表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
391/919

391話

俺は奴隷だ。


奴隷の親から生まれた。


俺は遊んだことがない、いつも何かを手伝っていた。そう歩けるようになってから、物心がついたときにはもう仕事をしていた。軽い荷物運びから始まり、今では大工仕事まで出来るようになった。

そして今俺は、他の奴隷と一緒にご主人様から話を聞いている。

信じられない話だ、今迄ご主人様は俺たち奴隷を大切に扱ってきてくれていた。

町の他の奴隷より、飯をたくさん食べさせてくれる。ご主人様の奴隷はみんな体格がいい、まぁ木材を運んだり色々と力仕事が多いせいなのだろう。


だけど今回の話はあんまりだ、死んで来いと言っている。


グレーリ王国の王都で大噴火が起きた。大噴火って何だと思いみんなに聞いたが誰も知らなかった。

だけど今ご主人様が火の海だと言っている。あの火が海になっているのか、熱くて死んじゃうじゃないか。


そこへ行けと言うのか。死ぬぞ。


だけど奴隷はご主人様に逆らえない。




俺たち奴隷たちは、いま王都へ向かい歩いている。みんな死にそうな顔をしている。それはそうだ死にに行くのだから。


俺はもう腹を括った。父ちゃんと母ちゃんが一緒でないだけ幸せだ。俺が父ちゃんと母ちゃんの代わりに行くのだ。ご主人様も若い者達だけ連れてきている。余程過酷な場所なのだろう。あまり考えないようにしている。考えると暗い顔になってしまう。



ようやく大噴火の場所に着いた。


あれ?普通の町だ。火の海はどこ?死ぬんじゃないの???



仕事は普通の大工仕事だった。


今迄悩んできたのは何だったのだ。普通の仕事じゃないか。


俺は思った。知らないから怖いんだ。物を知っていれば分かる。


俺は仕事が終わった後に奴隷仲間から知っていることを聞いて回った。同じ奴隷でもみんな少しずつ知っていることが違う。字を知っている者も知っている字が違う。俺はみんなから聞いて回った。


みんな知っていることは自慢しながら教えてくれる。


俺は何百人といる奴隷たちから少しずつ物事を教わっていった。


教わったことを忘れないようにブツブツと呟くながら歩くことが癖になり。あいつは変人だと周りから言われた。だけどそんな事は全然平気だ。俺は今ものすごくうれしい。物事を知る事は考える事が出来ると言う事だ。

俺は字の練習もやった。土に木の棒で字を書く、書く、書く。今では簡単な文章は書けるようになった。

出来れば本という物を読んでみたい。遠くから見たことはあるが触ったことがない。読んでみたいなー。


そういえば最近仕事が変わった。今まで材木を運んだりしていたが、今は材木の寸法を測り切り出す仕事に変わった。何でも数字を読めるようになったから重要な仕事を任せると言われた。この重要な仕事の報酬が週一回のコップ一杯の酒が貰えるようになった。俺は酒は飲んだことがなかったが、いい気持ちになる魔法の水だった。

なんだかフワフワするんだ。いい気持ちだ。



毎日、建築の仕事をしていると、俺はご主人様に呼ばれた。


なななんか俺を売る話をしているぞ、俺売られちゃうのか。頑張って仕事してきたのにご主人様には不満だったのか。これほどいいご主人様はいない。いやだいやだ。


俺はご主人様に売られた。もう死ぬのかなーー。肥溜め掃除とか、魔物狩りとかだったら嫌だなーー。



俺は新しいご主人様の後を黙ってついていく。



そこは、新しい建物の中だった。こんな新しい建物の中に入る事なんて今までなかった。初めての経験だ。

俺はフワフワな椅子に座らせられた。奴隷が椅子に座っていいのだろうか。新しいご主人様が座れというのだ。座って殺されることはないだろうと俺は気合を入れて座った。ふかふかで一瞬で眠りそうになってしまった。まずい新しいご主人様が見ている。しっかりしなければ。


そこに1人の男が入ってきた。

新しいご主人様がお辞儀をしている。多分新しいご主人様より偉い人なんだろう。俺はどうすればいいのかが分からない。奴隷たちから聞いたことの中でそんな礼儀を知っている人など誰もいなかった。


どどどどうしよう。俺は心の中で一生懸命考えたが分からなかった。


「君か字の書ける奴隷というのは、何処で習ったのだ。」


俺は新しいご主人様を見た。ご主人様は喋っていいと頷いて見せた。

奴隷はご主人様の許可がないと喋ってはいけない規則になっている。


「ははははい、どどど奴隷たちから少しずつ聞いて覚えました。」

「それは凄いな。」



それからの俺は、勉強させられた。

きちんとした字の読み方、書き方、数字の読み方、書き方、計算のやり方と覚えた事の復習から始まり、知らなかったことを教えてもらった。

ご飯も今までとは全く違った物だった。凄く美味しい。1日3回も食べれる。量も多い。体がなまってしまいそうだ。


俺は頑張って勉強した。先生に言わせると物覚えは普通だそうだ。だが考える力があると褒められた。物凄く嬉しかった。褒められることなんて今までなかった。嬉しい。



勉強も終わり俺は新しい仕事に着くようになった。奴隷たちの先生になった。


そして俺は奴隷から平民になっていた。


俺はびっくりした。


子供の奴隷たちに勉強を教える仕事だ。なな何と給料が出るんだ。


金貨2枚だぞーーーー。


普通奴隷は給料なんてもらえないだ。住む所と一日2回の食事が出るだけだ。


すすす凄い、金貨初めて見た。こんなに光っているんだ。金貨凄い。


俺は子供たちに頑張って字を教えた。俺より子供方が物覚えが速い。少し悲しくなったが子供たちはみんな嬉しそうだ。ここは子供たちの為にご飯が出る。量も多い。新しいご主人様はこんな金にならないことをしている。


前に一回聞いたことがある、何故子供たちに勉強させるのですかと。

その時ご主人様はこれから奴隷はみんな平民として暮らしていくようになるんだと説明された。

奴隷が平民になるのか、信じられない。でも俺も奴隷から平民になったな。ありか。


俺は奴隷たちが集まっている集落の責任者もさせられている。

家族持ちの奴隷など。100家族のもう村と言っていいほどの大きさだ。この奴隷たちは畑をあてがわれ農地開拓をしている。奴隷を平民にすることは決まっているんだけど。奴隷の村を納める事に貴族様たちがやりたがらないと言う話を聞いた。何でも今まで恨みに思われているんじゃないかと怖がっているのだとか。誰も元奴隷村に行きたがらないようだ。そこで元奴隷の俺が村の責任者となったのだ。

俺も最初はどうすればいいのかが分からなかった、だけど元奴隷たちは農地開発などお手の物だった。過酷な作業は成れたものでどんどん農地が広がっていく。そこでとれた物は4割を税として取られるが残りは自分たちの者となる。奴隷たちはみんな大喜びだった。


4割の税のうち領主様に3を俺に1が入ってくる。俺は大金持ちになってしまった。


俺は領主様に頼んでその金で父ちゃんと母ちゃんを買えるか聞いてみた。そしたら奴隷解放があるからタダだと言われた。だけど旅の移動代はしっかり取られた。思ったより高かった。


だけど父ちゃんと母ちゃんが村へやってきた時には嬉しかった。村のみんなで宴会をやった。もちろん俺のすべておごりだ。

「えっへん」


父ちゃんと母ちゃんにも畑仕事をしてもらっている。俺たちが食べる物を作っている。幸せだーー。




そして俺は領主様に呼ばれている。ななななんだ俺何か失敗したかな。


ななななんと俺に嫁さんを世話してくれるようだった。よよよ嫁さんいい響きだーー。


俺は嫁さんを貰うと同時に村長となった。これは平民より上のくらいだと領主様に言われた。準貴族の扱いだと言われた。


俺が貴族、信じられない。奴隷が貴族になっていいのだろうか。


村の人口もまだまだ増えてい行く。今は200家族が住んでいる。

もう少しで町だな。



速く帰って嫁さんと仲良くしよーーーーッと。デヘヘ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ