315話
グラムット帝国帝都付近
「アレク、帝都で反乱がもうすぐ起きるのか。」
「カイン兄、もうすぐ帝都の城が占拠される予定です。」
「占拠されてから俺たちが乗り込むんだな。」
「そうなります。一度敵に城を渡してから奪い返します。」
「なんかめんどくさいな、帝都の民には被害は出ないのか。」
「そこはうまく誘導して被害を抑えるようにしています。全く被害が出ないと言うわけにはいかないでしょうが、ほぼ被害なしで行けると思いますよ。」
「そうか敵は死んでもいいが関係の無い者が死ぬのはいい気持じゃないからな。」
「あっ、始まりましたね。」
「城から煙が上がっているな。」
グラムット帝国帝都の城で謀反が起こっていた。城内での敵味方はほぼ半数で拮抗していたが謀反を計画していた方が事前に知っていた点において有利であった。
グラムット帝国城内では謀反側であっても元は同じ帝国で働く者達で仲間である、無暗な折衝はなるべく避けているようであった。そして城内で多くの者が拘束をされて監禁となっていた。
だが騎士と衛兵たちは謀反人に対して抵抗したために全滅していた。拘束された者の多くは事務方がほとんどであった。
スペルシス2世は帝国の玉座に座っていた。
そこからの眺めはスぺイシスが夢にまで見た光景であった。見下ろす先には後日家臣たちで埋め尽くされる予定を想像しながら夢に酔いしれていた。
「陛下、城の占拠が完了いたしました。」
「そうか、いよいよ余がこのグラムット帝国の皇帝になるときが来たのだな。」
「さようでございます。陛下。」
パゴーーーーン。
「ななななんだ、この音は。」
「すぐに調べます。」
バコーーーン、ガラガラガラーー。
それはアレクが艦隊より放った魔動砲であった。
アレクは魔動砲を撃ったことを合図に上空より艦隊を降下させて城内に侵入したのである。まだ城内では城占拠の余韻に浸っており手薄になっていたことも簡単に城内に潜入できた要因である。
「各小隊は城内を占拠しろ。偉そうなものはすべて捕らえるように。」
各隊の隊長は小隊に対して指示を出していく。もう慣れたもので各小隊もテキパキと動いている。
一方、帝都内では激しい戦闘が繰り返されていた。グラムット帝国帝都は広い、反乱軍、謀反人達がすべて掌握することがでいないほど広大な都市である。そのために反乱者たちは少数に分かれ重要拠点を占拠しただけであった。そこにアレク達の部隊が取り返しに来たのである。
少数対少数であったが戦闘は激しかった。建物に籠っている反乱者たちは城から増援が来ると思っている為に守りに徹していたことが戦闘を長引かせていた。
空兵隊の者達はなるべく建物を壊さないように戦闘をしていたことも戦闘を長引かせた要因であった。
元々の戦闘能力の違いが長引けば長引くほど出てくる。次第に空兵隊が敵を殺していく速度が速くなり、建物に籠っている敵は瓦解していった。
「よし何とか時間内に殲滅出来たな。」
「小隊長、報告します。この商業ギルドの他、職人ギルドでの戦闘も完了したと連絡がありました。」
「そうか、あとは冒険者ギルドと工房ギルドか。」
「はい、大手の商会にも部隊を派遣しています。」
「商会は敵もそんなに多くは行っていないだろう。」
「ですが数が多く手が足りないようです。」
「そうだな小隊を半数連れて帝都内を回ってくれ、俺はこの場所を動くことが出来ないからな。」
「はい了解しました。」
この空兵隊第一大隊所属の第二中隊第3遊撃隊小隊は半数を残して帝都内の見回りに出ていった。反乱鎮圧をしたアピールもあったが帝都を安定させる目的もあった。ようは警察の巡回のようなものである。
この巡回の効果は覿面であった。帝都の民たちはオリオン王国軍の制服を知っていた。帝都内でこの制服を知らない者がいない程に有名であった。特にアレク隊や空兵隊の制服は有名である。オリオン王国最強部隊である空兵隊が都市の巡回をしたことが帝都民を安心させていた。
その頃、帝都に入ろうとする反乱軍がいた。近くの村に集結した反乱軍たちが帝都民に見せびらかすために着飾って進軍する予定であった。
新皇帝を祝うためにパレード予定であった、人数だけはいるこの軍は身分の高い者が多く、戦闘能力は低い者達であった。だがプライドはこの国一番の高さを誇っていた。
そのために帝都で起こっている騒ぎなど眼中になく自分たちの晴れ姿のみを想像していたためにアレク達が待ち構えている事を知らずに進軍してきたのである。
「し、将軍閣下て、敵兵が我がグラムット帝国帝都門前に待ち構えています。」
「あぁー、そのようなもの蹴散らせ。わが軍は貴族軍である。グラムット帝国最高の貴族であるわが軍の前を塞ぐなどとはけしからん、平民部隊を前に出して潰せ。」
このグラムット帝国貴族軍の平民部隊とは皇帝崇拝者の部隊である。この貴族軍内では戦闘能力が一番高い部隊である。
アレクの予想していた数をはるかに上回る数である。貴族軍総勢15万もの部隊で平民崇拝者部隊8万であった。
8万もの兵は1軍を1万に分けていた。8方向から帝都門を守るアレク隊に向かってきたのである。4つある門にアレク隊の人数は一か所1000人で4000人である。20倍もの敵に怯むことなく待ち構えている。
アレクは貴族軍15万が8万と7万に分かれたことで帝都門に迫る皇帝崇拝者たちを艦隊からの機関弾によって殲滅する指示を出し、獣人隊とカインに処理を任せるようにした。皇帝崇拝者たちはすべて殺すことにしている為、手加減の下手な獣人隊に任せる事にしたのである。
小型艦からの艦砲射撃後に獣人達が突撃することになっていた。帝都門を守っている空兵隊は妙に白けていた。
帝都東門
「隊長敵軍を確認しました。」
「そうか、だが我々はここから動くことは出来ない。」
「そうですよねーー。獣人隊が張り切っていますから手出しなんかしたら大変なことになりますよ。」
ブルブル
「なぁ俺たちもしかして貧乏くじ引いたかな。」
「ああ俺たちの部隊は今回、戦闘なしの可能性が出てきたな。」
「畜生ーー、俺今回の武勲で騎士の称号貰う予定だったんだよ。」
「まぁ仕方ないだろう。部隊の配置は指揮官に従うしかないんだから。俺たちはまだいい方だぞ何しろアレク様の部隊にいるんだからな。ルドルフ様の部隊なんてここ数年戦闘自体がなくて誰も昇進していないんだぞ。それと比べたら俺たちは恵まれているぞ、戦えば勝って昇進出来るんだからな。」
「でもよー、俺この後結婚するんだよ。騎士服着て結婚式に出たいんだよーー。」
「・・・・・・・」
帝都東門では敵を目前に見ながら緊張感のない会話がされていた。