表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
321/919

321話

グレイリットは、短剣を取り出し自身の手を切った。手からは血が流れている。


「皆の者、この血を見るのだ。私は年もとる、血も流れる。そしていずれ死ぬ。これは人間であるからだ。神ならば死ぬことはないのであろう。グラムット帝国の民に対していきなり神ではないと宣言することはしないが貴族であるそなたたちならば分かっていよう。皇帝は人であることがな。」

「・・・・・・」

「今このアース大陸は変わりつつある。オリオン王国が建国され人々の生活が一変した。このグラムット帝国の民の生活も変わってきている。もちろん貴族達の生活もオリオン王国との交易以前とは考えられないほどの生活が良くなっているはずだ。」

「・・・・・・」

「グラムット帝国は今変わらなければこの先は衰退していく。幸いにグラムット帝国で長きにわたり寄生していた者達は排除された。これからは新しいグラムット帝国を築き繫栄していこうではないか。」


「皇帝陛下、それでよろしいのですか。」

「お前はレイム伯爵だな。よろしいとはどういうことだ。」

「グラムット帝国がオリオン王国に屈するという事でよろしいのですか。」

「そうだ、グラムット帝国はオリオン王国に負けた。」


レイム伯爵もグラムット帝国が前回の戦争でグラムット帝国では講和、オリオン王国ではグラムット帝国が降伏したことになっている。そして今回グラムット帝国の内戦処理をオリオン王国の手を借りて処理したことがレイム伯爵やグラムット帝国貴族達にはオリオン王国の風下に立っていることを素直に容認できないのである。今回はグラムット帝国内だけで処理しようとしても出来なかったことは貴族達も分かっているからこそ、余計にオリオン王国を意識してしまう。


レイム伯爵はアレクスがいるこの場でグラムット帝国とオリオン王国のこれからの関係を聞いておくことが重要と考えていた。


「グレイリット殿、そこは私が話そう。レイム伯爵と申したな、グラムット帝国とオリオン王国はこれからも同盟関係を続けるだけだ。」

「オリオン王国と同盟関係の維持だけですか。」

「それ以外はどうも出来んだろう。今回のこの内乱はオリオン王国としては静観する予定であったがマトリット宰相の最後の依頼であった為に私が受けたのだ。私とマトリット宰相は変な縁であった、敵同士であったが妙に信頼できる人であった。マトリット宰相はグラムット帝国が続くことを願って死んで往った。私はマトリット宰相の願いをかなえてやることにしたのだ。だから今回はグラムット帝国との同盟関係を維持する。それ以上でも以下でもない。」

「要は情けをかけてもらったという事ですかな。」

「そういう見方も出来るな。」

「分かりました。今回は納得しましょう。ですがいつまでもオリオン王国がグラムット帝国より前を走れると思わないでいただきたい。」


アレクはこのレイム伯爵が気に入った。何となくだがこれからのグラムット帝国に必要な人物の様に思えたのだ。


そしてこれからの事がこの場で伝えられていく。

マトリット宰相の計画によって内乱を起こし鎮圧される計画を聞いた貴族達は驚愕していた。本当は伝えることはしない予定であったが新皇帝であるグレイリットがマトリットが汚名を着る事を良しとしなかったために公然の秘密として伝えたのであった。


その事を聞いた貴族達はグラムット帝国の闇の深さを再認識していた。まだこの闇は完全に排除させられたのかは誰にも分からない。皇帝崇拝によって引き起こされた今回の騒動は皇帝崇拝者2000万人といわれるものたち全員が居なくなったわけでは無いのだ。皇帝崇拝過激派を含む500万人がいなくなっただけである。4分の3は今もグラムット帝国内にいるのである。グラムット帝国としてもこれ以上皇帝崇拝が過激になる事を望んではいない。

緩やかな衰退を行い皇帝崇拝者をなくす政策を行っていくのである。そのための皇帝自身の神の否定である。

皇帝は帝都周辺に住まう皇帝崇拝者を此の侭この地に押し込める政策をとる事にしている。新たな帝都建設を行い宮廷となるこの地には、グラムット帝国皇帝を奉る施設を建設させようとしていた。この施設を皇帝崇拝者たちにやらせ、政からの排除を進める事にしたのだ。


グラムット帝国の新帝都は今の帝都からかなり離す予定である。今も新帝都の建設は進んでいる、近いうちに城が完成の予定である。城が出来たら行政を新帝都に移すことになっている。


グレイリットの話を機嫌よく聞いていた貴族達はオリオン王国への報酬の事が伝えられた時は貴族達から唸り声のような声が漏れていった。


先程のレイム伯爵が又グレイリットに対して質問をしていった。

「陛下、グラムット帝国の外縁部とはどこまでを外縁部としているのですか。マトリット宰相からの報酬の約束はグラムット帝国の威信にかけて守らなければなりません。ですが外縁部との抽象的な言葉ではいけません、きちんと協議して決めるべきです。」

「そうだな、グラムット帝国の外縁部とは今までグラムット帝国が使っていた言葉だ。レイム伯爵は外縁部とはどこを指していると解釈しているのだ。」

「外縁部とは数年前まで独立していた国々を外縁部と認識しています。」

「どうですかなアレクス王。」

アレクはポーカーフェイスにで決めていたが。隠しきれない。グラムット帝国の外縁部とは、はっきり言っていらない土地である。アレクは要らないと伝えようとしていた。だがマトリット宰相がそんな分かり切った事をするとは思えなかったのだ。なにか思惑があるような感じがしていた為に、アレクはいらないと言う事を伝えていなかった。


アレクがマトリットの思考を考えている。まず無駄な事はしない。グラムットの利益を優先に考える。人は道具。利用できるものは何でも利用する。要はマトリット宰相はアレクにグラムット帝国を守らせることをしようとしているのである。今のグラムット帝国はかつての力は無い。

簡単にグラムット帝国の一部なり侵略する事が出来る状態である。

国の周りをオリオン王国の領土とすれば軍事費の削減ができ経済に金を回すことができる。オリオン王国を信用していなければできない事であった。

マトリット宰相は、アレクの事を信用していたのだ。オリオン王国=アレクと考えている。


アレクはマトリット宰相がオリオン王国の利益の為に外縁部を報酬とした理由を必死に考えたが、考えれば考えるほどグラムット帝国を守るための報酬にしか思えなくなっていった。

無報酬はありえない。オリオン王国として皇帝崇拝者過激派の排除はオリオン王国として行わなければいけない事である。ついでに亡きマトリット宰相の作戦に乗っただけである。その方が早く解決したからである。

アレクがマトリットの策に乗る事を計算してマトリットが外縁部を報酬としていたのだ。

アレクはマトリットに手間に取られていたのだが、そんなに悪い気はしていない。アレクはマトリットの最後の願いのような気がしていたのだ。

挑発的なじいさんであったが、アレクは気に入っていたのだ。


「グラムット帝国に任せる、お前たちが外縁部と思えるところでよい。」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ