404話
教会都市内では外の噂でもちきりであった。
この都市にキンメル軍が攻めてきたという噂である。真実であるがただキンメル軍が自分で勝手に自滅しただけである。
教会都市は信者以外は門に入れなくなっている。信者には聖アース教会発行のカードを持たせている。このカードがないと教会都市の門を通る事が出来ないようになっていた。
そのためにキンメル王国軍は都市に入る事が出来なかったのである。
聖アース教会の都市は日増しに人口が増えていっている。
住みやすい町に、敵意のある者は入れない結界と、民が安心して暮らせる場所である為に人が集まってきているのである。
オリオン関係者が作っただけであって種族平等も効果を上げている。今までフロンティア大陸内で迫害を受けていた者達は挙って信者になり仕事を与えられていた。その日の食事にも困っていた人々は仕事で得た金銭で温かい食事にありつくことが出来るようになっていた。
キンメル王国軍
「何故町に入れないのだ。」
「わ分かりません。陛下。」
「ぬぐぐっ」
キンメル王国軍500は謎の結界に阻まれて教会都市手前で100人者兵が死んでいた。残り400の兵たちはいったん教会都市が見えるぎりぎりまで下がり再度攻撃の方法を探していた。
「陛下、斥候が侵入しようと試みましたが結界に阻まれて侵入出来ませんでした。」
「何故だ、あの民たちは通っているではないか。」
「・・・・・・・」
其処に空色をした1体のドラゴンが舞い降りてきた。
キンメル軍はそのドラゴンに気づくことが出来なかった。音もなく空から一気に降下してきた綺麗なドラゴンはキンメル軍の前に舞い降りたのであった。
「「「「「うわー。」」」」」
ドラゴンに乗っている騎士は「あなた達ですか教会都市に侵入しようとしている者達は」
キンメル軍はドラゴンの前で恐怖に震えあがっていた。動くことも出来ずに固まっている。
「このまま引き返しなさい。」
まだ若い少年のような者に命令されてしまったキンメル王は恐怖も忘れて文句を言ってきたのだ。
流石王である。ドラゴンを前にして感情が優先できる尊大な心を持っている者はそういないだろう。
「何だ貴様は、余はキンメル王であるぞ。」
「敵ですね、殲滅しましょう。」
少年は冷ややかな言葉で呟いた。
その言葉でキンメル軍の兵も我にかえり少年に向かっていく。少年を見ていてドラゴンを見ていなかった兵たちはドラゴンのブレス一発で撃沈してしまった。400兵は200あまりになりドラゴンの恐怖にまた固まってしまっていた。
幸いにしてキンメル王がドラゴンのブレスにより死亡したために生き残った兵たちはその場にとどまる事もなく撤退していった。
少年騎士はドラゴンに向かい「ありがとな。」とキラキラした目でドラゴンを見つめている。ドラゴンもやさしい目で少年を見つめている。少年はドラゴンにスリスリして甘えているようだ。ドラゴンが主人で少年がドラゴンの子のようにも見えている。
少年はドラゴンを堪能すると仕事に移る。生き残りの兵がいないかの確認である。瀕死の重傷者が何人かいたのだ。少年騎士は手際よく縛り上げドラゴンが掴めるように縛り上げていく。3人の生き残りがいるために簡単な治療を施し、オリオン軍の駐屯地へ連れていくのである。
命を取り留めた3人の兵は又新たな恐怖を体験する事となる。ぐるぐる巻きに縛られた体をドラゴンに掴まれ空中遊泳をする羽目になったのだ。
まるで獲物を捕まえた鷹が獲物を連れ去って飛んでいるような光景であった。
3人の兵たちは声も出すことが出来なく。耐えれ無くなり失神してしまった。だが風が冷たくまた目覚めると恐怖により失神してしまう。その繰り返しを2,3度繰り返すうちに目的地に着陸していった。
「お帰り、捕虜か。」
「隊長、キンメル軍の生き残りです。死亡約300、あとは逃げていきました。」
「そうか分かったご苦労だったな。」
隊長に褒められたドラゴンに乗る騎士は嬉しそうだ。
「捕虜は尋問するから憲兵に預けろ。」
「了解しました。」
少年はドラゴンと共に領舎へ戻っていった。
聖アース教会の教祖(神)であるルドルフは頭を抱えていた。
「どうしてこうなった。」
教祖にして主様である。ルドルフは聖アース教が出来るまでを思い返していた。
3つの宗教が生まれ、それが一つになった。それはいい、物事はどうなるか分からない。3つの宗教はドラゴンを神としていたはずである。グレーリ王国はまだ分かる。大噴火によって救われたのだ。ドラゴンの活躍を目のあたりにして神のようにあがめた事は仕方がない。ルドルフ自身も目立ったことは理解している。民の前でドラゴンを操り指示を出していたからである。
何故それが神になってしまったのか、ルドルフには理解できなかった。
ルドルフは兄弟姉妹たちがルドルフ英雄計画を遂行していることを知らない。もし知っていたならば絶対にフロンティア大陸から離れていたからである。何も知らないルドルフはいいように操られていた。アレク達兄弟もまさか宗教が出来るとは思ってもいなかったのは事実である。だが使えるものは何でも使うのがアレク達である。
英雄よりも上が自然発生で出来たのだ。ルドルフに神になってもらうという結論は満場一致であった。
聖アース教はまだ躍進を止めていなかった。度重なる戦争や内乱、自然災害などがあり、民の不満は王族や貴族に向けられていった。聖アークの教会都市以外に住む民たちは教会都市の噂を聞いて自分たちも移住しようとしたのだ。それが貴族達に分かり弾圧されたのであった。
それは小さい町の数人の事であった。だがその事がきっかけでグレーリ王国、ジェントス王国、キンメル王国と3か国をまたにかける大事となっていった。民が王族や貴族を排除する動きに出てきたのである。
小さい町から始まったこの事は、教会の支配を望み纏まっていった。
アレク達も予想外の事であった。
3か国の貴族の中でも聖アース教に入信する者がいた。自分の身を守るためでもあったが、グレーリ王国の貴族が多く含まれていた。大噴火により自然の恐怖を植え付けられたこの国の者にとってドラゴンはまさに神であったからである。
自分の力の及ばない事柄は何かにすがりたい、それが人である。
たまたま、すがれる物がいただけである。
その動きは国の機能まで麻痺させるものであった。
このままでは国が持たないと考えた各国はルドルフに間に入ってもらう事にしたのである。
ルドルフは軽くその事を受けてしまった。宗教を軽く考えていたのである。ルドルフは自分が中心にいる事を完全に忘れていたのである。日々の仕事に追われ大噴火の事等忘れていたのだ。自分が大活躍した事は民たちの中に記憶として(美化され)残っているというのに完全に忘れていたのであった




