39話 忙しそうなハロルドと忙しいアレク
ハロルドは悩んでいた。
ルドルフは結婚が決まっている。
レオンとマリア、イリアの結婚だ。
レオンの結婚の申し込みが毎日のように来るのだ。レオンに決めさせようとしたが、のらりくらりと決めない。いずれは決めるだろう。
マリアとイリアは事情が違う、他家に嫁いだら、オリオン領がやっていけなくなる。
以前の騎士爵なら、嫁いでも領地は回った。だが今は困る。
いなくなるとオリオン伯爵領が、いや商会もおかしくなってしまう。
婿を取るしかない。エレメルに相談しても婿取りは賛成、あとは好きにさせるようにと言うばかり。
真面目に相談に乗ってもらえない。マリア、イリアに言っても考えてるわの一言だけだ。
難しい顔をして悩んでいるハロルド、家臣は声を掛けづらい。早く仕事をしてほしいのだ。
こうして1時間ぐらい休憩、もとい悩んでから仕事を始める。
いつもの光景であった。
家臣A
私はハロルド様が仕事を始めるのを待っている。
早く始めてほしい。だが私はこの待ってる時間が好きだ。立って待つのは辛いが、ボーっと出来るのだ。何も考えず、ぼーーっと出来る時間は貴重だ。この家は忙しすぎる。
長男のルドルフ様は、ハロルド様の代わりに朝から開発現場に出て指揮を執っている。あんなに働いたら死にそうだ。
次男のレオン様は、王都にいるのでわからないが王都は忙しいと家臣仲間が教えてくれた。配置換えはやだ。マリア様とイリア様の部署にも絶対移動したくない。あそこは・・家臣全員の目が死んでる。1日24時間の内、16時間働いているようだ。私はハロルド様付で実働8時間労働のここがいい。
3男カイン様も凄いと聞いている。南部の開発を一手に引き受け、獣人の保護をしている。仲間の家臣が獣人の女性と結婚した。うらやましい。物凄く羨ましい。
最後は4男で末っ子のアレクス様だ、あの人はオリオン家のみんなが可愛がっている。末っ子にはみんな甘い。だがそれだけではない。アレクス様が天才だからだ。魔法を一般人に使えるようにして空飛ぶ船も造った。
家臣の仲間にも評判がいい。煽てると仕事を手伝ってくれるのだ。煽てすぎると遣りすぎるので注意と仲間が言っていた。
おっと、ハロルド様が仕事をはじめるか。
家臣は考える事を止めた。家臣も仕事を開始するのである。
「ご領主、もう少しでお茶のお時間です。」
「おーもうそんな時間か。」
又休憩が始まっていた。
その頃アレクは、オリオン領側トンネル付近の村に来ていた。
「デリック騎士爵、僕に何か言うことはないかい。」ニヤニヤ
「くっ、アレクス準男爵、お願いがございます。この村の開発を手伝ってください。お願いします。」
「デリックから、お願いされたら手伝わないとね。」アレクス嬉しそうだ。
「この村、基本は宿場町にするんでしょ。」
「場所的にそうなりますね。」
「宿場町は温泉だよね。そうだ、温泉を掘ろう。」
アレクは、張り切っていた。
オリオン領の平地から少し山に入った、この場所に温泉を掘るのだ。
温泉がどこにあるのか分からないが、山なら火山があるから、深く掘れば出るだろうと、軽い考えだ。
魔動破を地面に撃ちこむ。水が出た。水が出た部分を塞ぐ。塞いだら同じ場所に撃ちこむ。温泉が出た。ちょっと熱いお湯が出た。
嬉しくなったアレクスは、露天風呂の作成に入った。
岩で浴槽を造り、木材で浴槽を造り、大理石で浴室を造り、広い温泉施設が出来上がった。
各宿にも温泉を繋いで風呂を造った。
温泉宿には、お土産屋と思い。店も建てたが、売る物を考えていなかった。1件でやめた。
後はと色々考えたていたが、デリックに帰れと言われ追い出された。
それでも、アレクは戻ってきた。 帰ってきたぞ、帰ってきたぞ、と歌いながら。
今度は、本格的に道路を舗装し、数件の家を建てた。
デリックに褒められ、嬉しくなり他にやろうとしたら、止められた。
オリオン領都に戻ってきたアレクはドックにいた。
ルドルフの結婚祝いに飛行船をプレゼントするためだ。
次期伯爵に相応しい船を造らなければと燃えていた。
ハロルドの船は青、レオンの船は白、カインの船は赤、アレクは悩んでいた、色が決まらない。
普通に造るとレオンと同じ白になってしまう。同じ色はないな。
やっぱり、赤、青、黄色かな。黄色に決めた。
アレクはこの船の作成に時間を費やした。寝る間も惜しんで、やり切った。
笑いながら、寝ていた。 すーぴー、すーぴー。
アレクは、ルドルフを呼びに行った。
パンパカパーン、パパパ、パンパカパーン。
「ルドルフ兄にプレゼントです。」垂れ幕を引張り、飛行船のお目見えだ。
その飛行船は、黄色の流線のボディ部分にクリスティーナ殿下の似顔絵が描かれていた。痛船だな。
ルドルフは頭を抱えていた。
「これ大丈夫なのか。」
ルドルフは、急いでハロルドに相談に行った。ハロルドがドックに駆け込んできて唖然としていた。
ハロルドとルドルフは、殿下の似顔絵を描いた船を運行していいのか王家に確認しに行ったのだった。
国王は喜び、クリスティーナ殿下は恥ずかしいと駄々をこねていた。ルドルフはクリスティーナ殿下に対し、実物の方が綺麗だが船にも可愛く描けていると納得させていた。
結婚式にお披露目することとなったが事前に確認をすることとなり、今度はクリスティーナ殿下がオリオン領に来ていた。
多少の手直しをして了解をもらった。
船の名前もクリスティーナ号と決まり。絵の下に名前を書き込んだ。
満足したアレクは自分の領地に帰っていった。
残されたオリオン家と家臣たちは、一気に疲れが出た。翌日、休んだ家臣が大勢いたのだった。
お疲れだね。