4話 魔法瓶
「デリック、今まで従士1人で苦労かけたな。」
「何をいいます、苦労などまだまだ続きます。あのアレク坊がいるんですよ。」
「まぁ、そうだなこれからもっと大変になるかもしれん。」
そのころアレクは、農地を広げていた。
「アレクス様」
「どうしたの、マリオさん?」
「農地の開拓って、こんなに簡単なんですか。」
「普通は、こうはいかないよ。木を倒す時、根元だけ土を柔らかくしてるんだよ。だからほら楽でしょ。」
「楽ですが、みんな呆けてますよ。普通は農地開拓など、何年もかけて木を伐り、根を掘り起こして、やっと整地するんですよ」
「ほら僕、魔法使えるから」
「普通の魔法使いは、農地開拓なんてしませんからね」
「あっ、これからレンガ造らないといけないから、ここの指揮お願いね。」
アレクは、5歳児とは思えない速さで駆けていく。弾丸のように5歳児が疾走しても、村人は気にしてない。もう見慣れているからだ。
アレクは、忙しい、農地開拓・村の区画整理・レンガ造りと段々と仕事が増えていく。
要領がいいので、たまにサボっている。
サボっているときふと思う、魚が食べたい。でも無理だここには海がない。
生まれてこの方、魚など見たことも、聞いたことも、食べたこともない。
でも、知っている。美味しいと。
ある日
幌馬車に積まれた木箱、中はマジックバックだ。マジックバックの中にマジックバックは入らない。
今回の納品に、アレクも同行するのだ。
領外に出るのは、初めての為、嬉しくてしょうがない。
「出発」
馬車に揺られ3日目ようやく、シュターデン侯爵領に到着し挨拶の為、シュターデン城にきていた。
「お初にお目にかかります。シュターデン侯爵閣下、ハロルド・オリオンが子、アレクス・オリオンです」
「おぉ、噂の神童か、我がシュターデン領にようこそ、当主のローデック・シュターデンだ」
アレク。?
「なんだ知らんのか、王都では神童アレクスといえば、王都経済を活性化させた、立役者と有名じゃぞ。」
「田舎にいるもので、全然知りませんでした」
父を見ると目を逸らしていた。
「あのマジックバックは凄い、迷宮でしか手に入らなかったものが量産できるんだからな」
「侯爵閣下のお力が、あればこそです」
「お主、ほんとに5歳か」
「はい、正真正銘の5歳児です。」
「そうだハロルド殿、今夜パーティーがあるので出席してくれないか」
パーティー会場
「アレクス、あまり離れるなよ」
「はい」
南部貴族が集まる中、ハロルドとアレクスがシュターデン侯爵に挨拶するために、中央を進んでいく。もともとオリオン家は南部貴族の所属であるが、領地が貧乏だったため、パーティー等はすべて欠席していたのだ。
本来なら、借金してでも貴族の見栄を張るのだが、ハロルドは気にしなかった。
今までは、騎士爵家の一家がいなくとも誰も気にしていなかった。だが今は注目の的だ。
突然、マジックバックを作成し王家に献上し、陞爵したのだ。しかも準男爵を飛び越しての陞爵なので、今まで貴族の付き合いも出来ない、貧乏の最下級貴族と馬鹿にしていたものからすれば、許し難い存在だ。
特に、近場に領地をもつ騎士爵は面白くない。
自分も魔法が使えれば、もしかしたらと思ってしまうのだ。
この世界、魔法使いは貴重だ、1,000人に1人ぐらい、その中でもそれなりに魔力を持ち、役に立つ魔法を使えるものは少ない。況してや、マジックバック程の魔道具を作成できる魔法使いなどいないのだ。
貴族は挙って、高額で魔法使いを雇う。
見栄の為だ。
「侯爵閣下、本日はお招きにあずかりありがとうございます。」
「おぉーハロルド殿、よく来てくれた。皆に紹介しよう。」
「今日、集まってもらった皆に紹介しよう。南部最南端に領地をもつ、ハロルド・オリオン男爵殿と神童アレクス・オリオン殿だ。」
ハロルドは会場をみながら、胸に手を当て貴族の礼をとる。
アレクスも、父の真似をして礼をする。
ハロルドがアレクスに目で合図をだす。
「シュターデン侯爵閣下、本日はお土産をお持ちしました。魔法瓶です。
これは、温かいお湯を6時間程度、保温いたします。冷たい水もある程度は冷たいままです。」
「これはありがたい、茶を飲みたいときに良いな」
実はこれ、お芝居である。
オリオン家が販売する魔法瓶の宣伝活動なのだ。
アレクスは考えていた、オリオン領には特産品がない。
特殊な作物もなく、便の悪さで人が来ない為、特産品を作り人の流れをつくろうと考えた。
魔法瓶は、通常の職人でも作れる。他にも照明器具・魔石コンロ等、簡単な魔道具を造る工場をオリオン領に計画していた。
これらは他領では売らない、商人に買いに来てもらうのだ。
「いやぁ、大成功でしたね」
「凄い、食いつきだった」
「予約だけで300台ですよ」
「工場も稼働してますが、納期までに間に合うか」
「大丈夫です、フル稼働で月、1000台いけますから」
「あんな人数で1000台なんてできるのか」
「出来ますよ、仕事効率を上げるんですよ。完成まで5つの工程があり、今までは一人が5つの工程を作業していたのを、1工程で一人×5で完成するんです。同じ作業だと慣れれば作業効率が上がるんです。」
こうしてシュターデンでの商談?もといパーティーも終わり。
オリオン家一行は王都に向かった。
異世界で生きていくにはどうすればいいのでしょうか。~無能スキルが優秀なスキルにおまれ変わりました~
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