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393話

1人の少年は大空から目が離せないでいた。

それはドラゴンが大空を飛んでいるからである。


この少年グレーリ王国王都で大噴火を経験し、ドラゴンに命を助けられた者である。


少年は大噴火で王都が火の海になるところをドラゴンの活躍で王都が守られた所を目のあたりにして自分もドラゴン騎士になる決意をしているのだ。


「父ちゃん、俺ドラゴン騎士になる。」

「おー、がんばれよーー。」

少年の父は王都で商いをしており平民だが、かなり裕福な生活をしている。

父は少年のドラゴン騎士の夢を聞いても子供の戯言と思っているのか軽い返事で返している。

だがこの少年は本気であった。


如何すればドラゴンに乗れるのか考えていく。

まずはドラゴンに近付くことを思いつく。


今この地にはドラゴンが5体とワイバーン隊が空の警備を行っている。

少年はドラゴンに近づこうとドラゴンを追いかける毎日を送っていた。王都内で空を飛ぶドラゴンを見つけると頑張って走る。走る走る。だが一瞬でドラゴンはいなくなってしまう。


それはそうだろう。人の走るスピードと空を飛ぶドラゴンのスピードでは天と地ほどの差があるのだ。

だが少年は王都を出る事が出来ない。王都は新王都建設で活気に満ち、王都と新王都の間では自由に行き来できるのだが、通行証の無い少年では王都から外に出る事が出来なかったのだ。


少年は一生懸命考える。何とかドラゴンに近づく事が出来ればドラゴン騎士になれると信じていた。

そんなことはありえないのだが少年は成れると思っている。


この王都では多くの少年少女がドラゴンを見上げ僕も、私もと思っている。だが少し時期が立つと他の事に興味が湧き忘れていく。


少年は諦めきれなかった。毎日夢に出てくるドラゴン、もう夢の中では立派なドラゴン騎士である。

夢と現実の間で毎日ドラゴンを追いかけている。

そんな時、父親の営む店に騎士のような恰好をした兵士が買い物に来ていた。父と話すその兵士は、ワイバーン乗りだと言う。

少年は思わず、兵士の前に飛び出し、「俺ドラゴン騎士になりたいんだ。どうすればなれるんですか。」


突然、話の途中で割り込んできた少年を父の拳骨が少年の頭に落ちる。「ボコッ。」


「あ痛いっ。」


「馬鹿者お客様の前だぞ、馬鹿者。」

怒った父が少年を叱っている。


兵士は優しく少年の目線に合わせるように腰を折って少年の目を見ながら話をする。


「君はドラゴンに乗りたいのかい。」

「うん、俺ドラゴン騎士になりたいんだ。」

「そうか、ドラゴン騎士か本当になれると思うのかい。」

「俺、なるんだ。ドラゴン騎士になるんだ。」


アレク艦隊でも他の艦隊でもドラゴン騎士は存在していない。ワイバーン乗りはいるがドラゴン自体、王族しか所有していないのだ。

兵士は少年にドラゴンを持っているのは王族だけだと優しく少年に伝える。

少年の目力がだんだんと失われていく。しょんぼりしてしまった少年は項垂れて店の奥に消えていく。


「まずかったかな。」

兵士は少年の父に少年の夢を奪ってしまった事を気にしてしまったのだ。

「いいえ、ドラゴン様は私たち平民が乗れるものではありません、現実を教えていただきありがとうございました。」

父は逆に兵士に感謝の言葉を伝えてきた。


兵士はその店での買い物を済ませると、兵士たちの官舎へと戻っていった。


だがその後を一人の少年がついてきていることを兵士は知っていた。

隠れているつもりだろうが兵士からしてみれば隠れているうちに入らなかった。兵士は少年が見失わないようにゆっくりと歩いていく。王都の門まで来ると、門兵に言付けをして王都の外へ出て行ってしまった。

少年はどうするか悩む、門を出る事が出来なければ兵士を追いかける事が出来なくなる。少年は勇気をもって門兵の前に行き外へ伝言に行くと嘘を付いた。門兵は何事も無かったように少年を外へ出してくれた。

呆気にとられる少年、前に一度外へ出ようと試みたが失敗していたのだ。だが今回は成功した。何が違うのかが分からなかったが今はそんな事を考えている場合では無かった。兵士を追いかけなければいけない。


少年が辺りを見回うと兵士は知らない男と話をしていた。少年はほっとする。


兵士は男との話が終わるとまた歩き出す。


王都と新王都の間にはワイバーンとドラゴンが休む場所がある。

そこには草むらで昼寝をしているドラゴンが3体いた。


少年の目はキラキラと輝いている。


もう兵士の事など忘れてしまっている。


少年は無防備にドラゴンへ近づいていく。


「そこの少年、それ以上近づくな、慣れていない者はけがをするぞ。」


少年はびっくりした。振り向いたその先には先ほど追いかけていた兵士がいるのだ。


「あああのう、黙って入ってごめんなさい。」

兵士は少年の頭を優しくなでている。怒っていないよと仕草で示しているのだ。


「いいかい、少年今回は許すがもうつけてきてはいけないよ。いいね。」

「ははい。」しょんぼりする少年。


兵士は少年の手を取りドラゴンに近づいていく。びっくりして兵士を見ている。


ドラゴンの前に来ると兵士はドラゴンに話しかけていた。「少しこの少年に触らせてもいいかい。」


するとドラゴンはどうぞ好き勝手にと言うように興味をなくしたように寝てしまった。


「さあ、さわってごらん。」

少年はドラゴンに抱き着いてしまっていた。驚いたのは兵士の方だまさかドラゴンに抱きつくとは思ってもいなかった。手で撫でるだろうと予想していたのだ。普通はそうであろうがこの少年は違った、目の前のドラゴンに興奮が抑えるとこが出来なかったのだ。もう周りが見えていなかった。

ドラゴンにしてみればたかが少年一人が体当たりをしただけである。全く問題がない。


兵士は少年があまりにも落ち込んでいる為に少し責任を感じていた為に、少年がつけてくることを利用してドラゴンを触らせてやろうと思ったのであった。だが少し思惑がずれてしまった。

この休憩所で大騒ぎになってしまったのだ。


兵士と少年は隊長に呼ばれ、事情を説明する。


ワイバーン隊の隊長は少年に「君はドラゴン騎士になりたいのか。」

「なりたい。なる。」

「そうか、ではまずはワイバーン乗りにならなければな。そこで王族に認められればもしかしたらドラゴン騎士になれるかもしれない。君も知っているだろうがドラゴン騎士と言う者は存在していない。言うなればワイバーン乗りがドラゴン騎士と言える。それは分かっているね。」

「はいさっき聞きました。でも俺ドラゴン騎士になりたいんだ。」

「分かった。君の父親に許可を取ってきなさい。許可が下りたらうちでワイバーン隊に入れてやる。だが訓練はかなりきついぞ。」

「やる、絶対やる。」



少年は父親に許可を取る為に家に戻り説得した。



父親も少年の夢を追う事を許してくれたのだ。「がんばれよ。」




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