328話
「マリアーヌ、建国のチャンスとはどういう事かな、説明してくれ。」
「はい兄さま。それはですねレインが神とあがめられていることはそれ程この地が神を望んでいるということです。さすがにレインを神にすることは出来ないですからドラゴンを神にしましょう。ドラゴンに守られたこの地で建国するのです。神を求めて人々が大勢集まってきますわよ。」
「神に頼るのはどうかなと思うな。」
「でも建国のチャンスですわ、今でも建国宣言をすれば国としては認められるでしょうが普通の小国としか見られないでしょう。ですがドラゴンを守護神として建国すればこの大陸の他の国々の扱いも変わってくると思いますわ。」
「んーーーー。ドラゴンを守護神かー。レインはどう思う」
「えっ、僕ーぅ、んーそうだね別にいいんじゃないドラゴンはドラゴンだし。レリウス兄ちゃんのドラゴンもいるしね。レリウス兄ちゃんの後ろにドラゴンがいればみんな勝手に誤解するよ。」
「アハハハハ、そうだね。勝手に誤解させれば問題ないかな。」
「そうですわ、建国ですわ。」
「マリアーヌはやけに建国にこだわるね。建国なんてもう何時でも出来るでしょう。」
「えっ、ソウデスワネ。」
「ん、何かあったのかい。」
マリアーヌが建国にこだわるのには訳があった。今、マリアーヌは恋をしているのである。このタスポ港にフロンティア大陸のほぼ中央に位置するジェントス王国という国があり、そこの貴族であるメルミートといい仲になっていた。メルミートは伯爵家の嫡男である。今は交易の為にタスポに訪れて交渉をしている。
このジェントス王国はいま窮地に立っていた。フロンティア大陸のほぼ中央のあるこの国は大陸の中で北へ向かう最前線となっている。太ったサツマイモのような形のこの大陸でジェントス王国より北にはまだ国が存在していない。
ジェントス王国は北の最前線出るために国土を広げようとする国、国境を確定させようとする国などで争いが絶えないのである。
土地が余っているこの大陸で国境の争いなど考えられないが、それは人の常というべきか土地を使わなくとも他人に取られることは許せないようだ。
そんな見栄で土地の余っている大陸内で国同士で争っているのだ。
「レリウスお兄様、マリーお姉さまはメルミートさんを助けたいのですわ。」
「「「「えーーーーーーーー」」」」みんなで。
「なななな何言っているのマルティナ、そそそそんな事、少しだけしか考えていないわよ。お兄様が建国のチャンスだから言っているのよ。」
そんな中空気を読めない者がいた。レインある。
「マリアーヌ姉さん、結婚するのーー。」
「ななななな何を言っているのよー。」
「だって好きなんでしょう。母上が言っていたよ。好きな人が出来たら結婚しなさいって。」
「まだそこまで行っていないわよ。」
真っ赤な顔をしてマリアーヌは下を向いてしまっている。
「まぁまぁレリウス兄、ここは母上に相談すべきじゃないかい。」
「そうだな俺じゃ分からんしな、母上に相談してからにしよう。建国の事も父上に相談して決める事にしようか。」
「そうだね、父上からはこの大陸で国を建てろと言われているから。反対は無いですけど報告はした方がいいね。」
レリウスは母に相談の為に報告したのであった。
連絡が来て驚いたのはミルティナであった。もう大慌てであるアレクと連絡を取り急いでフロンティア大陸へ向かっていた。
ミルティナに連絡が来て三日で出発していた。その三日間は壮絶であったレリウスはただの相談としての報告でしかなかったが、受けるミルティナは違った。
マリアームが結婚する事に変換されていたのである。そしてその三日間はマリアーヌの花嫁道具の手配する事の時間であった。
金にものを言わせ貨物船一杯に花嫁衣裳や花嫁道具その他をこれでもか言う程詰め込み出航したのである。これにはアレクも苦笑いをしていた。
アレクはハロルドに言われたこともあり自身も一緒に行くことにしたのである。ミルティナを放っておけなかったこともある。ミルティナは子供たちがフロンティア大陸へ行ってしまってからは寂しい思いをしていた。そんな所にこの話である。脳内変化してしまい結婚へと結論がいってしまったことは仕方がない事である。
ミルティナが花嫁道具を持ってくるなど全く考えていないマリアーヌはメルミートとデートしていた。
町のカフェでお茶を飲み楽しそうに話をしている。
メルミート率いる商隊がこのタスポに来るまでは大変であった。フロンティア大陸の北部にはまだ国と呼べるものは一つも存在していない。そのために北部の地図も存在していなかった。
北東にダンの港があるなどと方向を示すだけの物であった。
メルミートは自国ジェントス王国を出てからは大変だった。山あり谷あり川ありと土地は平坦ではないからだ。
まずは海岸線に出る事から始め、ダンの港を目指しこのタスポまで来たのである。交易ルートを確立するために3か月をかけての旅路であった。このタスポについてもう一月立っていた、もうすぐジェントス王国へ向けて出発する予定になっていた。
だがメルミートもマリアーヌとの別れが中々できなくなっていたのである。
マリアーム側とメルミート側両陣営も二人を生暖かい目で見守っていた。
両陣営の生暖かい目の中でメルミート陣営の中で一人冷静な者がいた。メルミートの浮かれた恋バナを聞かされている家臣たちの一人である。
この者はメルミートの話の中でオリオンの名を何度も聞いたのである。良く聞けばこのタスポ港はオリオンの子供たちが切り開いたものだと分かった。フロンティア大陸でもオリオン王国の名は有名である。別大陸であるが時代を300年進めた、タンドラ大陸を統一したなど色々と有名である。
もしオリオン王国と関係が出来ればジェントス王国にとってこれほど喜ばしい事は無い。そんな思惑もあってズルズルとタスポに滞在しているのであった。
数日後タスポ港町の空に大艦隊が姿を現したのであった。
アレク艦隊が現れたのだ。今のアレク艦隊は大型戦艦を4隻、中型艦を8隻、小型艦を30隻、空母4隻と輸送艦10隻の大艦隊である。それに今回はマリアーヌの為の花嫁道具貨物船3隻も同行している。
タスポの町は一時騒然としたが艦隊にはためくオリオンの旗を見つけて落ち着いていった。
だがその前にいち早く気付いたレインがグリフォンにまたがり空へ飛んで行ってしまった。
「父上ーーーー、母上ーーーーーー。」