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362話

カルメン王国軍は突然攻撃された事で混乱していた。

まさか攻める方が攻められると思ってもいなかった兵は達は少し気が抜けていた。

それは仕方のない事である、秘匿した7万もの軍が突然港町の防壁に現れ包囲したのだ。包囲した軍は作戦が成功したと勘違いしてしまうだろう。


カインの部隊は素早かった。

獣人部隊は1000人いるが5人一組になり6万の包囲した兵たちを駆逐していった。

6万もの人がいる事と、バラバラで動いている事とで、遠くの兵たちは何が起こっているのかが理解できていなかった。

兵たちは騒いでいるが、戦いになっている事自体を理解していなかったのだ。

兵たちはその場で待機しているだけであった。時間がたつにつれて事態の把握が出来てきたがもうその時は遅かった。獣人達は駆け回り、兵たちを一撃で倒していっていた。


カルメン王国軍7万のうち1万の兵は少し離れていた。司令部がおかれ、港の包囲には参加していなかった部隊である。その1万の兵は包囲している6万が倒される様を見る事が出来、援軍に向かうか、撤退するかの指示も出せる状況であった。だが1万の兵を預かる将は何もしなかったのである。

それはその将が未熟であった事もあるが、自分が逃げる事を優先したために指示を出すことが出来なかったのだ。

逃げるにしても全軍撤退の指示を出して行動することが出来たのだが、この将はそれすらも行わずに逃げてしまったのだ。

残された1万の兵たちは包囲した6万の兵がまさか全滅の危機になっているとは思わずにその場に平然と居座っていた。

1万の兵が慌てたのは将が逃げたと噂が広まってからであった。

兵たちは勝っているのになぜ逃げると不思議に思ったのだが、時を置かずに勝っていると言う事が間違いだとすぐに気づくことになった。


「おい俺たちは奇襲に成功したんだよな。」

「そうだよ、成功したんだ。」

「じゃ、何故負けているんだ。」

「そんなこと知るか、俺たちも逃げるぞ。」


そんなことを将のいない部隊は勝手に動こうとしていた。各部隊の隊長もいたが1万もの兵を預かる将が逃げたことで兵の統率を放棄して自分たちも逃げる算段に追われ兵たちに指示をすることを怠っていたのである。

1万の兵は指示もなく右往左往しているとアレク艦隊から小型艦が1万の兵を包囲していった。

この1万の兵たちはまだよかった。包囲されると戦う事もせずに降伏したのである。指示を出す者もいない兵の集団などなんの脅威にもならなかった。


悲惨だったのは防壁を包囲した6万もの兵たちであった。1000対6万通常であれば6万の兵が一方的な勝利を収めるだろうが、相手が獣人部隊であった事が6万のの兵たちの不幸であった。獣人隊の者達は基本的は殴り倒す事だ。

この獣人達の一撃はかなり凄い、鎧を着ていようが鎧ごと一撃で吹っ飛ばしていった。獣人の一撃は重い、顔を殴られると陥没する。生きていたとしても顔がへこんでそれからの生活も色々と不便である。

腕や足などを殴られ蹴られた者も肉がちぎれ骨までも粉砕されて体から離れていった。


一撃で死ねなかった者達はその場で苦しみ悶えている。それは地獄を見ているようであった。


「これは拙いな。」

「そうですね、この兵たちの処理を如何しましょう。」


港の周りに屍や体を欠損した者達が呻いている。


アレクが港に戻ってきた時に、その惨状に驚いていた。アレクも色々な戦場に立ち会っていたが。今回の戦いの惨劇は他の戦場よりかなりひどい状況である。


「よくこれだけ悲惨な状況になりましたね。」


アレクが言った事はカインも思っていた。獣人達は最初は勢いに任せて敵を殴り飛ばしいい気持で戦っていた。だがその状況も長くは続かなかった。カルメン王国軍の者達は獣人隊に圧倒されて反撃も出来ずに棒立ちしていたのだ。獣人達は敵が反撃もせずに棒立ちしていることから兵たちに加減して殴り倒していったのだ。

これがまた微妙な加減であったために、死ぬことはなかったが欠損や陥没など重傷者を大量に出す事となったのであった。

取り囲んだ兵6万のうち死亡者5000人、重傷者55000人となっていた。今までのアレク達の戦いであれば死亡者と重傷者は逆転であった。


これでアレク達は55000人もの者達を捕虜としなければいけなくなった。これが普通の捕虜であればまだ使い道があったのだが。重傷者ばかりの捕虜であったために重労働をさせる事も出来ない。ただ飯を食わせるだけとなってしまっている。


「この兵たちをカルメン王国に戻すようにしないといけないな。」

「そうですね。幸いこの地域は温暖な地域ですから凍死などの心配はありませんので、少しの食料を持たせて追い立てればカルメンに戻る事でしょう。」

「カルメンまで追い立てたほうがいいかもな、他の地域にでも行かれたらめんどうだ。」


アレクはこの重傷者たち55000人の者達をカルメン王国へ戻す事にした。無傷の捕虜1万は労働者確保のためにリシル王国で重労働に当てられることとなっていた。


重傷者のカルメン王国までの移動は困難を極めていた。徒歩での移動の為に片足を失った者や歩けない者が多くいたのである。そのために馬車を用意したり移動の為に大混乱していた。55000人分もの食料確保も大変であった。最初は7万もの軍が進軍したことからかなりの物資を持って来ていると思われたが、実際は一週間分の食料しかなかった。カルメン王国軍は港を占領してリシル王国内で物資の調達を行う予定となっていたと軍の幹部から聞き取りを行って分かったのだ。

何ともお粗末な進軍計画にアレク達は唖然としたのだ。


移動の準備をしている間にカルメン王国へ使者も出ていた。


カルメン王国はその使者が到着して初めてカルメン王国が負けたことを知ったのであった。

7万もの軍を率いた将はいち早く逃げカルメン王国へは帰らずにどこかに雲隠れしてしまっていた。

そのためにカルメン王国への報告も何もされずにいたのである。


もうカルメン王国の慌てぶりはリシル王国からの使者の目から見てもその狼狽ぶりに同情してしまったほどであった。

使者は、カルメン王国の宣戦布告の受諾、重症者兵たちの返還を通知して去ろうとしたが。カルメン王国の重鎮たちに止められたのだ。

カルメン王国としては7万もの兵が負けたことでもうほかの兵を集めても勝てないと察した。

だが大国のプライドがまだあり、素直に負けを認める事が出来なかったのだ。そこで使者に対して敵であるが何か方法がないのかを聞いていたのである。

使者はカルメンの厚かましさに呆れていたが、使者としてきていたリシル王国貴族はこれはチャンスと見て余計な事をしようとしていた。


「任されよ、ワシがカルメン王国の和睦を進言してやる。」

「おおーーーありがたい、ご使者殿これはささやかな今日の御礼であります。」


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