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370話

「レジスカ元伯爵、罪を認めるのだな。」

「ははい、認めます、私は民に対して重税を課し民を苦しめてきました。」




周りの貴族達はこの言葉が信じられなかった。レジスカ伯爵と言えば、自分本位で有名な貴族であった。そんなレジスカが民を苦しめていたなどと認めることが信じられなかったのである。

一体レジスカに何が起こったというのだろう。実はレジスカは自領に小型艦で連れて来れられた時、揉めた過去のある民が自領に集まっていたのだ。

レジスカはその者達が最初は誰かもわからなかった、だがその者達がレジスカによって過去に無実の罪を着せられて投獄や奴隷に落とされたと知るや、顔が真っ青になっていた。

怒りに満ちたその者達は今にもレジスカを殺す勢いであった。流石のレジスカもそんな中に1人で入れるわけがない。

近くにいたアレク艦隊の者に助けを求めるのであった。

アレク艦隊の者も心得たもので、すぐには助けることなどしないのだ。


怒涛の如く民たちに責め立てられるレジスカ、民に恨みを言われると過去の事を思い出していったようだ。レジスカは自身が此の侭殺されるという恐怖を味わっていた。


容赦なく浴びせられる罵声にレジスカは亀の様に地面にうずくまっていた。


これは仕込みであった。レジスカを追い込む仕込みであるが、そんなことなど知らないレジスカは本当に殺されると思っていたのである。実際に罵声を浴びせる民たちはレジスカによって無実の罪などを着せられた者達であった。罵声は本物であった。だが一切の手出しは無かった、これはアレク側が民たちに手を出すなと伝えていたからである。ここで民がレジスカに殴る蹴るの暴行をしていれば民に対しても処罰しなければならなくなるからであった。

アレク側はレジスカの罪を問うた後なら暴力も可と伝えている為にこの場は口撃だけとなっていた。



レジスカは味方のいない立場は生まれて初めてであった。

伯爵家という貴族に生まれ、今までレジスカの周りには伯爵家の者がいつでもいたのだ。どんなに悪態をついても伯爵家の者達はレジスカの味方をしてくれた。だが今は誰一人味方がいない状況である。

周りは自分を罵る敵ばかり、唯一味方になってくれそうな人はここまで連れてきてくれた敵の兵であった。

レジスカは敵の兵に這うように近付いていく、その間も口撃は続いている。

助かりたい、早くこの場を去りたい、こんな場所に来たくない。

もうレジスカにとって自分の領地は領地では無かった。


「た助けてくれ。」


「お前は助かりたいのか、今まで同じことを言ってきた民たちをお前は助けたことがあるのか。」

敵の兵であるアレク艦隊の者にレジスカに質問をしてきた。レジスカは自分が助けを求めるのに味方をしない事が不快に感じたが、味方がいない事に改めて気付かされるのであった。


「分からない、助けてくれ。」


レジスカはこの場が助かれば何でもよかった。どんな条件を出されてもこの場を離れる事ができればよかったのであった。


アレク艦隊の者は一枚の紙をレジスカに差し出す。そこには過去に陥れた者達の罪の償いとしての補償が記されていた。

レジスカが犯した罪に対して被害にあったものに金銭で補償する内容であった。

レジスカはまともに読める状態で無かったためにアレク艦隊の者がレジスカに紙の内容を、丁寧に説明をするのであった。それまで罵声を浴びせていた者達は静かになりレジスカとアレク艦隊の者を黙ってみていたのである。


もうレジスカにとっては何でもよかった、この場を離れることができればどんな条件でもよいのだ。

レジスカはアレク艦隊の者の説明をまともには聞いていなかった。聞いていたとしてもレジスカは署名したであろうが、一人の味方も居ない初めての領地で恐怖に侵された心は、もう敵が味方に見えていたのだ。


レジスカは艦に乗せられて領地を見せられた、それは元館のあった場所である。今上空から見ると何もない更地である。レジスカは自分の目を疑った。前日まで存在していた自分の館が無くなっている。

驚いたレジスカは周りを見渡すが町があり、遠くには山がある見慣れた町と山がある、自分の館だけが無くなっている。


そしてアレク艦隊の者にもし罪が許された場合は、今の場所に連れ戻されると言われたのだ。

又民たちから罵声の嵐が続けられると思ったのかレジスカは助けてくれとアレク艦隊の者に懇願してくるのであった。

そこでアレク艦隊の者は罪を認めればいいのだとレジスカに囁くのだ。もう罪を認め署名までしている。領地に戻りたくないのであればアレクに罪を認め領地を差し出せばあの場所に行かなくていいのだと囁かれるのであった。

レジスカは逃れるためにアレク艦隊の者にうんうんと頷いている。



そしてアレクと対面しているレジスカはアレクに罪を認め沙汰を待っているのだ。

他の貴族達はレジスカの変わりように恐怖を覚えていた。ほんの小一時間の間にレジスカに何が起こったというのだ。人がそんな簡単に変わることなど出来るはずがない。

貴族達は分かっている、レジスカが小悪党だという事を誰よりも仲間である貴族達は知っているのである。それがレジスカが変わってしまっている。簡単に罪など認めるような者ではない、だが認めている姿が目の前にある。


アレクはレジスカに対して今までの被害者に対しての賠償を命じ10年の重労働を課したのであった。


次々と貴族の罪が告げられていく。


貴族達は喚いたり、愚図ったりと色々だが、騒いだ者は一瞬で静かになっていく。騒いだ者はアレクの家臣によって意識を刈り取られて行っていたからである。

貴族達は色々と民たちを苦しめていた。国の法では税金は3割であったがある貴族領では7割が税として取られている所もあった。

罪のはっきりしている者はいいがグレーの者達はその光景を黙ってみていた。


アレクはその者達に告げる。

「お前たちにも疑いが掛かっているが調べがまだ済んでいない。よって今この場では罪は問わない、だが自身から罪を認めるのであれば貴族として生き残れるようにしてやる。」


このアレクの発言は真っ二つに分かれた。罪を認める者と認めない者だ。

アレクは認めない者に対して苦笑いを浮かべる。逃げきれるわけなど無いのに無駄なあがきをするのだ。そして余計に被害を増やすことになっている事にも気づくことができない者達であると分かってしまうのである。


分かる貴族達からは冷ややかな目で見られている。だがその者達には気づく者がいないのである。



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