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399話

アレク達はキンメル王国の王城内にいた。

謁見の大広間でキンメル王と対峙していたのである。


「余がキンメルの王である。」

「・・・・キンメル王よ何か勘違いをしていないか。」

アレクが名乗りもせずにキンメル王に話し出す。

「勘違いだと、謁見の間で余が謁見してやるのだそれ以外に何があるというのだ。」

アレクは王の近くでニヤニヤするキンメルの家臣であろうものが幾人か見える。

アレクは深く大きなため息を吐く(ハーーーー)、カインのと目が合うと同時にアレクとカインが動く。

二人の体が一瞬ぶれたかと思うと先ほどまでニヤニヤしていた者の首が転がっていた。


「キンメル王、我らは謁見に来たのではない。キンメル軍が降伏したのでその内容交渉に来たのだ。」


この謁見の間で今人が二人も殺されたことなど無かったように話し出すアレク。キンメル王は何が起こったのか分からずに茫然としている。

するとキンメルの騎士たちがアレクとカインを包囲するように動き出す。包囲されたことなど関係無い様にアレクは話を続けていく。


「キンメル王、キンメル軍は先の戦闘で降伏したことは聞いているか。」

王は家臣を見るが、家臣たちは王と目を合わさない様にしている。誰も答えない事に王は段々と怒りがこみあげてくる。

「軍務大臣答えよ。」

「・・・・こ、降伏は現地の者がしたようですが軍としては認めておりません。」

この答えをした瞬間、カインが動いた。軍務大臣の首が大理石の床に転がっていた。


「ひーーっ」

周りにいた他の家臣は悲鳴を上げる。


「いいかよく聞け、キンメル軍は俺達二人に降伏をした。認める認めないは勝手だが認めない者はこの軍務大臣のようになるぞ。」

カインは今殺した軍務大臣を指差している。


キンメル王ははっきり言ってビビってしまった。

謁見の間で家臣一人を殺して騎士に包囲された状態で、王として裁きを言おうとした矢先、相手が喋りだして又一人殺された。それも包囲している中から抜け出し殺しているのだ。王は包囲は無駄だと思い至る。

キンメル王以外の者達も完全にビビってしまっている。唯一アレク達を包囲している騎士達だけは何とか体裁を保っている。


「キンメル王は正確な事を理解していない様だな。王への報告は事実を告げなければ王の判断を狂わす事をキンメル王国の家臣殿たちはきちんと理解しているのか。」


アレクは王と周りにいるキンメルの家臣たちを見回す。家臣たちは目をそらし下を向いている。反省して下を向いているのではない、殺されたくないから下を向いているのである。


「キンメル王、簡単だが説明しよう。キンメル王国がローエム帝国の支配地域に侵略してきたことは知っているな。そしてローエム帝国は3度大きな戦闘を挑んだがローエム帝国側が負けた。そして今回だ。オリオン王国はローエム帝国の同盟国だ。ローエム帝国より救援要請によって我らがキンメル軍と対峙したのだ、そしてキンメル王国軍は我らに降伏したというわけだな。」


「ま、まさか本当に負けたのか、あの者達が負けたのか。」

王は一人言の様に呟いている。青人たちが負けたことが信じられないようだ。


「キンメル王、まさかオリオンに勝てるなどと思っていたのか。」

「・・・・・・・・」


アレクは正直驚いた。アレクは自惚れではないが、オリオンの強さはかなり有名である。フロンティア大陸でも知れ渡っている。その辺の国が全軍で挑んできたところで負ける要素など一つも無いのだ。

アレクはキンメル王の素質を疑ってしまう。今までの印象では家臣の言いなり、自身で確かめることをしない。これではいい様に家臣たちに使われてしまう。


「キンメル王、お前はダメだな。王としての責務を果たしていない。」

「なな何を言っている。余はキンメル王であるぞ。」

「ではなぜ戦場の報告が王であるキンメル王に正確に伝わっていないのだ。」

「・・・・」

キンメル王は家臣たちを睨むが、家臣たちは知らん顔をしている。

王は怒りで震えているが言葉が出てこない。


キンメル王はこの時やっと気づいた、自分が裸の王様である事が分かったのだ。幼いころより煽てられ褒められ、家臣たちからは大事にされてきたことがすべて幻想だったのだということだ。(ふっ)

キンメル王は声にならない笑いが出ていた。一気に力が抜けたように気が楽になっていた。


キンメル王は家臣たちをそのままにアレク、カインと話し出す。キンメル王は今まで聞いていた事と真実との違いを聞き比べているのである。キンメル王国の中でも王に対して真摯な対応をしている者も多くいたが大抵の者達は閑職に追いやられていた。

利益に食らいつく、目ざとい、狡猾な者達でキンメル王国は運営されていた。キンメル王には真実を告げず、キンメル王国は巨大で大国だと信じさせていたのだ。幼いころからのすりこみで信じさせていたのだ。

アレクとカインの登場だけで完全に元に戻ったわけでは無いだろうが目の前で人が殺される様を見たことがキンメル王に良い方向に作用したのであった。

キンメル王は教育さえ間違えなければかなり優秀な王であっただろう。


「そうか、あの魔人も赤鬼人たちも今はキンメルの民なのだな。」

「キンメル王、魔人(青人)と赤鬼人の代表者をこの場に呼んでくれ。その者達からも話を聞きたい。」

キンメル王は騎士に連れてくるように指示を出す。

キンメル王は側近家臣たちには指示を出す気がないようだ。


暫くすると、青人数人と赤鬼人数人が騎士に連れられて謁見の間に姿を現した。


アレクはまず、赤鬼人に問う。

「赤鬼人、貴殿は地下の自国の歴史を語れるか。」

「はい、自国の事ならば分かります。」

「地下の国の事を聞かせてくれ。」


赤鬼人はかつて迫害をされていた、迫害は魔人と獣人、エルフにドワーフと言われる者達全般に行われた。ようは人間以外を迫害していたのだ。

赤鬼人達は地上では生活が出来なくなり、地下に住むことを選択した。地下には大きな空間があり長い年月をかけて地下都市を建設したのだ。


地上に出なくとも生活が出来るようになるまではかなり長い年月がかかり1000年は経っていると言われている。正確な年数は分からないがアース大陸の迫害とはまた違っているようだ。

静かに暮らす赤鬼人たちの前に同じく迫害されて逃げてきたのが青人たちであった。赤鬼人たちは青人たちを保護したのだ。青人たちは人数も少なく。最初は10人もいなかったのだ。ところが日ごとに増えていく。保護した者達が仲間もいると伝えたことで赤鬼人たちがその者達も保護したのであった。それが雪だるま式に膨れ上がり、数年で青人たちの方が主導権を握っていた。


それからは青人が赤鬼人たちの立場を少しづつ落としていった。青人たちは狡猾であった。人のいい赤鬼たちはコロッと騙されていた。同じ迫害されている者同士である、騙すことなどしないという赤鬼人たちの思い込みを付いた戦術であった。

気づいた時には青人は貴族、赤鬼人は平民となっていた。

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