341話
そんなカインとアレクが会話をしているとジェントス王国からの使者がミント領にきていた。
ミント伯爵領主館
「アレク殿、先ほどジェントス王国の使者が参りました。」
「そのようですね。」
ジェントス王国の使者は今回のミント伯爵領に対して和解の使者を出して来た。ジェントス王国としては一家臣であったミント伯爵に対して和解の使者を出す事自体が異例であったが、ミント側としてみればどうでもいい事であった。もう独立することが決まっている為に態々ジェントス王国と和解する必要が無いのだ。
ここでもジェントス王国は大きな誤解をしていた。ジェントス王の意向は伝わっていない。王としてはミント伯爵と和解して友好関係を築きたいのであったが、使者は違った。和解してやると言う態度であった。ジェントス王都へドラゴンが来た事等忘れているような態度である。
「まだ使者は別室に待たせています。」
「ならば私が対応しましょう。」
アレクはミント伯爵に楽しそうに伝える。使者に対して何かやるつもりである。
アレクが使者の待っている部屋に着くとそこには二人の身なりの良い者がいた。身なりはいいがものすごく不機嫌そうであった。
使者はもう2時間も待たされているのである。通常、王からの使者に対しては精一杯のもてなしをするのが一般的とされていた。ところがこのミント領では何も出てこない、ほったらかしにされていたのだ。
ジェントス王国貴族としてみれば許せることではない。ジェントス王国が馬鹿にされているとなるのであるが、ミント伯爵はジェントス王国からしてみればまだ王国貴族である。同じ国の貴族同士である為に王国が馬鹿にされると言う表現は当てはまらない。
「お待たせしました。なにもおもてなしが出来ず申し訳ありません。何しろ我が領には食料もない状態ですから。」
使者の待っている部屋に入ると同時にミント伯爵は、恐縮したそぶりを全く見せずに形だけの謝罪をしていた。
ミントの謝罪を真に受ける使者たち、貧乏領地を聞いている使者は下種な笑いをする。
「それほど困っているのであればジェントス王に伝えてやる。食料援助は有料だがな。へへへ。」
「おおそうですか、ですが今回は遠慮します。もう援助を受ける必要は無くなりました。まぁジェントス王国から今まで援助されたことなど有りませんがね。」
「ななな何を言っているのだ、我らはジェントス王国の使者であるぞ。」
「使者殿、あなた達は何をしにここに来たのですかな。降伏にきたのではないのですかな。」
「こここ降伏ではない。和解の使者だ。間違えるな。」
「ではミントの答えを伝えます。和解はしない。降伏なら相談に乗ろうではありませんか。」
使者はミントのこの返事に対して頭の血管がブチギレる音がした。使者はミントに殴りかかろうとしたのである。
その時、ミントの横にいたアレクが殺気を放った。
殴りかかろうとしていた使者はアレクの殺気を当てられて身動きが出来なくなっていた。拳を振り上げた形のまま固まって動けなくなっていた。唯一動けたのは彼の穴という穴からの液体と半固形物を垂れ流す事であった。アレクの威圧にも動じない尿道とおしりの穴にアレクは感心していた。
もう一人の使者も同じく動けなくなっていたがそちらは何も流してはいなかった。ミント伯爵は異臭で鼻をつまんでいた。
「使者殿、その年でお漏らしは拙いのではないですかな。」
使者は同行者がいるために隠しようがなかった。同行者も同じくお漏らしをしていればなかったことに出来るが運悪く同行者はお漏らしをしていなかった。自分だけがお漏らしをしていることが耐えられない屈辱であった。
「同行者殿、使者殿は我が屋敷を汚物まみれにしている。ジェントス王へ請求するがよいな。」
同行者は笑いをこらえながら同意していた。ミントの意図を理解していたのだ。今回の和解の失敗の理由にするつもりなのだと分かったのだ。
ジェントス王国のっ使者である者が交渉相手の屋敷内で汚物をまき散らし暴言を吐いたのである。交渉以前の問題としたのだ。
「使者殿、ソファーに座ったらどうだ。もうそのソファーは捨てるしかないのだ。匂いがもう取れる事はないしな。」
だが使者は座ろうとはしない。もう1秒でも早くこの場所から逃げ出したいのだ。座ってしまったら着替えが出来ないのだ。外には護衛を含め多くの家臣たちがいるのだ。漏らしたことを隠したいのである。
こんな事がジェントス王国に隠せるはずもない事をまだ理解していない。
ミント側は屋敷の床とソファーなどこの部屋の修繕費用を請求するのだ。奥の部屋ではミントの家臣が嬉しそうに請求書を作成していた。エヘヘヘ。
「仕方ないですな、同行者殿今回はジェントス王国との話し合いは出来なかったという事でよろしいですかな。」
「陛下には私からきちんと詳細を説明いたしますので、改めてジェントス王国より使者が参ります。」
同行者は深々と頭を下げて部屋を出ていく。それを追いかけるようにお漏らし君も出ていく。
お漏らし君の悲劇はこれからであった。着替える事も出来ずに外で待つ家臣その他の前に出なければならなかった。普段から威張り散らしていたこの使者は嫌われていた。ジェントス王国で最も優秀であり、武芸にも秀でていると豪語していたのだ。
館から出てて来る二人をジェントス王国の者達は注目していた。これからのジェントス王国の運命が決まってくるのだ。二人に注目するのは仕方のない事であった。二人が近づいていくと何やら香ばしい香りが漂ってくる。ジェントス王国の騎士が使者を見るとズボンに大きなシミが出来ている。ズボンの後ろからは茶色くズボンが染まっている。騎士は使者がズボンを脱色でもしたのかと一瞬思ったが、この香ばしい匂いが漂っている事で騎士は鼻をつまみながら大声で使者に着替えを勧めたのである。
この騎士の行いは褒められたものでは無い。だが臭かった事と、この使者が嫌いだったことで、この騎士は大きな声で使者に着替えを勧めてしまったのだ。
同行していた使者の家臣たちは急いで主である使者を馬車の中に入れたが、すぐに馬車から出てきたのだ。
一度体を洗わなければならなかったのだ。匂いが馬車から取れ無くなるからだ。
使者の家臣はミント伯爵に頼み込み井戸を使う許可を貰っていた。
使者は貴族であり、井戸で水浴び自体が初めての経験であった。この使者は今日、初めての経験が多くあった。
多分一生忘れる事はないだろう。