419話
「アレク様、少し宜しいでしょうか。」
「どうしたアーサー。」
「はい、今の状況をどの様に治めるのか方針だけでもお聞きしたいと思います。」
「今の状況??」
「そうです、フロンティア大陸、アース大陸の火種についてです。」
アーサーはアレクが争いの種をまき散らしているように映っていた。アレクが行く先々で問題が出てくるからである。
フロンティア大陸では聖アース教問題(ルドルフが問題解決に奮闘中)、フロンティア大陸南部の国々のとりまとめ(主にルドルフが担当)、フロンティア大陸でのオリオン王国連合での開発(マリア、イリア担当)、ミント王国主導でフロンティア大陸担当地域の開発(ミント王国担当)、ローエム帝国のフロンティア大陸撤退(各新国王が担当)
アース大陸ではローエム帝国の属国併合(皇帝マリウス)、ノースオリオン王国を主としてローエム帝国以外の国を纏める。(レオン担当)
上記の事にアレクは首を突っ込み丸投げしている、いや丸投げしていないものもあるが完全に人任せである。
「アーサー少し勘違いをしているぞ。」
「勘違いですか。」
「そうだ、私は各問題を丸投げはしていない。対応出来なくなれば私が出る予定だ。」
「物は言いようですな、この色々な問題をアレク様は解決できるというのですか。」
「あぁ出来るぞ。まずは聖アース教の問題はルドルフ兄が神として行動すれば解決する。フロンティア大陸南部のとりまとめは私とカイン兄が出れば問題は無い。うちの開発地域はマリア姉、イリア姉に任せておけば問題にもならないな。ミントの開発も各銀行が主導している、これも問題は無い。ローエム帝国のフロンティア大陸北部からの撤退これは各王が今統治しているのだそちらに任せるしかあるまい。
それからアース大陸か、ローエム帝国の属国の併合はマリウスの意志だ、私は関係ないな、あとはノースオリオン王国の北部統治はこれはレオン兄の手伝いにはいくつもりだ。全く問題は無いな。」
「アレク様、本気で言っていますか。」
「もちろん本気だが何かあるのか。」
「私はアレク様とカイン様の色々な戦の話などを聞いていますが、本当に二人だけで何万もの兵を相手に出来るのでしょうか。」
「あぁ、そういう事か。もちろん出来る。私とカイン兄だけではないぞ。他の兄弟達でも出来ると思うぞ。ただやらないだけだ。カイン兄は戦闘狂だから戦のあるところに自ら行くが、他の兄弟達は行かないだけでやろうと思えばかなりの戦闘能力があるぞ。」
「まことですか、オリオン家とはそれ程の強者の集まりだったのですか。」
「アーサー、オリオン家ではない。オリオン王国に関係する者達はこの世界で一番の戦闘能力を持っているんだ。一番の部隊はカイン兄の獣人部隊だな。」
「私は過去の戦闘記録を拝見しましたがいまだに信じられません。獣人部隊300人で5万の兵に勝ったなど普通ではありませんし、アレク様お一人で何万もの兵を殺したなどありえません。」
「アハハ、まぁ普通は信じられないよな、だが信じるしかあるまい。そうでないとオリオン王国連合がここまで大きくなるはずがないだろう。」
「そうなのですが、一般人には理解できません。」
アーサーはまだ何やら独り言をブツブツと呟いている。魔法、聖アース、神、ドラゴン、などとアレクは聞こえていたが知らん顔をしている。
アレクはアーサーの事を意識の外に出し、これからの事を思っていた。各問題は解決する事は可能であるが(神問題以外)アース大陸北部とフロンティア大陸南部、どちらを先にやるのかを考えていた。
フロンティア大陸南部の各国にはルドルフを始めミント王国などが動いている。
アース大陸ではノースオリオン王国はまだ動き出してはいない。水面下では色々と画策をしているのであろうが表面的には平穏そのものである。
そうなると先に行動するのはフロンティア大陸となる。同時に聖アース教問題も絡んでくることになるのだ。アレクは出来れば聖アース教には関わり合いたくないと思っている。間違って神にでもされたらたまったもんじゃない。
全てをルドルフに任せようとしているのである。
カルメン王国
「陛下、アレク王からの親書はいかがされましたか。」
「ああ、アレク王の事はいい。あの人は別格だ。それよりフロンティア大陸南部の取り纏めにカメルン王国が躍進できそうだ。」
「さようですか、でどのように躍進できるのですか。」
「それはな・・・・・」
リシル王国
「陛下どうしましたご機嫌が斜めですな。」
「フン、アレク王からの親書だ。全くこちらの都合を考えていないな。」
「アレク王ですか、それは仕方がないでしょう。あれ程の力があるのです多少は強引になっても仕方のない事です。」
「それは分かっている、それはいいのだ。だが強引ならばその方がいいのだつけ入るスキの出てくるからな。ところがあのアレク王はこちらの利益も忘れないのだ。強引だけの武人ならばどれだけいいのか。ハーーー。アレク王と交渉などやりたくもないな。しっかりこちらの利益を考えている。交渉するだけこちらが不利になるのだ。丸呑みしたほうが一番利益になるんだぞ。信じられるか。」
「それでも丸呑みはいけません。他の目もありますから。」
「そうなんだ、アレク王の属国などと思われては行かんからな。こちらの体裁も有るからな。反対意見も言わなければな。ハーーー。」
リシル王は今日何度目かのため息を吐いていた。
ルガー王国
「ファーレス、何か寂しくなったな。」
「レリウス兄、仕方ないよ。マリアーヌ姉はまだ近く(ミント王国)にいるじゃないか。」
「そうなんだけど、今ルガー王国に残っているのは俺とファーレスだけだからな。」
今ルガー王国にいるのはこの二人だけである。マリアーヌはミント王国へ嫁いでいった。オスカーはミルトン王国の王となった。マルティナは母に連れていかれてしまった。そしてレインは元グレーリ王国(聖アース教国)の聖地でドラゴンたちのお世話をしている。
レインのお世話は一日一回ドラゴンの様子を見に行くだけの簡単なお仕事であった。余った時間は各地へ遊びに行っていることをレリウスは知らない。(薄々は艦図いているが考えないようにしている。)羨ましくなるからである。
「ルガー王国もかなりに移民が入ってきているから国の体制も改めないとまずいね。」
「そうなんだよな、オスカーの所に兵が行ってしまったからな。」
「そこで考えたんだけど、いまシルバーウルフの軍団が事実上この地域を守っているんだから正式に承認したらどうかな。」
「えっ、シルバーウルフは確かに優秀だけど拙くないか。」
「ほら今ドラゴンが神になっているんだし、便乗してしまえば大丈夫でしょう。」
「そうだよな、あのシルバーウルフは7,8メートルもあるし神に見えない事もないよな。」
「そうだよ、普通のウルフではありえない大きさだからたぶん行けるよ。人との話も理解できるんだから大丈夫だよ。」
「そうなるとレインに一度帰ってきてもらわないと行けなくなるな。」
「そうだねレインなら半日で着くから問題ないでしょう。」
ルガー王国ではシルバーウルフが守り神として崇められるようになっていくかもしれない。




