402話
カシス王国とルーデン王国共に打診をしてみたが色よい返事では無かった。
両国ともに問題のある国を併合するメリットがないのだ。人口も少なく土地が余っている状態である為に他国の土地を無理に取る事をしなくとも今ある国土で十分賄えるからである。
アレクはキンメル王国の内情を調べた。キンメル王国の種族は人間である。一部は所属もいるがほぼ人間で構成されている。奴隷では人間も他種族も色々と混ざっている。
アレクは共和制という思いをふと思ったがまだ無理だと結論づけた。共和制は民に考える力がないと成功しない。政を行う者が正しいのか、間違っているのかを判断できることが出来るかが重要である。今のキンメルの民では読み書きすら出来ない状態である。
「どうするかな。」
「失礼いたします。アレク様、ルドルフ様がお見えになりました。」
「そうか通してくれ。」
ルドルフがアレクを訪ねてきたのはグレーリ王国の事である。今はドラゴンによって噴火口は落ち着いているがまだ予断を許さない状態である。
「アレク、こちらも大変そうだな。」
「ルドルフ兄、所属問題、ローエム帝国貴族、馬鹿王と大変ですよ。」
「そうだな、なぁアレク、タンドラ大陸みたいに纏めるのは難しいか。」
「ローエム帝国抜きならば可能でしょう。」
「ローエム貴族達か。」
「そうです、我らもまだ所属はしていますが、所属だけですからね。」
「ここだけの話にしてもらいたいのだが、ローエム帝国は大丈夫か。」
「ルドルフ兄、ローエム帝国は色々と貴族の問題はありますが滅んだりはしないでしょう。伊達に歴の長い国だけではありませんよ。」
「そうだよな、あいやな、ローエム帝国もそうだが、グラムット帝国とオリオン巨大国家が同じ大陸に3つある。まぁグラムット帝国はオリオンの中の帝国という位置付けになっているからまだいいが、元祖国であるローエム帝国はかなり貴族達の争いが激しくなっているようだからな。」
ローエム帝国は実はかなり危ない状態である。巨大化したローエム帝国は属国も加えるとかなりの貴族数になっている。元々開発されている土地であるために人口も多く豊かな国である。それプラス、オリオンの持ち込んだ技術により大幅に人の寿命が延びてきている、子供の数も右肩上がりである。人間50年と言われていたが、一般でも80から90ぐらいまで寿命が延びているのである。貴族に関していえばその1.5倍であろうと予想されていた。まだ数十年である為に寿命の干渉は不確かだが120歳ぐらいまでは貴族の平均寿命が延びると思われている。人の寿命が延びる事はいい事のように思えるが弊害も色々出てきている。貴族で言えば、今迄、50歳代で多くの者が亡くなっていた。ところが今は60歳でも超元気、70になっても元気なのである。結婚の早いこの惑星では二十歳前にはほぼ結婚している。70,80の者達がまだ元気である為に世代交代が進まなくなってしまったのだ。嫡男、摘孫などが困った状態になっているのだ。
国としても貴族当主の事は口出しできない。その家の者達が決める事であるからだ。
オリオン王国もハロルドの引退が囁かれているが70歳を越えても見た目まだ50歳ぐらいにか見えないために引退という声も小さくなっていったのだ。
オリオンは国としてもまだハロルドに引退されても困ってしまう。嫡男であるルドルフも他の兄弟も忙しいためにもしハロルドが引退と言っても反対するのだ。オリオン兄弟は死ぬまでハロルドを働かせるつもりなのだ。
「ルドルフ兄、ローエム貴族の事も片付けますが、今はキンメル王国の扱いをどうするかを悩んでいます。」
「キンメル王国か、いっそローエム帝国に任せてはどうだ。」
「ローエム帝国にですか」
「そうだ、ローエム帝国貴族達は争っている。自派閥の力を付けるために貴族数を増やそうと躍起になっているからな。」
「それもありですね。キンメルの民には負担になるでしょうがね。」
「それは仕方のない事だな。キンメルの王が民の事を考えて行動できる人物であれば民の負担も軽減されるだろう。」
「まぁ無理ですね。」
結局アレクは、青人、赤鬼人、他種族をキンメル王国から移動させるだけにした。移動だけと言っても大変な人数である。移住先はオリオンとルガー王国の担当開発地域である。この場所は他の開発地域に比べ他種族の割合がかなり高い。オリオン王国連合は種族平等としている為に人間以外が移住してくるのである。アース大陸、タンドラ大陸からきているのである。オリオン王国自体かなり金払いがいい事がある為に人も寄ってくるのである。
キンメル王国はかなり焦っていた。まさかの放置宣言をされたからである。ローエム帝国との停戦協定(金銭の保証契約)は完了している為にアレクはそれでおしまいとしたのである。
キンメル王国はアレクがローエム帝国との橋渡しをしてもらってこれから共同で開発をしていこうと勝手に未来を思い描いていたのであった。
アレクはその話を聞いてあきれ返っていた。何て都合のいい解釈だ。
キンメル王国は戦闘力をなくした唯の借金国になってしまった。
キンメル王はローエム帝国に支払う金の為に税を上げる決断をした。それが拙かった。民は青人、赤鬼人のこともローエム帝国へ侵略したことも分かっていた。アレク達がキンメルの民に真実を伝えたからであった。
力の弱まったキンメル王、そして貴族達、不満を募らせているキンメル国民達、そこに増税である。各地で民による反乱がおこる事は必然であった。
キンメル国内は荒れに荒れてしまった。
荒れていくキンメル王国に一つの集団が生まれた。それはグレーリ王国で行商を行っていた商人から始まった。商売の為にグレーリ王国でも大噴火やドラゴンの事を面白可笑しく伝えたことが始まりであった。
荒れていく、国、農地、人の心も荒んでいっていた。そこに夢のような物語を聞いたキンメルの民たちは一人の神と神の使いであるドラゴンに祈るようになっていた。
キンメルの民たちの間で急速に一人の神と使役するドラゴンに祈る者達が増えていった。
頼る物を求めていたキンメルの民にとって実際に起こった大噴火を沈めたドラゴンは祈る対象として最適であった。何しろ隣の隣国に実際にいるのである。それにルドルフが乗るドラゴンが最近キンメル王国でも目撃されていたことが急速にドラゴン教が拡大した要因であった。
それは自然発生した宗教であった。のかな?