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426話

「あれ?ここは何処だ、俺は城で殺されたはずだが。」


「やっと気づいたな。お前丸一日寝てたぞ。」


「あああなたは俺を殺した・・・・」


「あぁお前を殺したアレクだ。」


「ん、俺は生きている。」


そうアレクは、サウジ王国の広間で殺したように見せかけただけであった。


「サウジ王国の人間としては死んでいるな。これからは新しい、そうだなネオス・サージニアと名を与えよう。」

「ネオス・サージニアですか。」

「そうだ以前の爵位は何だったのだ。」

「子爵です。」

「ならばSEオリオン王国の子爵位を与える。領地もフロンティア大陸内で与えよう。そしてお前の役目だが、新サウジ王国を影ながら助けよ。お前ならば民の事も考え女王を助ける事が出来よう。」

「な何故、俺なのですか。」

「ん、たまたまだ。」

「・・・・・」

「いや、それ酷くないですか。」

「まぁそうだが、仕方あるまい。サウジ王国はこれから大変だぞ。外からの助けが有ると無いでは大きく違ってくる。」


このネオス・サージニア子爵は後にサウジ王国の影の支配者と言われるまでになる。元々はサウジ王国内で兵站担当であったことで戦闘には参加していなかったのだ。そのために生き恥とののしられサウジ王国では肩身の狭い思いをしていた。

丁度タイミングよく、アレクがたまたまこの男を殺したことで、未来が開けたのであった。


「まぁ、大変だが民の為、領民の為に頑張ってくれ。」


そう言い残して、アレクはアーサーにあとは任せ去って行ってしまった。


残された、ネオス・サージニア子爵とアーサー。


「ネオス殿、これより手続きを行います。」


淡々と話を進めるアーサー、着いていけないネオスであった。




何だったのだ。俺がSEオリオン王国の貴族だと。俺はサウジ王国でも剣も振れない男で馬鹿にされていたんだぞ。それがサウジ王国を助けよか。


ネオスはここ数日の事を思い出していた。


サウジ王国軍が皆殺しにあい。王女が防壁で敵の侵攻を止めた。


そして俺は城で殺された。


でも死んでいなかった。


何だこりゃ、普通ありえないだろう。ネオスはこの変化についていけていなかった。


「コンコン。」


「はいどうぞ。」

「失礼いたします。ネオス様。お食事の用意が出来ております。」

「分かった。」


ネオスはここ数日アレクの拠点にしている町に滞在している。その館でこれからの領地の勉強をさせられているのである。

今迄のネオスは領地運営をしたことがなかった。領地持ちでは無かったのである。

そのために領地運営の知識がなく、運営が出来ないと判断されたのであった。

だがいざ勉強をしてみると、軍の兵站を担当していた為に数字に強かったのだ。

これは嬉しい誤算であった。ネオスはサウジ王国時代に学んだことが今の時代に合っていないことを理解した。

サウジ王国はかなり時代遅れの国であったことが今ならば分かる。


「そうか、これでサウジの民を助ける事が出来るな。」


ネオスはヒントを貰ったのだ。


「あとは金か、こればかりはどうにもならないな。」




数日後アーサーの案内でネオスの領地を見に行く事となった。

その領地は中程度の町と村が3つある領地であった。SEオリオン王国の子爵位の領地としてはかなり小さい部類であった。


「領民は少ないですが、広さはかなりあります。これからの努力次第で大きく発展するでしょう。」


ネオスは地図を見ながら答える。

「この地図で言うとこの場所ですね。鉱山も有るのですか。」

「あります。各地への交通の要にもなる場所です。」

「それは又、大変な場所を貰いましたね。」

「サウジ王国内で国を出ていく者達が多くいます。それをこの領地で引き取って貰えれば一人に付き金貨1枚を援助しましょう。」

「ほ、本当ですか。それならば開発も出来ます。サウジ王国の負担も少しは軽くなるでしょう。」


今サウジ王国はかなり疲弊している。耕作地の少ないサウジ王国は作物を輸入に頼っている。

これが周辺国からうまく買えていないのが現状であった。周辺国はアレク達の動向を見ている為に物資を売ることを控えている為である。

そのためにサウジ王国は食糧難に陥っていた。アレク達はサウジ王国へ食料支援をしているので足りなくなることはないのだが、民の意識では少し違うようだ。


ネオスはそれから商人を使いサウジの民を呼び集める作業に移っていた。

アレク達も協力して一つの町を建設し、住める状態にまで整えていた。


「これで少しはサウジの民も安心できるでしょう。」

「アーサー様、ありがとうございます。」

「いいえ、これもネオス殿が頑張った結果ですよ。」

「そう言えばサウジ王国の女王は貴族達の指示を取り付けたようですよ。」

「本当ですか、あの貴族達から指示を取り付けるとは女王はやはり凄いな。」



サウジ王国の女王は貴族達からの指示を取り付けていた。これにはサウジの食料事情が大きく絡んでいた。

各領地でも作物の需要が高まり民からの要望が高まり領主たちは困っていた。そこへサウジ王国が大量の食料があると聞いた貴族達は挙って城へ出向いたのである。


渋々従っていた貴族達であるが、民たちを飢えさせてまで対立するつもりはなかった。


サウジの貴族領も領主不在の場所が半分も残っている。王女も空白の領地に代官なりを早急に派遣しなければならず、人材不足であった。

そこへ食料と人事が城へやってきたのだ。

女王は新サウジ王国への忠誠と人材を約束させ、その代りに食料支援を約束したのであった。


これで完全にサウジ王国を掌握した王女は次の手を打っていた。

サウジ王国は農地に不向きな土地である。麦が余り育たない場所であった。

麦がダメならば他の作物を作る事にしたのだ。


以前迄の王女であれば知識がなく思いも付かなかったであろうが、今は機人がいる。聞けば答えてくれるのだ。


サウジ王国は急激な発展をしていく事になる。

安心安全な国つくりである。

自給率100%の国を目標にサウジ王国は農地開発を進める事になっていた。

国民は減り、少し国が荒れてしまったが数年で盛り返せる見通しが出来た事で貴族も民たちもやる気十分になっていた。

だが問題もある。男が異常に少ない国となっていたのだ。


これは戦争で根こそぎ男を戦場に連れて行った事が原因である。こればかりは時間を掛けなければどうにもならなかった。

だがこれも周辺国の男たちがチラホラとサウジ王国へ入ってくるようになっていた。


二男三男の農家の息子などが安く農地を買えるという噂を聞きやってくるようになっていたのである。




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