32話 アレク現場監督になる
翌日
アレクは、ゲートル男爵に別れの挨拶をしていた。
オリオン家の正式な了解を取ってから改めてくる事を伝える。ゲートルも国に報告をするようだ。
アレクはゲートルに、魔道具を何点か上げていた。仲良くするには物を上げる。
便利そうなものを選びゲートル分とミルトン王国分を気前よく上げたのだ。
アレクはガレオン号に乗り込む。
「発進する。」
ゆっくりとガレオン号は離陸していく。
城塞都市の人々は手を振りながら見送ってくれている。
アレクも元気に手を振っている。 「またな~、歯磨けよ~、」
「オリオン領に戻るが南側の拠点経由で戻るぞ。」
アレクは、ミルトン王国内を逆時計回りに帰還するようだ。
侵入してきた方向にそのまま進み、右手に大森林を見ながら大森林を段々と離れるよう舵を切っていく。
「他に街とか、あれば見ていこうかな。」
ぼそっ、といった独り言だがユリが聞いていた。
「師匠、騒ぎになりますから駄目ですよ。」
「そうだね。騒ぎになるよね。」
アレクたちは気付かなかった。上空を通過するだけで騒ぎになるということを。
そんな、航海も順調に幾つかの街を通過して南側拠点に戻ってきた。
「工事、結構進んだね。」
「人の数で工事してますね。」
「でも、師匠がやった方が早くできますよね。」
「やだよ、めんどくさいもん。」
「アレク、おかえり。」
「カイン兄、ただいま~」
「大森林の外はやはり国がありました。」
「そうか、交易はできそうか。」
「交易は行えますよ大丈夫でしょう」
アレクは、ミルトン王国の出来事を身振り手振りを交え大げさに報告をしていた。
自分が如何に、頑張ったか活躍したか交渉上手だとかカインは黙って聞き、あとでユリの報告を聞いていた。
オリオン領に戻ったアレクは、ハロルドにカインと同じ報告をしていた。
もちろんハロルドはカインと同じくユリに報告をさせていた。
数日後
アレクは、マリアに呼ばれ執務室に来ていた。
「マリア姉、ご用件はなんですか?」
「アレクが持ってきた山脈の地図よ。」
「あの湖は綺麗でした。」
「そうその湖の位置なんだけどね、・・この位置と・・ここに・」
マリアは、山脈にトンネルを掘る事を提案してきたのだ。
北部と南部を結ぶトンネルだ。
「この山脈の薄い部分に、この山とこの山に2本トンネルを掘れば繋がるわ。湖のある盆地に中継施設を造るわよ。」
「おぉぉ、いいですね。この位置ならオリオン領と南部をうまく繋げれますよ。」
「そうでしょう、「くの字」の形のトンネルね。」
「交差した部分が中継拠点ですね。凄いですね、じゃぁ僕は研究があるので・・」
「アレク、何を言っているのあなたがやるのよ。」
「えっ僕には無理です。研究があるしまだ子供だし、まだ子供だし・・・・・」
「都合のいい時だけ、子供になるのはよしなさい。」
「・・・いや子供ですから」
「いいから父上の所に行きますよ。」
マリアに手を引かれ連れて行かれた。
「父上、この計画書何ですが。」
「どれだ・・・・・」
マリアは、飛行艇だけでは今後は支障が出てくる。
人の往来が活発になれば飛行艇だけでは無理になる。そこでトンネルを掘り解決してしまう。
トンネルを掘るついでに山間に中継拠点を造る。中継拠点を造るならそれを街にしてしまえ。
との考えのもと話は進んでいった。
オリオン領北部から中継拠点そして新領地の南部だ。
オリオン家は既存の領地を北部、山脈を越えた新しい領土(領地)を南部と呼んだ。
南部の開発を進めるためにはトンネル工事が最優先で行われる事となりトンネル工事の責任者の話になった。
「総指揮は私が取ります。現場監督をアレク、現場監督監視長をユリ、現場監督監査長をリック、現場監督時間割調整長をマックに、そして現場監督監視長と現場監督調査長と現場監督時間割調整長を束ねる現場監督補佐に騎士団長のデリックを推薦いたします。」
「か・完璧な監視体制だな。」
「えぇぇデリックはいらないよー、僕たちだけで大丈夫だよ。」
アレクは、リック、マック、ユリなら、楽しく自分のやりたい様に出来ると思ってデリックを外そうと考えていた。
「あら、アレクあなた書類作成・提出を完璧に出来るの。ユリ、リック、マックは別組織の長だからやれないわよ。手伝えるのは、現場監督補佐のデリック団長だけよ。」
「書類作成ぐらい、出来ますよ。」
「へ~~~っ、トンネル2本と、拠点工事の3か所の工事状況の報告書を毎日工事結果と翌日の工事予定表、補給物資の注文書を提出するのよ。アレクは出来るの。」
「・・うっ・・・・できません。」
トンネル工事の人員が決定した。
トンネル工事総指揮 マリアの部下、以下全員
トンネル工事現場監督 アレクスの部下、デリックのみ
トンネル工事現場監督補佐 デリックの部下、騎士団員20人・作業員等
現場監督監視長 ユリの部下、10人
現場監督監査長 リックの部下10人
現場監督時間割調整長 マックの部下10人
アレクは、大勢の間接的な部下たちと大勢の作業員達とトンネル工事の準備に入ることになる。ちなみに騎士団員は工事には関係なくデリックの護衛として行くようだ。
マリアは、アレクを現場監督兼重機と考えていた。ひっ酷いなマリア。
その頃、アレクは燃えていた。
ガレオン号の船首に立ち、タオルで頭にハチマキを巻き、片手にツルハシを肩にかけていた。