359話
アレクとカインは艦隊を引き連れて。リシル王国へ向かっていた。
「アレク、リシル王国って強いのか。」
「カイン兄、多分弱いですね。」
「何だやっぱり弱いのか、つまらないな。」
「ですけど、リシル王国と戦になると、漁夫の利を狙ってカルメン王国が攻めてくるかもしれません。状況にもよりますがカルメン王国と全面戦争になるかもしれませんね。」
「カルメン王国って大国だよな。」
「この大陸南部の大国ですね。それも交易によってかなりの利益を上げています。」
カルメン王国は隣国と仲が悪い。それはカルメン王国がフロンティア大陸の覇権を目指しているからである。カルメン王国はアース大陸、タンドラ大陸との交易により他のフロンティア大陸の国々よりかなり進んだ国となっている。そこに大陸の北部と離れているがアース、タンドラなどの各国が開発に着手したことはカルメン王国としては面白くない。
各国が北部を開発している間に南部を出来る限り切り取ってしまおうと画策しているのだ。
カルメン王国としてみれば今、アース大陸、タンドラ大陸の国々と出来れば争いはしたくはない。いずれ雌雄を賭けた戦争をするためには今は争う事はしないとなっていた。
だがここにきて大きくその方針が変わる事となる。
カルメン王国の隣国であるリシル王国がアース大陸の物になればカルメン王国の計画が変わってしまうからである。カルメン王国はアレクやカインの実力をまだ知らないのである。
実力は知らないが艦隊の脅威はカルメン王国は分かっている。
カルメン王国
「陛下、リシル王国へSEオリオン王国が攻める事が分かりました。いかがいたしましょう。」
「宰相か、そうよなまだカルメンではアースの国々には勝てんだろう。」
「さようです、まだ勝つことは出来ません。ですが今開発している兵器が完成すれば必ず勝つことができるでしょう。」
「まぁ必ず等ありえんが、対等に戦う事は出来るようになろう。」
「今は静観としますか。」
「いや、それはない、嫌がらせはやらんとな。」
リシル王国
「たたた大変です。」
「北部の国が攻め込んできます。」
「なにどこからの情報だ。」
「北部のルガー王国からの宣戦布告です。」
「あの種族平等の国か厄介だな。」
「どどどうしますか。このままでは我がリシル王国は何も出来ずに負けてしまいます。」
「よし話し合おう。」
「へ、陛下話し合いですか。」
「戦っても勝てぬ相手に戦争する馬鹿がどこにいる。」
「まぁーー、そうですが。」
アレク艦隊
「アレク様、そろそろリシル上空に到達します。」
「そうか、まずは王都を包囲しようか。」
「はっ。」
アレク艦隊はリシル王国王都に艦隊を展開させた。各出入り口に小型艦とワイバーン隊を配置して人の出入りを制限していた。
艦隊の配置が終わるころにリシル王からの使者がやってきた。
その使者はアレクに対してルガー王国より宣戦布告がなされた事実を受け、受諾したことを伝えてきた。アレクは少し驚いた。リシル王国は小国である。アレク艦隊の小型艦1隻で王都を灰にすることも出来るほどの規模しかないのだ。今までの国は驚き、嘆き、罵り、不当だと叫ぶばかりであった。だがリシル王国は違った。不当にも思えるルガー王国からの宣戦布告にも内心は怒っていようと対外的に平然としている。
アレクとカインはリシル王都の会談を承諾した。
階段は王都の外王都正門の前で行われることとなった。
アレク、カインリシル王都が挨拶を交わし、リシル王がいきなりアレクに質問をぶつける。
「アレク王、何故リシルを今回選んだのかな。」
「カルメンの隣国だからでしょう。」
「ほうではわが国でなくともよかったと言う事ですかな。」
「はっきり言ってどこの国でもよかったのですよ。」
リシル王国の王以外はアレクを敵を見るような目つきで睨んでいる。アレクは知らん顔をしている。
「では他の国に変更してもらえないだろうか。」
「それは出来ませんね。もう宣戦布告しましたから。降伏か殲滅されるかを選んでください。」
「なら降伏だな、我らでは勝つことが出来ないからな。」
リシル王は簡単に決めえてしまった。リシル王に従ってついてきている者達は苦虫を噛むような顔をしている。納得などしていないと言う顔をしている。
「リシル王そんなに簡単に王が決めてしまってよいのですか。」
「私はこれでも王として長年国を率いてきている。理不尽な宣戦布告にも対応しなければならない。そしてこの戦は勝てないと分かっている。王として勝てない相手に家臣の命を散らす事は忍びない、ならばいつか勝つことが出来るまで耐える事が今できる一番の事だと判断したまでだ。」
「情報通りですね。さすが賢王と言われるお方ですね。」
アレクは一人納得した顔をしている。カインは又戦えないことが分かったのかがっくりと肩を落としている。
「私の事を調べたのか。」
「ええ調べました。もとカルメン王国の王族ですね。」
「ほう、良く調べたものだな、カルメン王国の中でも知っている者は少ないはずだが、カルメン王国内にもアース大陸の間者が混じっているようだな。」
「リシル王、降伏の条件は種族平等だけです。どうですか。」
リシル王はこの条件、種族平等だけというがフロンティア大陸の国々には普通受け入れられない者であった。長年人間が他の種族を支配してきた歴史がこのフロンティア大陸にはあるのだ。国民一人一人の意識の中にも種族差別が根付いているのである。
簡単に種族差別を了解することは出来ないのだ。下手をすれば国が大混乱に陥り、国が滅びかねない程の事であった。
「今すぐは無理だな、まず国民が納得しない。」
「そうでしょうね。」
リシル王はこれで会談は失敗するのかと諦めかけたが、アレクは王の判断を肯定したのだ。
「リシル王、今は出来ないでしょうが少しづつ民の意識改革を行ってください。その事を約束していただければ種族平等の条件を緩和して講和を結んでも構いません。」
アレクはリシル王都の会談でリシル王国に取って信じられないほどの好条件で講和を結ぶこととなった。
リシルの王や家臣たちは、あれリシル王国は戦争で降伏したよね??みたいになっていた。
条件がリシル王国が勝ったような条件となっていたからである。
ルガー王国より(アレクから)奴隷の買い取り、難民通過の許可(船で輸送)などがあるがリシルにとって大きいのはリシル王国の開発である。今までは金がなくできなかったことがアレクによって可能になったのだ。アレクは艦隊駐留を認める代わりに周辺の開発を請け負ったのである。これは手始めであってリシル王国の開発を手伝う事であった。
それからも細かい事柄を色々と決めていったのである。