ独り言が多くなってきている。ふらふらと一人旅をしていると独り言が多くなるようである。



また近くにいた者に聞こえていたようだ。


「お兄さん、他の国から来たの。」

キョロキョロするアレク、誰もいない。

「お兄さん、下見て下見て。」

アレクは下を見ると、くりくりお目目のかわいい子がニコニコしている。

「ごめんごめん、分からなかったよ。」

「いいのいいの私まだ子供で小さいからね。」

「お嬢ちゃん、外国から来たんだ。お嬢ちゃんはこの王都に住んでるのかい。」

「そうよ、ガイドしてあげようか。私詳しいわよ。一日銅貨3枚でいいわ。」


アレクは一瞬悩むが、少女を見ると繕った洋服を小奇麗にしている。普段からガイドをしているのだろう。ぼろい服だが精一杯身だしなみを整えているのが分かる。


「それじゃぁ、お願いしようかな。」

「うん、任せて。あっ私はアリスよ、お兄さんは?」

「私はアレクだ、宜しくな。」

「それでどこに行きたいの?」

「まずは食事かな、美味しい所に案内をたのむよ。」


アリスはアレクと手を繋ぎ引っ張っていく。


アリスに連れられてきた店は大衆食堂のようなところであった。


「こんにちはーー、お客様を連れてきました。お一人様です。」

「あーー、アリスちゃん、いつもありがとうね。」

店の人だろう、恰幅のよいおばちゃんが優しそうにアリスの頭をなでている。


アリスも嬉しそうに笑っている。「へへへ」


「お兄さん、ここに座ってね。」

アリスに勧められた席へ座りメニューをみる。「へー、色々種類があるんだな。」

「そうよここは物凄く美味しいのよ。ぐぅーーーっ。」

アリスの顔が真っ赤になってしまっている。


「アリスも何か食べるか、一人だと味気ないからな、気にせず好きなものを食べていいぞ。」

「えっいいの?」

「あぁ、好きなものを食べていいぞ。女将さんかなこの子にも好きなものを食べさせてね。私にはこの店のおすすめをお願いしよう。」

「はーい。」おばちゃんはもの凄いいい笑顔で答えていた。


アレクは料理が来るまでにアリスの話を聞いていた。


アリスは20人ほどの子供たちと一緒に生活をしているという。皆、親なしである。

理由は様々で、死に別れ、捨てられた子など色々である。アリスは死に別れであった。


この王都で孤児の一人が同じ孤児たちを纏め始めたのだという。アリスも中に加わりそれからは出来る仕事をしてみんな助け合いながら生活をしているという。


「へーー、凄いな。」

「でしょう、ラフルは凄いのよ。」

「よし、ならばここのご飯をお土産に持っていけ、女将さん20人前ほど弁当を作ってくれ。」

「はーーい。分かりました。」

アリスとアレクの話を聞いていたのだろう。すぐに返事が返ってくる。


この食堂のご飯は美味かった。


「美味いな。」

「そうでしょう、美味しいのよ。」


アレクはここで疑問に思ってしまった。こんなに料理の腕があって美味しいのに客がいないのだ。


アリスはアレクの疑問顔で内容が分かったのだろう。

「此処ね、嫌がらせに遭っているのよ。だからお客さんが来ないの。」


少し悲しい表情になるアリス。そこにお約束のようにチンピラ風の男達がどかどかと店の中に入ってくる。


「おーーー、酒だ、酒もってこい。エール1杯だぞ。」

「早くしろーー、愚図。」

「早くしろーーー、」


この男たちが店に入ると周りの迷惑を考えずに騒ぎ出す。

10人ほどの集団でエール1杯。これば嫌がらせかとアレクは納得する。

アリスが小声で教えてくれた。エール1杯で居座っているのだという。



「おーーーー、孤児の餓鬼じゃねえか。」

「・・・・・・」

「ガキぃー、早く店から出ろ。ここは俺たちがいるんだ邪魔だ。」

「・・・・・・・」

そこに女将さんが飛び出してくる。「あんたらは客じゃないよ。毎日毎日エール1杯で居座って帰って頂戴。」

「俺たちは客だぞ。エール1杯でもきちんと毎日金は払っているんだ。」

女将さんは悔しそうな表情をしている。


この店、地上げに遭っているのである。この周辺を新たに開発をして儲けようとしている者が有り、安く買い取ろうとしているのである。


此処で、チンピラ風の男がアリスではなくアレクに声を掛けてしまった。

アレクは黙っているつもりでいた。他国の民の事であり、関わりになりたくなかったのだ。だがチンピラ風の男には運がなかったのだろう。

アレクの見た目も有るのだが、20代に見える姿と丸腰である。そのためにアレクを舐めてしまっていたのだ。男はアレクを肩を押す様に突き飛ばそうとした。

「おーーお前もどこかいけー。」


男がアレクに触れた瞬間男が固まったまま動かなくなっていた。


少しすると廻りの者達も異変に気付いていく。


「おいどうした、こんな男はすぐ追い出せ。」

「おい、」


固まっている男はビクともしない。


アレクが固まっている男に話しかける。

「お前に質問がある。正直に答えればお前は生かしてやる。」

アレクはその男の方に手をやると男は動くことが出来るようになっていた。


「何故この店で嫌がらせをしている。」

「・・・・・・・」


「おおおーーー、このガキ何を言っているんだ。俺たちは客だぞー。」

「お前には聞いていない。黙っていろ。」

アレクが喋っていた男を睨むとその男は固まってしまった。ついでにすべての男たちを動けなくしたのである。


「もう邪魔は入らない、答えてもらえるかな。」

質問された男は恐怖で動けなくなっていた。チンピラは時に凄い能力を持っている。強い者が瞬時に分かるのだ。逆らってはいけないと。


アレクは地上げの嫌がらせだと説明をされる。


心配そうにアレクを見ているアリスと女将さん。


アレクはその男に指示を出した者を呼ぶように伝える。


「い、いえ、相手は男爵様です。おお俺は話したことも有りません。」

「ならばその馬鹿男爵と話せる者に伝えろ。ここで待っているとな。速く行け。」

アレクはその男を蹴飛ばし店の外に放り出してしまった。


「女将さん、地上げはこの一帯で行われているのかい。」

「は、はいそうです。みんな困っています。ですが半分はもう耐えれなくて手放してしまっています。」

「そうかならば地上げに反対の者達を呼んできてくれ、私が解決しよう。」



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