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336話

旧ミント領に一日の距離までレリウスたちは進軍していた。

今のミント領から旧ミント領までは2日の距離にあるこの旧ミント領は農地として豊かで人々の交通の要にもなっていた。そのためにミント領が狙われたとも考えられる。


「レリウス殿、明日には旧ミント領に到着しますがいかがしますか。」

「ミント伯爵、抵抗すれば排除、従うのであれば併合します。」

「そ、そうなんですが。」

「ああー、領民が心配なんですね。大丈夫ですよ。領民は保護します。」

「なるべく被害を少なくお願いします。」


レリウスとミント伯爵は行動を共にしていた。これはレリウスたちが地理に不案内という事もあるが、ジェントス王国に対して独立する本人がいない事には話にならないからだ。ミントは武闘派ではない、全くと言っていいほどに武に関する事は不得意であった。

そんなミントであるために良い様にされてきていたのだが、マリアーヌと嫡男のメルミートとの結婚で大きく話が変わってしまった。

領地没収の危機から独立の話に変わってしまったのだ。



旧ミント領ではこの地を治めている領主が兵を集め陣を敷いていた。

近隣の貴族達も駆けつけ、その数は1万にもなっていた。だが駆けつけた貴族達と兵の顔色は優れない。

それはそうだろう。先日3万もの兵が負けたのだ。その軍がこの旧ミント領に向かってきているのだ。

旧ミントの領主はこのあたりの寄り親をしている。寄子の貴族達に兵を出す様に働きかけてやっと集めた1万。


集められた兵1万は、ものすごく不安な日をここ数日過ごしていた。ミント領からの噂が兵たちの耳に入って来ていたのだ。ドラゴンがいる。食い殺される。などと本当の事が少しと嘘が多く含まれているが噂という物はそういうものである。

ミント軍が1日の距離迄近づいたとの噂が流れてきた時に耐え切れなくなっていた兵の一部が夜に紛れて逃げ出したのだ。


その日の夜、一部の兵が寝静まった頃に逃亡を図ったが、見張りについていた者達に見つかり大捕り物の騒ぎになった。

それが兵たちの引き金になってしまった。逃げようとしていた兵は捕らえる事が出来たが、捕獲時に大騒ぎをしたのだ。負けるだの怖いだのと色々なことを喚いていた。1万の兵たちは少しの勇気で踏ん張っていたが、明日戦いがある事と初陣の者がほとんどであったためにこの逃亡兵の一言一言が兵たちの恐怖を増大していった。そして兵の中の一人が「うわぁぁぁぁぁぁ」と騒ぎながら駆けだしたのを合図に見ていた兵たちが一斉に逃げ出したのであった。恐怖の伝染である。




よくお化け屋敷などで怖いのを我慢していてみんなで進んでいくが、恐怖に耐えれなかった一人が騒ぐと一斉に騒ぎ出すあれだ。



もう誰にも止める事等出来なかった。逃亡兵を捕まえていた兵たちも実は恐怖に押しつぶされる直前であった。何しろ貴族軍と言ってもほとんどが戦闘などを経験したことが無い者である。

ジェントス王国では国軍が戦争を請け負っている為に貴族の当主や家臣は戦争を経験があるが軍に組み込まれる。そのために軍の指揮をあまりしたことが無いのである。


兵たちの統率力がなかったことも有り、夜が明けるころには1万もいた兵が2000までに減っていた。

それでも今こちらに向かってくるミント軍600よりは多いのである。

だが全く士気がない。お通夜のような貴族軍がミント軍を旧ミント領のとの境目で陣を敷いた。



レリウスたちは貴族軍が見える位置まで来た時にオスカーが「なんかあの敵変だな。」

「オスカーもそう思うか、全く覇気がないように見えるよなー。」

「ファーレス兄もそう思うか。」

そこにレリウスが話に加わる

「あれはもう負けを認めているんだろうな。兵たちは戦う気がないみたいだな。」

「いやいやこの場所にいると言う事かな。」

「ファーレスの言う通りだな。貴族の当主の手前、逃げる事も出来ないんだろうな。」

「それならブラドとシロとシルが目の前に出てきたら逃げ出すんじゃないかな。」

「レイン、そりゃ逃げ出すだろうね。ドラゴン3体が目の前に来たら誰だって逃げ出すだろう。」


レリウスはドラゴン3体による、敵の包囲作戦をすることにした前面には自分たちがいるために両脇と後ろに1体づつ配置することにしたのだ。その指揮はレインがグリフォンに乗り上空から指揮をすることなった。

今回は一人も殺すことなく捕らえる作戦である。恐怖を植え付けジェントス王国全土に伝えさせるためである。


レインはノリノリで準備をしていた。自分が主役、ドラゴンが主役だとウキウキで準備をしている。


「レイン準備はいいかい。」

「うんいいよー。」


レリウスたちよりはるか後方で待機しているドラゴンたちはレインの指示を待っていた。そこに真っ赤なドラゴンが凄い勢いで向かってきている。

カインを乗せているレッドドラゴンである。

「おおおーーーーい。」

「あっ、カイン叔父だーーー。」

レインはカインを見つけるとレッドドラゴンが降り立つの場所に駆け寄っていった。

「レインおっきくなったなーーー。」

レリウスたちもカインと分かると駆け寄っていった。

「おじさんどうしたんですか。」

「レリウス、俺も戦わせろ。アレクの所に行ったらダメだと断られてしまったんだよ。」

レリウスたちはみんな無言になってしまった。カインが参戦したら一瞬で戦争が終わってしまう。戦いにもならないことが分かっているからである。

「カイン叔父さん、今回はダメだよ。」

「えっ、ファーレスお前アレクに似てきたぞー、そんなこと言うなよ。男は戦いたいんだ。」

意味不明なカインの言葉だが、ファーレスとレリウスが王都では戦いを任せる事で納得してもらった。


貴族軍との戦いの前に説得というカインとの戦いに疲れ果てたレリウスとファーレスであった。


だが貴族軍との戦いにはレリウスもファーレスも参戦しないのだ。見ているだけなのだから。


そんな一コマも終わり、レインはドラゴンに指示を出そうとした時にカインのレッドドラゴンがレインにすり寄っていくのであった。

妙に下手に出ているようなレッドドラゴン。「俺も一緒に参加したーーーい。」というそぶりでレインにスリスリしていく。

レインはレッドドラゴンの頭をよしよししている。

「カイン叔父さん、レッドドラゴンも連れて行っていい。」

「おおいいぞーー、好きに使えレッド、レインの言うことをきちんと聞けよ。」

「ガウ。」


「じゃ、レッドは敵の真正面に降りてね、そこで敵に恐怖を与えるからね、僕はグリフォンで上空にいるからね。みんないくよーーー。」


レインがドラゴンたちに声を掛けると4体のドラゴンは大空に飛び立った。遅れてレインとグリフォンもドラゴンの後ろに着いて行った。


「行ってきまーーーーす。」


遠足にでも行くように元気に手を振るレインであった。



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