407話
晴天に恵まれたこの日、オリオン王国王都ではお祭り騒ぎであった。
オリオン王国2代目王であるルドルフ王の即位式典で王都中で振舞い酒が出されたのであった。
酒だけではなく、肉や野菜等多くの食べ物が無料とされ王都中で酔っ払いが闊歩していた。
「陛下、お時間です。」
ルドルフは少しだけ緊張していた。もう王の代理として長く勤めてはいるが、民の前で演説する事はほとんどない。
アース大陸でも超大国の王としてこれからは威厳に満ちた雰囲気を出さねばと数日前から口数も少なくなってきている。
民たちに見えるように設置された王の演説の部隊に上がり来賓の者達が見守る中、オリオン王国とこれからを語ったのである。
ルドルフとしてはもう自分が何を言っているのかが分からなかったが、聞いている者達には無難に演説をこなしているように映っていた。
ルドルフ王の初の演説が終わり、王の横に他の兄弟であるレオン、カイン、アレクス、マリア、イリアが一歩下がった場所に並んでいる。
惑星アースを牛耳っている兄弟姉妹たちである。
来賓として参加している各国の王や重鎮たちはこれでオリオン王国は盤石と受け止めていた。
前王であるハロルドが退位すると伝えられた時各国の王は内戦の二文字が頭をよぎっていた。
ルドルフは長兄であるが、他の兄弟達は独自の軍や力を持っている。国が割れる要素があったのである。
所が全く何の問題もなくルドルフに引き継がれてしまった。
各国はアレクが独立するのではと考えている者が多くいたのであった。
オリオン王国の中でもオリオン王国以上の国力を持つSEオリオン王国である。SEオリオン王国の関係国だけでも十分にオリオン王国連合に対抗できる軍事力を持っているからである。
アレクの考えは全く違う、このアースでの真の支配者はマリアとイリアと考えている。マリア、イリアは王ではない。
だが惑星アースの経済物流を支配している。経済と物流を抑えられている事はオリオン兄弟以外分かっていない。まだそこまでの世界観念が育っていないのである。
後、20年は必要であろう。
来賓とのパーティーでは、各国が先を争ってルドルフ王に挨拶をしている。ルドルフ王と王妃、そして王太子と殿下たちが無表情な笑顔で対応している。段々と笑顔が恐ろしくなってきている。
一方、他の兄弟達は優雅なものである。
「カイン兄、ルドルフ兄は大変そうだね。」
「そうだな、あんなのやりたくないな。ブルブル。」
「そうだカイン兄、レオン兄、我らがルドルフ王に何か特別なものでも送ろうよ。」
「アレク、それは無理だろう。オリオン王国の王であり神に何を送るんだよーーー。」
笑いながらレオンがアレクに質問している。レオンはルドルフの即位が嬉しくて仕方がないのである。ルドルフとレオンは仲がいい。年も近いことも有るが貧乏騎士爵時代をよく知っているからである。
「レオン兄、我らのルドルフ王は神となりましたが、今はフロンティア大陸だけです。そこで聖アース教を広めていきたいと思います。」
「おぉーいいなそれ。兄貴の喜ぶ(苦悩する)姿が見えるようだ。フフフ。」
「ですが宗教の自由は保障しましょう。そうしないと争いの為になりますからね。」
「聖アース教は勧めなくとも広がると思うぞ。」
「カイン兄、そうなんですけど。このまま何もしなければカイン兄は戦神となりますよ。」
「えっ????何だそれ。」
カインはアレクが何を言っているのかが分からなかった。今巷ではルドルフが神となり主神となっている。そこに民たちと神官たちがレオンやカインアレク、マリア、イリアたちを巻き込む動きが出てきているのであった。
カインを戦いの神、レオンを審判の神、マリアを商の神、イリアを豊穣の神、そしてアレクを工技の神と画策しているのである。アレクはいち早く情報を入手していたために今回は止める事が出来た。だがまたいつそんな話が勝手に出てきてもおかしくないのである。それならば自分たちのいいように誘導してしまおうと考えているのである。ここで自分だけ回避しても他の兄弟達の報復で神にされてしまう事は分かり切っている為にカイン達に話しているのである。
「まっマジか。俺が戦神。」
なんだかカインは少し嬉しそうにニヤついている。戦神(闘神)と言われて嬉しいのだ。接近戦ではアレクよりも強いが総合力ではアレクに敵わない事をカインは理解している。今も強くなるために努力もしているし、アレク勝つために新しい技も研究している。
カインはアレクより弱い事が分かっている為に民たちがカインを戦神と言ったことが嬉しいのだ。
「カイン兄、そうなると。ルドルフ兄のようにいつも挨拶される状態ですよ。」
アレクのこの一言がカインを現実に引き戻していた。カインはルドルフの今の姿を見ている。何も喋らず、笑顔で挨拶している。お辞儀をする人形のようである。
「あれはイヤだな。神はいいや、やりたくないな。」
同時にレオンもうなずいている。そこにマリアとイリアも加わり、神は拙いとの結論に達したのは言うまでもない。
「マリア姉、イリア姉如何にか今回は止めたけど。神は一人ではないとボコボコ出てきているようなんだよ。タンドラ大陸でも英雄コルンが神になりそうなんだよ。」
アレクは物凄く嬉しそうに喋っている。アレクは自分が祀り上げられなければ誰が神になろうと関係ないのである。
「アレク、あんたが一番危ないわよ、今回アレクが止めたために神官たちは表に出さなくなってしまったわ。」
「エッまずかった?」
「拙くはないわ、そのままなら神になっていたから仕方が無いわよ。でももうその手は使えないわよ。」
「そうか、拙かったな。もう情報が入ってこないかもな。」
そう聖アース教ではない密かにオリオン兄弟姉妹たちを神にしようと画策している者達がいたのである。それはアレクに助けられた者、カインに命を救われた者とオリオンの者達に助けられた者達がこぞって入信していたのである。その者達はオリオン兄弟姉妹たちの能力と力を知っている。何を成したのかも知っている者達である。
「マリア姉、何とか対策を講じてくれ。神になったら大変だ。」
「あんたがそれを言うか。」
マリアはアレクの言葉に半ば呆れてしまっている。マリアの感覚ではアレクは神以上の存在である。
他の兄弟達も同じ意見なのだ。




