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422話

フロンティア大陸の大空にドラゴンたちが咆哮を上げながら飛んでいる。

その数、何と20体である。

これほどのドラゴンがこの地にいたのかと空を見上げる人々は驚いている。


このドラゴンたちはアレクが連れてきたドラゴンである。


「ドラゴン騎士の者達よ、諸君たちの最初の重要な任務だ。」


「「「「はっ。」」」」


アレクがある少年をドラゴン騎士にしたことが始まりであった。このドラゴン騎士、ワイバーン隊から選別したこのドラゴン騎士は気難しいドラゴンに気に入られなければならなかった。

ある者は物で釣ろうとし、またある者は調教しようとしたり色々であったが、いずれも無駄な努力であった。単純にドラゴンが気に入るかだけであった。


この者達、ドラゴンが好き過ぎて寝食を共にするほどであった。ドラゴンもそんな者達の気持ちが分かるのかそういう者達になついていった。


「お前たちはドラゴン騎士だ。このフロンティア大陸で最強のドラゴンに乗る事が許された選ばれた者だ。・・・・・・」


アレクの演説が終わると、ドラゴン騎士たちは飛び立っていった。

各国の王へ親書を届ける役目を担っているのである。この親書、少々過激な文章であった。

アレクは各国に従うか、反抗するのかを選択させるものであった。

普通、各国の王へこんな事は絶対にしない。即戦争になるからである。

だが今回はわざとこの方法をとっていた。

情報の遅いフロンティア大陸でもドラゴンの噂は各国に伝わっている。

聖アース教の布教活動も南下してきている。幾らルドルフが神となっていても末端の信者迄従わせることなど出来るはずもなかった。聖アース教の信者(狂信者)が増える前にドラゴンで脅すことにしたのである。



ある国


大空に巨大なドラゴンが王都を低空で旋回している。王都の民たちはドラゴンの噂を聞いていたために恐怖はあったが興味の方が勝ちドラゴンを見上げている。ドラゴンも王都の民に攻撃を仕掛けるような事はしていない。

だが、王都を守る守備隊はそうはいっていられない。無断で侵入してきたドラゴンへ弓を放ち、追ってきている。ドラゴンの空を飛ぶスピードと馬で追いかけるスピードでは10倍も違っていた。守備隊は大混乱になっていたのだ。


2,3周したドラゴンは王都の城へゆっくりと降下していった。


城の広場へ降りたドラゴンは、多くの騎士に囲まれていた。


ドラゴンから飛び降りた一人の騎士が「この国の王へ親書を持ってきた。誰か取り次いでくれ。」


この言葉にドラゴンを取り囲んでいる者達は、全く動こうとはしなかった。

動くことが出来なかったのだ。ドラゴンの放つ威圧により騎士たちは動けなかったのだ。

5分の時間が経ち、一人の騎士がやっと返事をした。

「お、お預かりします。」

「頼む、ここで待つので王の返事を持って来てくれ。」


待つこと1時間。


この場に豪華な鎧を着た壮年の紳士がやってきた。


「貴様がドラゴンの騎士か。」

「はい。そうです。」

「我が国は誰にも屈する事はしない。」

「それが返事でよろしいでしょうか。」


王は、なぜか拍子抜けした表情をしている。


王は死を覚悟してこの場に立っていたのだ。ドラゴンが目の前にいる事で親書の返事をする。これは従わないと返事をする為であった。こんな敵対行為をするのだドラゴンに一瞬で殺される可能性があるのだ。


騎士は王の表情で理解した。


「私は返事をもらってくることが仕事です。この国の者達を殺すことが目的ではありません。ここで従うか、反抗するかの返事で何をするわけでもありません。ですが私が帰り、その後はここが戦場になる事になります。一応お伝えしておきますが。ドラゴン1体でこの王都を一瞬で消滅させることができます。」


王の顔がさらに引きつっている。


ドラゴン騎士は帰ろうとしている。何故か動作がゆっくりとなっている。王が返事を変える事を願っているのだ。

だが王は何も言わなかった。

一国の王が一度吐いた言葉は重かった。それが民を苦しめ、国が滅ぶことであっても王のプライドが言葉を発すことを拒んだのであった。


ドラゴン騎士は搭乗すると

「では最後にもし降伏するのであれば白い旗を揚げてください。降伏した者の命だけは助けるようにいたします。」



騎士は大空へ飛び立っていった。


それを見送る王都騎士たち。重い空気がこの場を支配している。

「陛下、本当に戦うのですか。」

「・・・・・か、会議をする。」


王は城の中に消えて行ってしまった。


残された騎士たちは威圧が解け地面に転がっている。殺される恐怖がまだ完全に抜けていないようだ。


「無理だ、戦う事なんてできない。」

一人の騎士が呟いている。

「無駄死にになる。」

「降伏しよう。」


それは一人の言葉から発せられたものであったが、誰かが言わなければいけない言葉であった。


この国での会議は紛糾した。王は戦争だというが勝てる具体案がないのだ。集まった重鎮たちもドラゴンを見ている。勝てないと感じているのである。

この会議はアレク達が進軍してくるまで続いていた。答えの出ない事を延々と話していたのである。戦う、では勝つ方法は、今考え中を繰り返していたのだ。

民や騎士たちの間では降伏の印の白い旗の作成が行われていた。これは自分たちが助かるための作業であった。もし国が戦う事になっても個人で降伏するつもりで各々が作成しているのである。



数日を要しドラゴン騎士たちはアレクの元へ帰っていた。結果のほとんどが従わないであった。

アレクの予想の範囲であった。


もちろん従う国もいくつかあった。カルメン王国とリシル王国そしてルーデン王国である。このルーデン王国は聖アース教国の南に位置するフロンティア大陸では大国である。聖アース教の信者も多くいるようになり、聖アース教の影響が出ている国であった。


ルーデン王国の王は信者でも何でも無いのだがドラゴンの脅威は分かっていた。大噴火も影響しているのであろう。災害時に援助してもらう事を考え国がそのまま存続できるのであれば従うと答えを出したのである。


アレクはこの答えに少し不満であった。こちらの意図を見抜き対応しているのだ。ルーデン王はかなり要注意人物と思えるのであった。


「厄介だな。聖アースと隣同士か。」

「アレク様、ルーデン王と会談しますか。」

「そうだな各国の総攻撃の前に一度話してみるか。」

「では早速手配いたします。」


アレクは聖アース教は敵でも味方でもない。いや味方である。

聖アース教国の支配者はルドルフであるのだ。だが信者には過激な者達も含まれている。これが味方であるのだが敵に見えてくるのだ。かなり厄介である。

適度な信仰心であれば問題にもならない、だが過激な信仰心は敵よりも厄介である。それを利用しようとする敵がいればかなりの問題である。



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